国内線ランキングを読む前に知っておきたいこと
ランキングデータを見るうえで、まずは「何を基準にしたランキングか」を押さえておくことが大切です。国内線のランキングには主に「利用者数(旅客数)」「路線別旅客数」「航空会社別シェア」「定時運航率(OTP)」などの種類があります。今回は、公共交通としての航空モビリティを多角的に理解できるよう、それぞれの観点からデータを整理しました。どの数字もそれぞれ違う"角度"から業界の姿を教えてくれますので、ぜひ複数の視点で眺めてみてください。
データの出典について
本記事で紹介するデータは、国土交通省航空局が公表している「航空輸送統計」および各航空会社の公式発表をもとにしています。数値は年度単位での集計が基本であり、速報値と確定値で若干の誤差が生じる場合がある点をご了承ください。
最新の一次データは必ず各公式サイトでご確認ください。データの扱いには誠実さが大切ですので、本記事でも出典を明確に示すことを徹底しています。
国内線と国際線の違いをおさらい
「国内線」とは日本国内の空港同士を結ぶ航空路線のことです(例:羽田 ↔ 新千歳、羽田 ↔ 那覇)。
一方、「国際線」は日本と海外を結ぶ路線です。国内線はビジネス利用と観光利用が両輪となっており、コロナ禍からの回復傾向も国際線とは異なるペースで進んでいます。また、国内線は新幹線や高速バスといった他の交通機関と競合している点も大きな特徴のひとつです。
【最新版】国内線 路線別旅客数ランキングTOP10
まずは最も注目度が高い「路線別の旅客数ランキング」を見ていきましょう。このランキングは「どの区間が最も多くの旅客を運んでいるか」を示すもので、航空業界における需要の地図とも言えます。羽田〜新千歳(札幌)路線が長年にわたってトップの座をキープしていることが、データからもはっきりとわかります。移動距離が長く、鉄道では代替が難しいという路線特性が、航空需要の高さに直結しています。
| 順位 | 路線名 | 年間旅客数(概数) | 補足 |
|---|---|---|---|
| 1 | 羽田 ↔ 新千歳(札幌) | 約880万人 | 国内最多。ビジネス・観光ともに需要大 |
| 2 | 羽田 ↔ 福岡 | 約810万人 | 新幹線と競合しつつも高需要を維持 |
| 3 | 羽田 ↔ 那覇(沖縄) | 約720万人 | 観光需要が中心。夏季に大幅増加 |
| 4 | 羽田 ↔ 伊丹(大阪) | 約580万人 | 新幹線との競合路線だが根強い需要 |
| 5 | 羽田 ↔ 鹿児島 | 約320万人 | 九州南部の玄関口として安定した利用 |
| 6 | 羽田 ↔ 長崎 | 約260万人 | 観光地として人気上昇中 |
| 7 | 新千歳 ↔ 那覇 | 約240万人 | 北海道〜沖縄の需要。観光客に人気 |
| 8 | 羽田 ↔ 熊本 | 約210万人 | 熊本地震後の復興とともに需要回復 |
| 9 | 羽田 ↔ 松山 | 約200万人 | 四国方面の重要な幹線路線 |
| 10 | 福岡 ↔ 那覇 | 約180万人 | LCC参入で需要拡大傾向 |
※ 上記数値は国土交通省「航空輸送統計」の2023年度確定値および各社発表データをもとに本編集部が概数を整理したものです。最新データは公式サイトをご確認ください。
羽田発着が圧倒的に多い理由
ランキングを見ると、TOP10のうち実に7路線が「羽田空港発着」です。これは羽田空港が国内最大の拠点空港であり、発着枠(スロット)の多さと東京という最大需要地を抱えているためです。
また、羽田空港の年間発着回数は国内線だけで約23万回にのぼるとされており、国内航空ネットワークの"ハブ"(乗り継ぎ拠点)として機能しています。地方から地方へ飛ぶ場合も、いったん羽田を経由するルートが多く選ばれています。
注目の路線:LCC(格安航空会社)が牽引する新興需要
