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「技術士なんて意味ない」と言われる理由と、それでも資格を使い倒す方法

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はじめに:資格は“役に立たない”のか?

「資格なんて持っていても、現場では何の役にも立たない」——そう感じている技術者の方は少なくありません。特に技術士資格については、「机上の空論を振り回しているだけではないか」といった批判も根強くあります。現場の矛盾、制約、利害関係。こうしたものに真正面から向き合っている技術者の目には、試験に出てくるような理想論は、まるで現実離れしたものに映ることでしょう。

では、技術士という資格に、本当に価値はないのでしょうか。あるいは、それを“持っていること”よりも、“どう使うか”のほうが重要なのではないでしょうか。本記事では、資格に対する懐疑と、資格を道具として使い倒すという視点から、技術士制度を再考してみたいと思います。

 

「資格の机上性」が現場技術者を遠ざける

公共交通業界の技術導入やインフラ整備の分野では、「試験の世界」と「現場の世界」の間にある溝を痛感する場面が多々あります。試験では「あるべき論」が問われます。たとえば「信頼性を高める設計」「ステークホルダーとの合意形成」など。もちろん重要なテーマではありますが、実際には予算も人手も足りず、設計変更も自由にできない中で、どのように泥臭く問題を解決するかが日常です。

技術士試験では、あたかもすべてに最適解を見出せるスーパーマンのような回答が求められます。コスト、安全性、施工性、環境配慮、地域社会への説明責任……それらすべてをバランスよく解決する論理構成が高く評価されます。しかし、現場ではこれらがしばしばトレードオフの関係にあり、どこかで何かを“切る”決断が必要になります。そこには、資格試験では問われない「感情」や「政治」も介在するのが実情です。現実の不条理と向き合いながらも前に進むことが、実務技術者としての本質ではないでしょうか。

また、論文試験の多くは“文章力”に大きく左右されます。「この答案は美しい」「論理構成が明快」といった評価がなされ、現場で泥をかぶって仕事をしてきた技術者よりも、試験の“書き方”を習得した受験者が評価される場面もあります。こうした事情から、現場を支えている技術者ほど、資格試験から距離を置きがちになってしまうのです。

 

資格制度が現場にもたらすもの

それでも、技術士という資格には意味があります。むしろ、意味があるからこそ、その使い方を誤ると危ういのです。資格保有者が「自分は有資格者だ」として制度の正しさを無批判に信じてしまうと、その発言は現場から乖離し、説得力を失います。

一方で、技術士の資格には確かな「効力」も存在しています。たとえば官公庁系の業務では、技術士の参画が要件になっていることも多く、ある種の“技術的信用”のパスポートとして機能しています。また、企業内でも、若手育成や他部門との調整において「資格を持っている人」としての立場がプラスに働く場面は多々あります。

とくに、相手が技術の内容を詳細に評価できない場合においては、「技術士資格保有者であること」が判断基準になります。これは教育機関や審査機関、行政との交渉において特に顕著です。つまり、資格は“技術の代弁者としての信頼”を担保するツールと捉えると、その存在意義は明確になります。

 

Mobility Nexusとの交点:現場起点の知見が、資格に命を吹き込む

Mobility Nexusでは、公共交通分野における技術導入支援や意思決定支援を目的とし、製品評価、導入障壁の整理、費用対効果、現場制約、関係者調整といった観点で情報を発信しています。これらの活動は、実は技術士試験で求められる「技術的体験論文」と極めて構造が近いものです。

試験では“仮想の審査員”に向けて書きますが、Mobility Nexusでは“リアルな読者”に向けて、判断材料を届けています。この違いは決定的です。どちらも論理性・構造力が求められるものの、後者は「社会を動かす情報」になります。試験で得たスキルを現場へ持ち出す。それこそが、資格に命を吹き込む行為だと考えています。

とくに当メディアの主な読者層には、自治体職員、中小交通事業者、スタートアップ関係者など、技術的に孤立しやすい方々が多くいらっしゃいます。そうした方々にとって、制度論や理想論ではなく、現場に即した判断材料こそが必要とされているのです。

 

資格を「取る」より「使い倒す」

資格は“持っている”だけでは意味がありません。“どう使うか”こそが問われる時代です。たとえば、技術士資格を活用して自治体や交通事業者の設備更新計画に技術支援を行う。あるいは企業研修の中で、実際のプロジェクト経験と共に、試験知識を再構成して伝える。そうした行動こそが、「資格の社会的意味」を再定義していきます。

Mobility Nexusとしても、今後は技術士有資格者による記事監修や教育コンテンツの共同開発を視野に入れています。ただし、それは「肩書きのため」ではありません。あくまで現場視点を補強し、意思決定を支えるための“信頼設計”の一環として位置付けています。

資格とは“現実を語るための道具”であり、そのまま飾っていては錆びていくだけです。試験で身につけた論理性や整理力を、誰かの意思決定や現場判断に役立てる。それが「使い倒す」という姿勢なのではないでしょうか。

 

それでも「取らない」という選択もある

一方で、「資格をあえて取らない」という選択も当然あり得ます。現場で実績を積み重ね、信頼を獲得している方にとっては、試験のために新たな時間を割くよりも、自身の活動に集中した方が効果的な場合も多いからです。

 

まとめ:資格は、道具にすぎない

  • 技術士という資格は、それ自体が目的ではなく、使い方次第で意味を持つ「道具」です。
  • 制度に依存するのではなく、制度を越えて現場に寄り添う視点こそが、真の価値を生み出します。
  • Mobility Nexusのような実務メディアと資格制度が交差することで、新たな技術者像が立ち上がります。
  • 「資格を取るかどうか」ではなく、「資格で何を変えるのか」が問われる時代です。

Mobility Nexusは今後も、形式ではなく実質を重視し、資格を現場で生かすための視点と情報を提供してまいります。

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