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計器着陸装置(ILS)とは?航空機の計器着陸システムについて解説!

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計器着陸装置(ILS)は、航空機が滑走路に安全に着陸するための重要な航空支援システムです。本記事では、ILSの役割や構成、さらには最新の研究開発の動向について詳細に解説します。視界が悪い状況下でも正確な進入を可能にするILSの技術的な要素や、ローカライザー、グライドスロープなどの各要素の機能も紹介します。ILSが国際規格として運用されている背景や、航空安全における重要性も掘り下げて解説します。

目次
  1. 計器着陸装置(ILS)とは?
  2. 計器着陸装置(ILS)が必要な理由とその役割とは?
  3. 計器着陸装置(ILS)の基本構成とは?飛行機を安全に導く仕組みを解説!
  4. ローカライザーとは?計器着陸装置(ILS)の水平方向の誘導システム
  5. グライドスロープの機能:計器着陸装置(ILS)垂直方向の誘導システム
  6. マーカービーコンの役割:計器着陸装置(ILS)進入時の位置通知
  7. 計器着陸装置(ILS)の「カテゴリー」とは?CAT I・II・IIIの違いを解説!
  8. 計器着陸装置(ILS)CAT IIIが可能にする視界不良時の安全な着陸とは?
  9. 計器着陸装置(ILS)CAT IIIbとCAT IIIcの違いをさらに詳しく解説!
  10. 世界の計器着陸装置(ILS)設置空港が採用するメーカー
  11. 計器着陸装置(ILS)の研究開発の動向と将来展望
  12. 【まとめ】計器着陸装置(ILS)とは?航空機の計器着陸システムについて解説!

計器着陸装置(ILS)とは?

 

計器着陸装置(ILS)は、航空機が滑走路へ正確に進入し、安全に着陸できるよう誘導する地上の電波システムです。特に天候不良や視界不良時においては、ILSはパイロットにとって重要な役割を果たします。ILSは、ローカライザーとグライドスロープ、マーカービーコンといったシステムから構成され、VHFやUHF帯の電波を利用して位置を指示します。

計器着陸装置(ILS)の基本的な機能

ILSは、航空機が滑走路に適切な角度と方位で進入できるように誘導します。ローカライザーが水平方向の誘導を担当し、グライドスロープが垂直方向の角度を制御します。この2つが協調して働くことで、正確な進入が可能となります。パイロットはこれらの誘導情報をもとに、計器を通じて進入ルートを確認し、最適なタイミングで降下を開始します。ILSが提供する情報により、航空機は滑走路の適切な位置に進入し、安全な着陸を可能にします。

計器着陸装置(ILS)の歴史と発展

ILSは1940年代に開発され、1970年代から多くの空港で標準的に採用されました。その後、技術の進歩により、現在では視界ゼロでも着陸が可能なCAT IIIcと呼ばれる高度なILSも登場しています。特に1970年代以降、ジェット機の普及に伴って視界不良の条件下でも運用可能なシステムが求められるようになり、ILSは技術的な改良が進められました。最近では、ILSに加えGPS技術を活用した新しい着陸支援システムも開発されています。

計器着陸装置(ILS)と他の着陸補助システムの違い

ILSは、全世界で標準的に使用されているため、国際的な運用が可能です。GPSを利用したシステムもありますが、ILSは依然として高い信頼性と安定性を持ち、特に視界不良時に優れた効果を発揮します。GPS誘導システムは広範囲な位置情報の提供には優れますが、ILSの方が精度が高く、特に短距離での精密な進入誘導に適しています。そのため、ILSは多くの空港で主要な着陸補助システムとして採用されています。

計器着陸装置(ILS)が必要な理由とその役割とは?

