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自動改札機の後継選定で重視される条件とは? 現場課題と将来展望を整理!

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公共交通インフラの要として機能してきた自動改札機。近年は設備の老朽化に加え、部品供給の制約、非接触化の流れなど複数の要因が重なり、全国の交通事業者で後継機種の選定が進んでいます。本記事では、自動改札機の更新にあたり現場で実際に重視される条件を事実ベースで整理し、併せて今後の技術動向を展望として紹介します。

 

第1部|事実ベース:現場で重視される選定条件

1. 社会的背景と制度動向

  • 多くの交通事業者において、ICカード対応型自動改札機の導入から15年以上が経過し、更新時期を迎えている。
  • 顔認証・QRコード等の次世代技術が一部実証導入されており、更新機に求められる機能要件も拡張傾向にある。
  • 駅係員の省人化が求められる中で、利用者トラブル対応力や運用柔軟性がより重視されている。

2. 現場での課題と評価観点

  • 保守性:モジュール交換の簡便さ、メンテナンス工数、障害時の復旧時間。
  • 部品調達性:標準部品かどうか、供給保証年数、メーカーのサポート体制。
  • データ連携性:他駅務機器(券売機・清算機)との一体管理、ログの一元取得。
  • 利用者UI:誤操作時の表示や誘導、ICエラー対応のしやすさ。

3. 技術的アプローチの類型

  • フルスペック型改札機:都市圏で主流。性能維持と通信機能の強化を両立。
  • 簡易IC改札機:地方ローカル線や無人駅向けに採用。省スペースかつ低コスト。
  • タッチレス対応型:顔認証やスマートフォン連携など。実証フェーズが中心。

4. 主な製品動向(公式情報に基づく例)

  • 日本信号株式会社:顔認証改札の実証実績あり。改札管理装置との一体化に強み。
  • 東芝インフラシステムズ:次世代IC改札機「TICGate2」を開発、センター処理・省電力性が特長。
  • オムロン ソーシアルソリューションズ:「EG-RXシリーズ」を展開。ユニット交換の簡便性を重視。

※上記は各社公式サイトやニュースリリースに基づく2025年4月時点の情報です。

5. 導入に向けたチェックポイント

  • 設置条件・構造的要件:駅構内への設置スペース/既存配線との整合性。
  • システム連携・互換性:券売機・清算機とのプロトコル対応、遠隔管理への対応可否。
  • 保守体制・部品供給:長期供給体制(10年以上)・EOL後のサポート体制。

 

第2部|将来展望:改札機の進化と期待される方向性

1. 顔認証・タッチレス化

既に一部の空港や都市圏では、顔認証による改札通過の実証実験が進んでおり、将来的にはチケットレス・カードレスの交通環境構築が期待されています。

2. MaaSとの統合基盤

センターサーバ型の処理方式が主流化すれば、MaaS基盤とのリアルタイム連携が容易となり、駅改札が「都市交通のハブ」としての役割を担うようになります。

3. 環境対応・省エネ設計

今後の新型改札機では、従来比で電力消費を数10%削減する設計が求められます。さらに、ステンレス材のリサイクル性や、再エネ活用との親和性など、環境配慮も選定基準の一部となる可能性があります。

※注記: 本項は今後の技術動向に基づく展望であり、具体的な導入時期や仕様は未定です。

 

まとめ:現場課題の言語化が選定の出発点

自動改札機の更新においては、単なる機器更新にとどまらず、「運用の再設計」として捉える必要があります。現場の声に耳を傾け、保守性・拡張性・運用性といった多面的な観点から導入条件を洗い出すことが、最適な機種選定と長期安定運用につながります。

Mobility Nexusでは、今後もメーカー各社の製品情報や導入事例、制度動向といった情報を継続的に発信し、技術導入を検討する事業者を支援してまいります。

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自動改札機更新前の総点検チェックリスト

本チェックリストは、自動改札機の更新・新規導入にあたり、初期検討から調達・施工・運用までの一連の流れにおける確認ポイントを網羅したものです。特に鉄道・バス事業者の設備担当者設計コンサルタント駅務機器ベンダーとの折衝担当にとって、稟議や仕様書作成時の参考資料として活用可能です。

構造・設置条件

  • 設置スペースは現行設備と寸法互換性があるか?
  • 改札本体の設置寸法(幅・奥行・高さ)は実際の改札通路に収まるか?
  • 床下の電源・配線ルートは既存の構内設備と整合しているか?
  • 拡張時に追加設置できるだけのスペース的余裕を確保しているか?
  • 重量物設置に対する床強度評価を実施したか?

システム連携・互換性

  • 既存の券売機・精算機との通信プロトコルの整合性を確認したか?
  • 改札機の運賃処理方式(端末内処理/センター処理)は運用方針と一致しているか?
  • ICカードサーバとのリアルタイム連携試験を実施したか?
  • 改札機から収集されるログデータは既存の中央監視システムと統合可能か?
  • 障害通知・アラートが他設備と共通形式で連携できる設計になっているか?

運用・UI・利用者対応

  • 改札通過エラー時の表示内容は、外国人や高齢者にも理解しやすい表記になっているか?
  • 音声ガイダンスやランプ表示は、視覚・聴覚に配慮した設計になっているか?
  • タッチレス決済・QRコード読み取りなど非接触機能に対応しているか?
  • ベビーカー・車いす通行用改札機の幅員はバリアフリー基準を満たしているか?
  • 急な停電・システム障害時にも手動開放などの退避機能が備わっているか?

保守・維持管理

  • 点検・ユニット交換に要する平均作業時間を把握しているか?
  • 保守マニュアルの提供範囲(PDF/印刷/技術講習)は確認済みか?
  • 日常点検用ツール・診断メニューの有無と操作性は確認したか?
  • 遠隔監視・自動通知機能の設定内容を確認し、既存の業務フローと合致させたか?
  • 保守契約の対応範囲(点検/部品交換/オンサイト対応)を整理したか?

調達・供給条件

  • 主要構成部品(制御基板、モーター等)の供給保証年数を確認したか?
  • 標準規格部品(JIS/IEC等)と専用部品の構成比率を把握しているか?
  • 供給終了(EOL)後の保守対応年数、部品ストック方針を確認したか?
  • 同一仕様を他事業者でも採用している実績があるか?
  • 調達仕様書内に「更新性」や「他設備との互換性」を明記したか?

会社名株式会社MR.Nexus

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