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「保守に手が掛からない」とはどういうことか? ― 公共交通現場での“保守性”の意味を解説

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公共交通業界で新たな技術や製品を導入する際、よく聞かれる言葉のひとつに「保守に手が掛からない」という表現があります。しかし、これが具体的に何を指すのか、曖昧なまま使われているケースも少なくありません。本記事では、鉄道やバス、空港設備などの保守現場を前提とし、「保守が容易である」ことの具体的な意味を、現場目線で掘り下げて解説します。

 

「保守に手が掛からない」とは何か?

この表現は、単に“壊れにくい”という意味だけではありません。設備導入後のライフサイクル全体における作業負担・時間・費用が少ないことを指す、包括的な評価軸です。以下の観点から具体的に整理します。

1. 点検・監視の手間が少ない

  • 定期点検の回数や工数が少ない
  • 自己診断機能やリモート監視が可能
  • 状態変化をログで追跡できる設計

2. 故障しにくい・トラブルが予測可能

  • MTBF(平均故障間隔)が長い設計
  • 故障モードが限定的で、再現性がある
  • 過去事例に基づくトラブル傾向が蓄積されている

3. 修理や部品交換が簡便

  • モジュール交換方式で、現地で短時間対応が可能
  • 特殊工具や高いスキルが不要
  • 部品の脱着構造や表示がわかりやすい

4. 属人化せず、誰でも対応可能

  • マニュアルや手順書が整備されている
  • 新人や非専門職でも基本操作が可能
  • 教育コストが低く、引き継ぎしやすい

5. 長期的に維持しやすい設計

  • 長期間にわたる部品供給保証
  • OS・ソフトウェアのバージョン更新に対応
  • 製造元のサポート体制が明確・安定

6. 他設備との干渉が少ない

  • 保守作業時に他設備を停止する必要がない
  • 空間的にアクセスしやすい配置
  • 信号系・通信系との電気的干渉がない

 

現場が重視する“保守性”とは?

現場の技術者や保守担当者が「手が掛からない」と判断するポイントは、必ずしも製品カタログには明記されていません。むしろ、以下のような要素が評価されます:

  • 深夜の短時間作業でも完了できるか?
  • 突発故障時にすぐ代替対応できるか?
  • 教育を受けていない応援要員でも動かせるか?
  • 過去に似た製品を使っていた実績があるか?

つまり、「手が掛からない」とは単なる機器性能ではなく、人的・時間的なコストの最小化を意味します。

 

導入評価に使える観点としての「保守性」

製品や技術の導入時には、価格や性能だけでなく「保守性」を一つの評価軸にすることで、導入後のトラブルや不満を減らすことが可能です。特に人手不足が深刻な地方事業者では、保守が容易な設計が経営上のリスクを減らします。

 

まとめ:保守性は現場の“使い勝手”の核心

  • 「保守に手が掛からない」とは、点検・修理・教育・調達など全体において負担が少ないこと
  • 単なる故障率の低さではなく、作業性・属人化リスク・対応スピードも含めた総合的な評価軸
  • 公共交通現場では「深夜短時間・少人数・現地対応」が基本となるため、保守性の高さは極めて重要
  • 導入評価において「保守性」は費用対効果の核心であり、現場の声とセットで考えるべき

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