ILSは、天候が悪化した際や視界が不良の際でも、航空機が安全に滑走路に到達できるようにサポートするシステムです。ILSなしでは、悪天候時の着陸は非常に危険であり、事故のリスクが増加します。そのため、多くの主要空港ではILSが標準装備されています。悪天候によって滑走路が視認しにくくなる場合、ILSが航空機を滑走路まで正確に誘導することで、安全性が飛躍的に向上します。

視界不良時のリスク軽減

パイロットはILSを使用することで、視界が不十分な状況でも正確な進入経路を維持できます。特に霧や雨などで滑走路が見えにくい場合、ILSは安全着陸に不可欠です。視界不良時には、人間の目視による判断が難しくなるため、ILSは地上の電波を使って航空機を誘導し、事故を未然に防ぎます。

自動着陸支援のための技術

ILSはオートパイロットと連携して機能することで、自動着陸も可能にします。これにより、パイロットは人為的なミスを減らし、安全性を高めることができます。特にCAT IIIbやCAT IIIcのカテゴリーに対応するILSでは、航空機が完全に自動的に滑走路に進入し、着陸を行うことが可能です。これにより、滑走路の視認が困難な状況でも、安全かつ確実な着陸が可能になります。

国際規格としての信頼性

ILSは国際民間航空機関(ICAO)の標準規格であるため、世界中の空港で共通の運用が可能です。これにより、各航空会社やパイロットが統一された手順で進入を行うことができます。特に、国際線を運航する航空機にとっては、世界中の空港で同じシステムが利用できることが、安全運航の重要な要素となっています。

計器着陸装置(ILS)の基本構成とは?飛行機を安全に導く仕組みを解説!

ILSは複数のコンポーネントで構成されており、それぞれが独自の役割を果たしています。主要な構成要素として、ローカライザー、グライドスロープ、マーカービーコンが挙げられます。これらの装置が一体となって機能することで、航空機は正確な進入を維持し、滑走路に到達できます。

ローカライザー:水平方向の誘導

ローカライザーは、ILSの水平方向の誘導システムで、航空機が滑走路の中央線に沿って進むように調整します。VHF帯の電波を使用し、滑走路の端に設置されています。ローカライザーの信号は中央から左右に分かれており、航空機が滑走路の中央からずれた場合に左右の差をもとに修正が可能です。

グライドスロープ:垂直方向の誘導

グライドスロープは、ILSの垂直方向の誘導を担当します。航空機が適切な降下角度で進入するための目安を提供し、UHF帯の電波を使用して垂直方向の位置を調整します。通常、滑走路に対して3度の降下角度を設定しており、これに沿って航空機が安全に進入できるように誘導します。

マーカービーコン:進入位置の確認

マーカービーコンは、滑走路に接近する際の位置情報を提供します。特定の地点に設置され、パイロットに進入の残り距離を知らせます。アウトサイド、ミドル、インナーの3つの位置に設置されており、各位置で航空機の進入の進捗を確認するための信号を提供します。

ローカライザーとは?計器着陸装置(ILS)の水平方向の誘導システム

ローカライザーは、計器着陸装置(ILS)の中で水平方向の誘導を担当するシステムです。航空機が滑走路中央に沿って進むように導き、進入時に航空機が滑走路から外れるのを防ぎます。ローカライザーは特に精密な位置情報を提供する役割を持ち、航空機が安全に着陸を行うための重要な要素です。電波の帯域としてVHF帯を利用し、航空機が水平に安定した進路を保てるようにサポートします。ローカライザーの働きにより、悪天候や視界不良時でも正確な着陸が可能となります。

ローカライザーの役割とVHF帯の利用

ローカライザーは、ILSの中でVHF帯(Very High Frequency帯)を利用して電波を発信し、航空機に対して滑走路の中央線に沿った位置情報を提供します。具体的には、滑走路の端から中央に向けて一定の指向性を持つ信号を発信し、航空機が正確な位置に進入できるようにしています。VHF帯の使用により、障害物の影響を受けにくく、安定した信号が送信可能です。

ローカライザーの周波数とその特性

ローカライザーは、108〜112 MHzの範囲内でVHF帯を使用し、航空機の水平位置を安定させるための基準を提供しています。この周波数帯は、航空業界全体で国際的に規定されており、ICAO(国際民間航空機関)の基準に基づいて運用されています。また、この周波数帯で発信される電波は非常に指向性が高いため、滑走路中央に対して精度の高い誘導が可能です。パイロットはこの周波数を頼りに、進入路を逸脱することなく着陸に向かうことができます。