近年注目されているのが、LCC(Low Cost Carrier=格安航空会社)が運航する路線の台頭です。ジェットスター・ジャパン、Peach Aviation、スプリング・ジャパンなどが成田・関西・那覇を拠点に路線を拡大しており、これまで新幹線や高速バスが中心だった中距離移動においても空路の選択肢が増えています。特に成田〜那覇路線はLCCの参入により旅客数が5年間で約1.8倍に増加したというデータもあります。低価格帯のチケットが旅行ハードルを下げ、新規の航空利用者を生み出しています。
航空会社別 国内線シェアランキング
次に、「どの航空会社が国内線市場をどれくらい占めているか」を見ていきます。国内線の市場は、フルサービスキャリア(FSC=フルサービス航空会社。機内食や受託手荷物無料などのサービスが充実)と格安航空会社(LCC)の2つに大きく分かれており、両者の競争が近年ますます活発化しています。
| 順位 | 航空会社 | 国内線旅客シェア(概算) | 補足 |
|---|---|---|---|
| 1 | ANA(全日本空輸) | 約36% | 国内線最大手。幅広い路線網 |
| 2 | JAL(日本航空) | 約30% | 経営再建後も安定的なシェアを維持 |
| 3 | Peach Aviation(ピーチ) | 約10% | LCC国内最大手。関西国際空港拠点 |
| 4 | ジェットスター・ジャパン | 約8% | 成田拠点。JALグループ傘下 |
| 5 | スカイマーク | 約7% | 独立系中堅。羽田・神戸拠点 |
| 6 | AIRDO(エア・ドゥ) | 約3% | 北海道路線に特化。ANAとのコードシェア |
| 7 | ソラシドエア | 約2.5% | 九州・沖縄路線に特化 |
| 8 | スプリング・ジャパン | 約1.5% | 中国資本のLCC。成田拠点 |
※ 出典:国土交通省「航空輸送統計」および各社決算資料(2023年度)をもとに本編集部が概数を整理しています。
ANAとJALの2強体制はいつまで続く?
国内線市場はANAとJALで約66%を占める「2強体制」が長年続いています。ただし、近年のLCC台頭により、この割合は少しずつ低下傾向にあります。特にPeach Aviationのシェア拡大は顕著で、2013年の就航当初と比べると旅客数は約5倍以上に成長しています。
一方で、ANAはPeachを子会社として持っているため、「ANA+Peach」のグループシェアで考えると約46%に達します。JALもジェットスター・ジャパンを傘下に持ち「JAL+ジェットスター」で約38%となります。つまり実質的には2大グループで市場の84%を握っている構図は変わっていないと言えます。LCC参入の波もグループ内で吸収されており、業界構造の変化はゆっくりと進んでいます。
スカイマークが「第三極」として存在感を示す理由
大手グループ以外で注目すべきなのが、独立系のスカイマークです。2015年に経営破綻したものの、2016年に再建を果たし、現在では羽田・神戸を拠点に着実にシェアを回復しています。
価格競争力と定時運航率の高さが評価されており、コスト意識の高いビジネスユーザーからの支持も集めています。LCCほど割り切ったサービス削減はせず、かといってフルサービスほど高くもない「ミドルレンジ」の立ち位置が独自の強みとなっています。
国内線旅客数の年度別推移データ(2019〜2024年度)
コロナ禍の影響で激変した国内線の旅客数。その回復の軌跡を年度別データで追ってみましょう。「コロナ前との比較でどの程度戻ったのか?」が気になっている方も多いのではないでしょうか。航空業界は他の交通機関と比べても落ち込み・回復ともに振れ幅が大きく、データで見るとその変動の激しさがよくわかります。
| 年度 | 国内線旅客数(概数) | 前年度比 | 主なトピック |
|---|---|---|---|
| 2019年度 | 約1億170万人 | — | コロナ前の基準年。過去最高水準 |
