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日本航空(JAL)、AI活用でリアルタイム乱気流予測プロジェクトで空の安全と環境負荷低減に挑む
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日本航空(JAL)が、航空機の安全運航と環境負荷低減を両立させる画期的なプロジェクトを始動させました。東北大学、ウェザーニューズ、DoerResearchと連携し、晴天乱気流をリアルタイムで予測する技術の開発に着手。本プロジェクトは、国土交通省の支援のもと、空の旅をより安全かつ快適にするだけでなく、持続可能な社会への貢献を目指すものです。
JAL、リアルタイム乱気流予測プロジェクトを始動
日本航空(JAL)は、東北大学、ウェザーニューズ、DoerResearchと共同で、リアルタイムでの乱気流予測技術を開発するプロジェクトを開始しました。この取り組みは、国土交通省の「交通運輸技術開発推進制度」に採択されており、航空機の運航における安全性向上と環境負荷低減を目的としています。プロジェクトでは、航空機から得られる気象データや人工衛星データ、そしてAIを駆使し、予測が困難とされる晴天乱気流(CAT: Clear Air Turbulence)の発生をリアルタイムで予測するシステムの構築を目指します。これにより、乱気流を回避する最適な飛行ルートを選択できるようになり、乗客の安全性確保はもちろん、不必要な燃料消費を抑えることでCO2排出量削減にも繋がると期待されています。
気象学とAIが融合する「晴天乱気流予測」の専門的解説
晴天乱気流は、積乱雲などの視覚的な兆候がないにもかかわらず発生する、予測が極めて難しい大気の揺れです。主に、ジェット気流周辺の風速や風向の急激な変化(ウィンドシア)や、山岳波(山を越えた風が引き起こす波状の空気の流れ)によって引き起こされます。本プロジェクトは、この予測困難な現象に対し、複数の先進技術を組み合わせることでアプローチしています。
具体的には、まず航空機に搭載された気象観測機器(ACARS: Aircraft Communications Addressing and Reporting Systemなど)から、気温や風速、風向といったデータをリアルタイムで収集します。次に、これらの機体データに加え、人工衛星が観測した大気の温度分布や水蒸気量、さらには地上観測網のデータなど、膨大な気象情報を統合。そして、これらの多岐にわたるデータをAIが解析し、過去の乱気流発生データと照らし合わせることで、乱気流の発生パターンを学習し、予測モデルを構築します。この「機械学習」のプロセスが、従来の物理モデルだけでは捉えきれなかった複雑な大気現象の予測精度を飛躍的に向上させる鍵となります。
AIとビッグデータが切り拓く航空技術の未来
このプロジェクトは、単に乱気流を予測するだけでなく、航空技術におけるデータ活用の新しい可能性を示唆しています。航空機からリアルタイムで収集される膨大なデータ(ビッグデータ)は、運航状況や機体性能の最適化、さらには将来的な自動運航システムへの応用など、多岐にわたる技術開発の基盤となります。AIは、このビッグデータから人間には見つけられない法則性や相関関係を発見し、より効率的で安全な運航計画を可能にします。例えば、AIが予測した乱気流情報を基に、フライトプランを自動で最適化し、安全なルートをナビゲーションするといった、人とAIが協調する次世代のコックピットシステムの開発も視野に入ってくるでしょう。また、この技術は、将来的にドローンや空飛ぶクルマといった新しい空のモビリティの安全運航にも応用される可能性を秘めており、航空業界全体のデジタルトランスフォーメーションを加速させる一歩となり得ます。
空の旅の安心と地球環境への貢献を両立
日本航空が推進するこのプロジェクトは、乗客の安心・安全を最優先に考えながら、地球環境への配慮も同時に実現する、持続可能な社会に向けた先進的な取り組みです。乱気流による航空機の揺れは乗客の不安を増大させ、時には負傷者が出る原因ともなりますが、この予測技術が実用化されれば、揺れを最小限に抑えるルート選択が可能となり、乗客の満足度向上に大きく貢献します。また、乱気流を避けることで不必要なルート変更や高度変更が減少し、燃料消費の削減に繋がります。これは、直接的な運航コスト削減だけでなく、CO2排出量削減という形で、航空業界が抱える環境問題への解決策としても大きな意味を持ちます。安全性の追求と環境への配慮を両立させる本プロジェクトは、これからの航空業界の新たなスタンダードを築くものとして、今後の進展が注目されます。
参考文献:https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/09/press20250924-03-JAL.html
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