滑走路中央線の維持機能

ローカライザーが発信する信号は、滑走路中央に沿った進路を航空機に知らせるためのものです。航空機が進入する際、ローカライザーの信号により、滑走路中央に向かって正確に進むことが可能になります。特に悪天候や視界が悪い場合でも、パイロットはローカライザーの信号を利用して滑走路中央に沿う位置に機体を維持することができ、着陸の安全性が高まります。このように、ローカライザーはILSの中でも水平誘導に特化した装置であり、安定したアプローチを支えています。

ローカライザーが誘導する範囲

ローカライザーの信号は、通常、滑走路手前18マイル(約29キロメートル)程度まで有効で、この範囲内で正確な誘導が行われます。18マイルという広範囲にわたって信号が届くことで、航空機は遠距離からでも正確な進入角度を維持することができます。ローカライザーが提供する水平方向の誘導が滑走路に近づくにつれてさらに精密になるため、滑走路手前の進入において高精度の誘導を可能にしています。

ローカライザーの精度と安全性への貢献

ローカライザーの精度は、着陸の安全性に直結しています。信号の安定性と指向性の高さにより、航空機は滑走路中央に向けた正確な進入が可能です。航空機がILSの水平方向誘導に従うことで、滑走路の左右からの逸脱を防ぎ、悪天候時や視界不良時でも安定した着陸が実現します。特に、ローカライザーの精度の高さがCATⅢカテゴリーにおける自動着陸システムの実現に大きく貢献しており、安全な航空交通における重要なインフラと位置づけられています。

グライドスロープの機能:計器着陸装置(ILS)垂直方向の誘導システム

グライドスロープは、計器着陸装置(ILS)の中で垂直方向の誘導を担当する重要な要素です。航空機が滑走路に対して適切な降下角度で進入できるように、グライドスロープは3度の理想的な降下角度に沿った誘導を提供します。これにより、航空機は安定した降下経路を保ちながら安全に滑走路に向かうことができます。特に悪天候や視界が不良な状況下で、グライドスロープが正確な誘導を行うことで安全な着陸が可能となります。

グライドスロープの役割とUHF帯の利用

グライドスロープは、航空機が滑走路に適切な降下角度で進入できるように誘導を行うシステムで、UHF帯(Ultra High Frequency帯)の電波を利用しています。この電波は、航空機に対して滑走路に向かって正確な垂直位置情報を提供します。グライドスロープは、主に滑走路の端に設置され、UHF帯を利用することで、他の信号からの干渉を受けにくく、安定した誘導が可能です。

グライドスロープの周波数とその特性

グライドスロープは、329〜335 MHzのUHF帯で運用されており、この周波数帯は航空機に対して安定した降下情報を提供するのに適しています。ICAO(国際民間航空機関)による規定に基づき、各空港のグライドスロープ周波数が割り当てられています。航空機は、このUHF帯の信号を受信することで滑走路までの理想的な降下経路を確認し、安全な降下が可能となります。また、UHF帯を利用することで、気象条件に左右されにくく、悪天候下でも正確な誘導が期待できます。

適切な降下角度の提供

グライドスロープは、航空機が滑走路に対して適切な降下角度(通常3度)を維持できるようにサポートします。この3度の降下角度は、パイロットにとって最も安定して安全な進入角度であり、過剰な降下や上昇を防ぐ役割を果たします。視界が悪い場合でも、パイロットはグライドスロープから送信される信号を頼りに、正確な進入角度を維持し、滑走路までのスムーズな降下が可能です。こうしたシステムが、視界不良や悪天候においても航空機の安全な着陸を支えています。

航空機の降下と安定性の確保

グライドスロープは、降下中の航空機の安定性を保つためにも重要な役割を担います。航空機がグライドスロープの信号に従うことで、滑走路への進入が安定し、過度な降下や上昇によるリスクが軽減されます。これにより、視界が悪い状況でもパイロットが適切な角度で滑走路に向かうことができ、着陸時の安全性が高まります。航空業界においてもグライドスロープは必須の安全システムとされ、ILSの重要な構成要素と位置づけられています。