| 2020年度 | 約4,580万人 | ▼ 55% | コロナ禍で過去最大の落ち込みを記録 |
| 2021年度 | 約5,920万人 | ▲ 29% | 緊急事態宣言の影響で低水準継続 |
| 2022年度 | 約8,350万人 | ▲ 41% | 行動制限解除で回復が急加速 |
| 2023年度 | 約9,610万人 | ▲ 15% | コロナ前の約94%まで回復 |
| 2024年度(速報) | 約1億50万人 | ▲ 5% | コロナ前水準をほぼ完全回復 |
※ 出典:国土交通省「航空輸送統計年報」をもとに本編集部が整理。2024年度は速報値であり、確定値と差異が生じる場合があります。
回復のスピードは想定より早かった
2020年度のピーク時には旅客数がコロナ前の約45%程度まで落ち込み、業界全体に深刻なダメージを与えました。しかし、2022年の行動制限解除を契機に回復は急加速し、多くの専門家の予測を上回るペースで需要が戻りました。2024年度にはほぼコロナ前の水準に到達しており、業界の底力を感じさせる推移データになっています。
回復を支えたのは「観光需要」と「LCCの普及」
回復を牽引した主な要因として、政府の観光促進策(全国旅行支援など)と、LCCの路線拡充・運賃低下があります。特に若年層を中心に「気軽に飛行機で旅行する」という意識が定着し、国内旅行の選択肢として航空が改めて注目されています。また、リモートワークの普及により「ワーケーション(旅行先で仕事をする働き方)」の需要が生まれ、これまでオフシーズンだった時期の旅客数を押し上げているというデータもあります。
定時運航率(OTP)ランキング|信頼できる航空会社はどこ?
「時間通りに飛ぶかどうか」は利用者にとって非常に重要なポイントですよね。ここでは、国内主要航空会社の定時運航率(OTP:On-Time Performance)ランキングを紹介します。定時運航率とは、出発予定時刻から15分以内に離陸した便の割合を指します。ビジネス出張が多い方にとっては、価格よりも定時性を重視したい場面も多いはずです。
| 順位 | 航空会社 | 定時運航率(2023年度) | 評価ポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | ANA(全日本空輸) | 約90.2% | 国際調査でも高評価を継続 |
| 2 | JAL(日本航空) | 約89.7% | ANAと僅差。品質管理に定評あり |
| 3 | スカイマーク | 約87.3% | 独立系ながら大手に迫る高水準 |
| 4 | AIRDO(エア・ドゥ) | 約86.1% | 北海道路線の悪天候を考慮すると健闘 |
| 5 | Peach Aviation | 約81.4% | LCCのなかでは安定した水準 |
※ 各社発表データおよび国土交通省「定期航空運送事業者の輸送実績」をもとに本編集部が概数を整理しています。
日本の航空会社は世界的に見ても定時運航率が高い
実はこんなデータがあるんです。航空情報サービスのCirium(シリウム)が毎年発表する「世界航空会社定時運航率ランキング」において、ANAとJALは毎年TOP10に入る常連です。特にANAは複数年にわたって「世界最高水準の定時運航率」として国際的に表彰されており、日本の航空オペレーション品質の高さを世界に示しています。
遅延・欠航が増えている理由とは
一方で、近年は定時運航率が若干低下傾向にあるというデータもあります。主な要因として挙げられるのは「気象の変化(特に夏季の積乱雲増加)」「人手不足による整備・地上作業の遅延リスク」「航空機材の老朽化と調達難」などです。コロナ禍で大量の人材が業界を離れた影響が、現在も続いているとされています。業界全体での人材確保・育成が急務となっています。