グライドスロープとCATⅢ対応の重要性

グライドスロープは、ILSの精密進入を可能にする要素であり、特にCATⅢ対応空港では自動着陸の実現に不可欠なシステムです。CATⅢカテゴリーでは視界がゼロに近い状況でも着陸が可能であり、グライドスロープはこのような厳しい条件下での航空機の安全な着陸を支援します。滑走路の適切な位置に航空機を導くグライドスロープの役割は、航空業界全体の安全性向上にも寄与しており、多くの空港での導入が進められています。

 

マーカービーコンの役割:計器着陸装置(ILS)進入時の位置通知

マーカービーコンは、航空機が滑走路に向かって進入する際に、パイロットに対して位置情報を知らせる地上設備です。通常、進入経路上に3か所(アウトサイドマーカー、ミドルマーカー、インナーマーカー)に設置されており、それぞれの位置で航空機の進入距離をパイロットに通知します。これにより、パイロットは進入の段階ごとに正確な位置情報を得られるため、滑走路への着陸準備を効率的に行うことが可能です。

アウトサイドマーカー

アウトサイドマーカーは、滑走路端から最も離れた地点に設置されており、航空機がILS進入を開始する際の目安として使用されます。通常、この地点は滑走路から約7〜10キロメートルの位置にあり、航空機が進入経路に正しく位置しているかをパイロットに知らせる役割を果たします。アウトサイドマーカーからの信号を受け取ることで、パイロットはILS進入が正しく行われていることを確認し、滑走路へのアプローチを開始します。また、アウトサイドマーカーの信号は通常、低周波帯を利用しており、航空機に独特の音声信号として通知されます。

ミドルマーカー

ミドルマーカーは、滑走路から約1050メートル地点に設置されており、パイロットに滑走路接地までの距離を通知します。この位置は、航空機が最終段階に入ることを示す重要なポイントであり、パイロットにとっても着陸体制の最終確認を行うタイミングとなります。ミドルマーカーからの信号を受け取ると、パイロットは進入経路が正常であるかどうかを再確認し、滑走路接地に備えることができます。この地点での信号は、進入の精度を高め、着陸の安全性を向上させる重要な役割を担っています。

インナーマーカー

インナーマーカーは、滑走路端に非常に近い位置に設置されており、特にCAT IIおよびCAT IIIカテゴリーの進入時に使用されます。インナーマーカーからの信号は、視界がゼロに近い悪天候条件下で航空機が進入している場合でも、パイロットに滑走路端までの正確な距離を知らせます。この信号により、パイロットは滑走路の接地タイミングを適切に把握し、精密な着陸が可能になります。インナーマーカーは、悪天候時の進入において非常に重要な役割を果たし、滑走路への安全な誘導に不可欠な設備とされています。

マーカービーコンの音声信号とパイロットへの通知

マーカービーコンは、航空機に独特の音声信号で位置情報を通知します。例えば、アウトサイドマーカーは低いトーンのビープ音、ミドルマーカーはやや速いビープ音、インナーマーカーは高いトーンの連続ビープ音で知らせます。これにより、パイロットは視界が不良で計器頼りの進入を行っている際でも、進入段階ごとに位置を把握しやすくなります。この音声信号は進入時の重要な位置情報として活用され、ILS進入の一貫した安全性を支えています。

マーカービーコンと視界不良時の進入サポート

マーカービーコンは、特に視界が悪い状況下での進入において大きな役割を果たします。アウトサイド、ミドル、インナーマーカーの各信号は、パイロットに対して位置の確認を行うための情報を提供し、安定した進入をサポートします。視界不良時においても、パイロットはマーカービーコンの信号を頼りに、進入経路を正確に維持しながら滑走路への接近を行うことができます。このように、マーカービーコンは航空機の進入位置を通知するだけでなく、航空機の安全な着陸を確保するための重要な設備です。

計器着陸装置(ILS)の「カテゴリー」とは?CAT I・II・IIIの違いを解説!

計器着陸装置(ILS)には、視界や気象条件に応じてCAT I、CAT II、CAT IIIの3つのカテゴリーがあり、それぞれ異なる性能基準を持っています。これらのカテゴリーは、視界の悪い状況下でも安全な着陸を支援するための基準を提供しており、空港や航空機の設備もそれに合わせた対応が必要です。

CAT I:標準的な視界条件でのILS着陸支援

CAT I(Category I)は、ILSの中で最も基本的なカテゴリーで、標準的な視界条件での着陸支援を提供します。CAT Iでは、滑走路の視認距離(RVR: Runway Visual Range)が800メートル以上で、決心高度(DA: Decision Altitude)が200フィート(約60メートル)であることが求められます。この条件により、通常の天候下でILS進入と着陸が可能です。

CAT Iの条件下では、パイロットは200フィートで滑走路の目視ができない場合、着陸を中止してゴーアラウンドを行います。多くの空港で採用されており、標準的なILS対応機材で運用できるカテゴリーです。

CAT II:悪天候時に対応した精度の高い着陸支援

CAT II(Category II)は、より厳しい気象条件下での着陸をサポートするILSカテゴリーです。CAT IIの視界要件は350メートル以上で、決心高度は100フィート(約30メートル)まで引き下げられています。この条件により、霧や降雨などで視界が悪化した際にも着陸できるように支援します。

CAT IIの運用には、空港と航空機において高い精度のILS対応システムが必要です。滑走路や進入経路の監視装置もCAT Iより精密であるため、CAT II対応の空港には専門的な設備が整えられています。また、パイロットの訓練もCAT IIに対応するために重要です。

CAT III:視界がゼロに近い状況下での高度な着陸支援

CAT III(Category III)は、視界が非常に悪い状況下での着陸を可能にするILSの最高水準のカテゴリーです。CAT IIIでは、滑走路の視認距離が75メートル以下でも対応可能で、パイロットはほぼ自動着陸システムに頼って進入します。

CAT IIIの実現には、空港と航空機に極めて高精度のILSシステムと自動化設備が必要で、特に視界がゼロに近い状況でも安全に着陸ができるため、悪天候時においても信頼性の高い着陸を実現します。航空業界では特にCAT IIIが、悪天候時の運航継続性を高める重要な技術として普及しています。

計器着陸装置(ILS)CAT IIIが可能にする視界不良時の安全な着陸とは?

CAT IIIは、視界が非常に悪い状態でも正確な着陸を可能にする高度な計器着陸装置(ILS)システムです。霧や大雨といった滑走路の視認が難しい気象条件下でも、自動化システムにより航空機が安全に滑走路へと降下し着陸します。CAT IIIにはさらに細かく分かれたCAT IIIa、CAT IIIb、CAT IIIcのサブカテゴリーがあり、それぞれの気象条件や視界の制限に応じた性能が設定されています。

CAT IIIa:低視界での自動着陸

CAT IIIaは、滑走路視認範囲(RVR)が175メートル以上の条件で、決心高度0フィートでの進入が可能です。これにより、パイロットは滑走路をほぼ視認せずに着陸操作が行えるため、濃い霧や雨が降っている状態でも安全に着陸が可能です。CAT IIIaの対応には、航空機の自動着陸システムと空港側の高度なILS装置が必要です。

CAT IIIaはパイロットが進入中に滑走路を直接目視できなくても、ILSと自動操縦により正確に滑走路に向かって進むことができます。このサブカテゴリーでは、滑走路の視界が限定されていても着陸できるため、悪天候が頻発する地域の空港で広く使用されています。

CAT IIIb:非常に悪い視界条件下での自動着陸

CAT IIIbでは、滑走路視認範囲が50メートル以上で決心高度0フィートでの進入が可能となります。これはCAT IIIaよりもさらに低い視界条件であり、航空機が自動着陸システムに完全に依存して進入と着陸を行うことを意味します。CAT IIIb対応の空港と航空機は、CAT IIIaよりもさらに精度の高い自動化システムが備えられている必要があります。

このサブカテゴリーでは、滑走路視認が難しい非常に悪い気象条件下でも、ILSと自動着陸システムが協調して航空機の進入と着陸を支援します。CAT IIIbのシステムによって、航空機は滑走路を目視できなくても、安全かつ精密に滑走路上の指定されたポイントに降下して接地します。