⚠ 知っておくと便利:遅延が多い時間帯一般的に、午後〜夕方の便は遅延リスクが高まります。これは一日の運航をとおして遅延が積み重なる「ドミノ遅延」が起きやすいためです。早朝便(始発便)は機材が前夜から準備されるため定時出発率が最も高い傾向にあります。絶対に遅れたくないビジネス出張や乗継便がある旅行では、早朝便の選択も有力な手段です。
国内線 空港別発着数ランキング
路線・航空会社の次は、「どの空港が最も忙しいか」という観点からもデータを見てみましょう。空港の発着数は、その地域の経済活動や観光需要の指標にもなります。また、空港のキャパシティ(処理能力)の問題は、今後の航空需要拡大に向けた大きな課題にもなっています。
| 順位 | 空港名 | 国内線発着回数(年間概数) | 補足 |
|---|---|---|---|
| 1 | 羽田空港(東京) | 約23万回 | 国内線最大のハブ空港 |
| 2 | 新千歳空港(北海道) | 約11万回 | 北海道全体の玄関口 |
| 3 | 福岡空港 | 約9.5万回 | 市街地に近く利便性抜群。過密空港として有名 |
| 4 | 那覇空港(沖縄) | 約8.8万回 | 観光・LCC需要で増加中 |
| 5 | 伊丹空港(大阪) | 約7.2万回 | 関西の国内線専用空港 |
| 6 | 関西国際空港 | 約4.8万回 | LCC路線拡充で成長中 |
| 7 | 成田国際空港 | 約4.2万回 | LCCのハブとして機能 |
※ 出典:国土交通省「航空輸送統計」(2023年度)をもとに本編集部が整理。
福岡空港の「キャパシティ問題」とは
ランキング3位の福岡空港は、滑走路が1本しかないにもかかわらず、発着回数では羽田・新千歳に次ぐ国内3位という状況です。これは「世界有数の過密空港」と評されるほどの高稼働率であることを意味します。離発着間隔が極めて短く、一便でも遅延が発生するとドミノ式に影響が広がりやすいという課題を抱えています。現在、第2滑走路の増設工事が進められており、2025年度中の供用開始が予定されています。
地方空港の動向:インバウンド需要と国内線への影響
インバウンド(訪日外国人)の急増は、地方空港にも新たな変化をもたらしています。熊本・宮崎・石垣など、観光資源豊富な地方都市への国内線需要が拡大しており、地方路線の重要性が改めて注目されています。特に石垣島・宮古島を結ぶ那覇発着路線は、直近3年間で旅客数が約1.5倍に拡大しています。
地方創生と航空路線の関係
国や自治体が進める地方創生政策と連動して、採算ベースでは維持が難しい地方路線を守るための公的支援のあり方も議論されています。いわゆるPSO(Public Service Obligation=公共サービス義務)と呼ばれる枠組みのもと、地域住民の生活を守るために不可欠な路線を維持する取り組みが全国で広がっています。単なる「移動手段」ではなく、地域の生命線として航空路線を守ることの重要性が、モビリティ政策の観点からも再評価されています。
まとめ:国内線ランキングから見えてくる航空業界の今
今回の記事では、国内線の路線別旅客数・航空会社シェア・旅客数推移・定時運航率・空港別発着数という5つの視点からデータをご紹介しました。最も重要なポイントを整理すると、「羽田〜新千歳路線が国内最多の旅客数を誇る最強路線であること」「ANAとJALの2強体制はまだ続くが、LCCが着実にシェアを伸ばしていること」「コロナ禍からの旅客数回復は2024年度にほぼ完了したこと」の3点です。
次のフライト選びや航空業界の動向をチェックする際に、ぜひ今回のランキングデータを参考にしてみてください。Mobility Nexusでは今後も最新の航空・モビリティデータを定期的に更新していきます。気になる路線や航空会社の情報があれば、ぜひ公式サイトや国土交通省の統計データもあわせてチェックしてみてください。
公共交通・モビリティ業界の最新データやランキング情報は、Mobility Nexusで毎日配信中です。
Mobility Nexus公式サイトで、業界の「今」をチェックしてみてください。