CAT IIIc:視界ゼロの完全自動着陸

CAT IIIcは、視界が全くない「視界ゼロ」の状況でも着陸が可能なカテゴリーで、決心高度や滑走路視認範囲に制限がありません。CAT IIIcに対応した航空機と空港は、完全な自動着陸システムを持ち、ILSによる高精度な誘導のもと滑走路上に着地します。

CAT IIIcが対応する視界ゼロの条件下では、濃霧などで滑走路が全く見えない場合でも、航空機が正確に滑走路に進入し着陸します。このシステムは、視界不良による離発着制限を大幅に緩和し、極端な悪天候時でも航空機の運航が可能となります。しかし、CAT IIIc対応には空港や航空機に最高水準のILSと自動着陸装置が求められ、導入には高いコストがかかるため、CAT IIIc対応の空港は限られています。

まとめ:計器着陸装置(ILS)の「カテゴリー」とは?

カテゴリー 視認範囲 (RVR) 決心高度 (DA) 特徴と適用条件
CAT I 800メートル以上 200フィート(約60メートル) 標準的な視界条件でのILS着陸。通常の天候下で滑走路を目視しながら着陸可能。
CAT II 350メートル以上 100フィート(約30メートル) 悪天候下でのILS着陸支援。視界不良でも精度の高い進入が可能。
CAT IIIa 175メートル以上 0フィート 濃霧や降雨時の低視界でも着陸可能。ILSと自動操縦による自動着陸。
CAT IIIb 50メートル以上 0フィート 非常に悪い視界でも自動着陸が可能。高度な自動化システムが必要。
CAT IIIc 視界ゼロ 0フィート 視界ゼロでも完全自動着陸が可能。ILSと高精度な自動着陸システムが必要で、高度な設備投資が必要。

計器着陸装置(ILS)CAT IIIbとCAT IIIcの違いをさらに詳しく解説!

計器着陸装置(ILS)には、視界が非常に悪い状況下での着陸を可能にする高度なカテゴリーとしてCAT IIIbとCAT IIIcがあります。両者はどちらも視界が極めて悪い条件での着陸を支援しますが、大きな違いは「視界ゼロ」の状況での着陸可否にあります。以下では、CAT IIIbとCAT IIIcの具体的な特徴と空港設備の要件について詳しく解説します。

CAT IIIbの特徴

CAT IIIbは、視界が50メートル以上の条件下で、決心高度0フィートまでの進入と着陸を可能にするシステムです。これにより、滑走路がパイロットにとって視認が難しい非常に悪い気象条件でも、ILSの誘導に従って自動着陸が行われます。パイロットはこのカテゴリーで、ILSに頼って安全な進入を継続し、滑走路上での接地までの一連のプロセスを自動的に行うことができます。

CAT IIIbに対応する空港には、非常に高精度なILS誘導設備と滑走路進入灯、視界誘導装置、滑走路視程(RVR)測定装置などが設置されている必要があります。また、航空機側でも精度の高い自動着陸装置と、適切なILS対応システムが必要です。CAT IIIbでは、視界が限られていても、安全かつ安定した進入を可能にすることで、悪天候時の運航継続性を向上させます。

CAT IIIcの特徴

CAT IIIcは、CAT IIIカテゴリーの中でも最高レベルの自動着陸システムであり、「視界ゼロ」の状況でも進入と着陸が可能です。CAT IIIcには滑走路視認範囲や決心高度の制限が一切なく、濃霧や降雪などで完全に滑走路が目視できない条件下でも、自動化システムが航空機を正確に滑走路へと誘導します。このカテゴリーに対応した航空機はILS誘導に完全に依存し、滑走路上に安全に着陸できます。

CAT IIIcの条件下では、パイロットは滑走路を全く目視できないまま着陸が行われるため、自動着陸システムとILSの精度が極めて重要です。CAT IIIcの対応は高コストな設備投資を必要とするため、全ての空港で利用できるわけではなく、対応している空港は限られています。

空港の設備要件

CAT IIIbおよびCAT IIIcに対応するためには、空港側に非常に高度な地上設備が必要です。滑走路進入灯システム、視界誘導システム、滑走路視程測定装置、ILSシステムの高精度化などが求められます。また、地上側のILS送信設備が信頼性と精度を維持できるように、定期的な点検や調整が必要です。

特にCAT IIIcは視界ゼロでの着陸をサポートするため、空港の照明設備やILSシステムには高い精度と冗長性が求められます。これにより、極端な気象条件でも航空機が安全に着陸できる環境が整えられ、悪天候時の航空運航の信頼性向上に貢献します。

航空機の機能とパイロットの訓練要件

CAT IIIbおよびCAT IIIc対応の航空機は、高度な自動着陸システムやILSシステムを搭載しており、通常の着陸と比べて自動化された進入が行われます。パイロットも、これらの高度なシステムを操作するための専門的な訓練を受ける必要があります。特にCAT IIIcにおいては、視界ゼロの状況での自動着陸が行われるため、パイロットは万が一の手動介入に備えて徹底的な訓練を受けます。

まとめ:計器着陸装置(ILS)CAT IIIbとCAT IIIcの違いをさらに詳しく解説!

カテゴリー 視認範囲 (RVR) 決心高度 (DA) 特徴と要件
CAT IIIb 50メートル以上 0フィート 非常に悪い視界でも自動着陸が可能。高精度なILS誘導設備、滑走路進入灯、視界誘導装置、
RVR測定装置が必要。航空機にも高度な自動着陸装置とILS対応システムが必須。
悪天候時の運航継続性を向上。
CAT IIIc 視界ゼロ 0フィート 完全に視界ゼロの条件で自動着陸が可能。滑走路視認範囲や決心高度の制限なし。
高精度なILSと自動化システムが必要で、設備投資が高額。対応空港は限られる。
視界が全くない状況でも正確な誘導で安全な着陸を実現。

世界の計器着陸装置(ILS)設置空港が採用するメーカー

世界中の空港で採用されているILSシステムは、主に大手の航空機器メーカーが提供しています。これにより、信頼性と安全性が確保されています。

サーブ社

サーブ社は、ILSシステムの大手メーカーであり、特に高精度な誘導技術を提供しています。多くの空港でサーブ社のILSが採用されています。

テルメックス社

テルメックス社は、世界中の空港向けにILSを提供しており、安定性と長寿命の設備で知られています。大規模な空港での導入実績が豊富です。

トーレンテック社

トーレンテック社もILSの大手プロバイダーであり、特に自動着陸支援機能を充実させた製品を展開しています。

計器着陸装置(ILS)の研究開発の動向と将来展望

ILSは、航空機がより正確かつ安全に着陸できるよう、技術の進歩と共に研究開発が進められています。今後は、さらに高度な自動化技術や気象条件に左右されないシステムの開発が期待されています。

次世代のILS技術

次世代ILSでは、既存のシステムよりも高精度かつ信頼性の高い誘導が可能となる技術の導入が進んでいます。これにより、航空機の進入と着陸の安全性がさらに向上することが期待されています。

衛星技術との連携

ILSとGPSなどの衛星技術を連携させることで、より広範囲かつ精度の高い誘導が可能になります。これにより、ILSは更に正確で安定した誘導を提供することが可能になります。

環境への配慮と持続可能な運用

環境への配慮も考慮され、ILSシステムはエネルギー効率の向上や持続可能な運用が進められています。これにより、空港の環境負荷を低減し、長期的に利用可能なシステムへと進化しています。

【まとめ】計器着陸装置(ILS)とは?航空機の計器着陸システムについて解説!

計器着陸装置(ILS)は、航空機が安全に着陸するための重要なシステムです。特に視界が悪い条件での着陸支援に優れ、多くの主要空港に採用されています。ILSの構成要素であるローカライザー、グライドスロープ、マーカービーコンが一体となり、飛行機の進入を正確にサポートします。さらに、ILSは国際的な標準規格に基づき、視界ゼロの条件でも着陸を可能にするCAT IIIcまでの高度な技術を備えています。

  • ILSは滑走路に安全に進入するための電波誘導システム
  • ローカライザーが水平方向、グライドスロープが垂直方向の誘導を担当
  • マーカービーコンが進入時の位置を通知
  • CAT IIIb・IIIcでは視界ゼロの着陸が可能
  • 世界の主要空港で採用される重要なシステム

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