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検査・点検記録の電子化ツール 5選 | 導入チェックリスト、導入プロセス解説付
株式会社MR.Nexus
製品特性
- 安全対策
- ○
- 自動化
- ◎
- 環境への配慮
- ◎
- 保守性向上
- ◎
- 信頼性向上
- ○
- 施工性向上
- △
鉄道・バス・LRTといった公共交通の運行・保守業務では、日々の点検作業とその記録が安全・安定輸送の基盤を支えています。これまで紙帳票で運用されてきた点検記録も、近年ではモバイル端末とクラウドを活用した「電子点検ツール」へと急速に置き換わりつつあります。
点検記録の電子化によって、記録の即時共有、データ改ざん防止、報告書自動生成、トレーサビリティの確保など、業務の効率化と品質向上が期待されます。一方で、製品ごとに機能・対応分野・導入支援体制が異なるため、現場の要件に即した適切なツール選定が不可欠です。
本ページでは、点検記録電子化ツールを製造・提供する主要メーカーを取り上げます。製品検討中の技術部門・運用部門・企画部門の担当者が、現場視点から比較検討しやすいよう、簡潔かつ視覚的に整理しました。
検査・点検記録の電子化ツール比較表
メーカー名 | 地域 | 主な製品 | ターゲット市場 | 技術の強み | リンク |
---|---|---|---|---|---|
株式会社エム・ソフト Emsoft Inc. |
東京都文京区 | Check+(点検・作業支援アプリ) | 鉄道、バス、インフラ施設 | 点検手順の一体化、報告書自動生成、改ざん防止 | Emsoft |
株式会社シムトップス Simtops Inc. |
東京都品川区 | i-Reporter(帳票電子化ソリューション) | 鉄道、製造業、建設業、インフラ | Excel互換、多言語対応、外部システム連携 | Simtops |
株式会社エー・エス・ディ ASD Inc. |
神奈川県横浜市 | 点検録(クラウド点検記録管理) | 鉄道、バス、公共施設、建物管理 | 点検業務の可視化、帳票自動出力、DX支援 | ASD |
株式会社バルカー VALQUA, Ltd. |
東京都品川区 | MONiPLAT(保全デジタル化ソリューション) | 鉄道、バス、プラント、産業インフラ | TBM/CBM統合、スマホ対応、クラウド解析 | VALQUA |
株式会社SAYコンピュータ SAY Computer Co., Ltd. |
長野県伊那市 | See-Note(電子帳票アプリ) | 鉄道、バス、建設、設備点検 | 帳票設計自由度、写真添付、承認ワークフロー | SAY |
まとめ
本記事では、点検記録の電子化に対応した主要な国内メーカー5社(エム・ソフト、シムトップス、エー・エス・ディ、バルカー、SAYコンピュータ)を取り上げ、それぞれの特長を展示会のパンフレットのような形式で紹介しました。
いずれの製品も「現場の効率化」「ペーパーレス化」「データの一元管理」といった基本機能を備えていますが、具体的なアプローチや技術の強みはメーカーによって大きく異なります。たとえば、エム・ソフトの「Check+」は作業手順とチェックリストを一体化できる構造が特徴で、鉄道の作業手順管理にも適しており、iPadでの運用を前提にした設計となっています。
シムトップスの「i-Reporter」はExcelベースの帳票をそのまま電子化できる点が最大の強みで、既存の点検業務との親和性が高く、すでに多業種で実績がある汎用的なソリューションです。
エー・エス・ディの「点検録」は、クラウドベースで複数の点検現場を一元管理できる仕組みを提供し、施設管理など複数現場を持つ鉄道事業者にとって導入しやすい構成です。DXや業務改革を訴求ポイントとしており、比較的中小事業者にも対応できる柔軟性があります。
バルカーの「MONiPLAT」は、定期点検(TBM)と状態監視(CBM)を一元的に管理できる機能があり、保守データの蓄積や分析、異常兆候の検出まで視野に入れた「保全統合型プラットフォーム」として位置づけられます。プラントや鉄道施設の重厚長大なインフラ管理に強みがあります。
SAYコンピュータの「See-Note」は、帳票設計の自由度が高く、写真添付や承認ワークフローも簡単に導入可能です。鉄道に限らず、建設や保守全般を支援する業務アプリとしての汎用性があり、現場の多様なニーズに応えやすいのが魅力です。
選定のポイントとしては、以下の観点を重視することが推奨されます:
- 既存の点検業務フローにどれだけフィットするか(Excel互換性・カスタマイズ性)
- 現場作業員が使いやすいUI/UXになっているか(デバイス対応、操作のしやすさ)
- 保守・更新体制が整っており、サポートが日本語対応かつ迅速かどうか
- 将来的な拡張性(分析機能、他システムとのAPI連携)があるか
- 導入コストと運用コスト、及び自社内での展開範囲とのバランス
最後に、点検記録の電子化は単なる紙帳票の置き換えではなく、「安全・品質の可視化」「判断の迅速化」「教育・引継ぎの簡略化」といった業務改革の起点となる重要な取組です。本記事を通じて、現場に即したツール選定と、長期的な活用方針の検討が進むことを期待します。
導入前チェックリスト(点検記録電子化ツール)
本チェックリストは、点検記録電子化ツールの導入を検討する際に、公共交通事業者の現場条件・組織体制・既存システムとの整合性を踏まえ、実務的に確認すべき観点をカテゴリ別に整理したものです。部署間の意見集約やベンダー比較の際にご活用ください。
構造条件・設置環境
- 点検対象の現場(屋外・構内・地下など)において、モバイル端末の操作性や耐候性は問題ないか?
- 無線通信(Wi-Fi/LTE)が安定しており、クラウド接続が可能な環境か?
- 手袋着用状態での操作や、夜間・雨天などでも視認・入力ができる設計になっているか?
車両・設備との整合性
- 現行の点検項目や帳票様式(Excel、紙帳票)の形式をそのまま再現または移行可能か?
- 写真・動画・音声・センサーデータ等、多様な記録手段を入力できるか?
- 測定機器・計測装置(温度、騒音、振動など)との接続・データ連携が可能か?
運用・保守・教育体制
- 現場作業員が短期間で習得可能なUI/UXになっているか?操作に熟練を要しないか?
- 作業途中の保存、入力ミス・記録改ざん防止(ログ履歴、タイムスタンプ等)は可能か?
- 帳票出力、報告書作成、データ集計・検索機能など、日常運用を支援する機能は十分か?
- 導入後の問い合わせ対応、アップデート、障害時の支援体制は明確か?
コスト構造・運用負荷
- 初期導入費用(端末、ライセンス、初期設定など)の内訳は明示されているか?
- 月額・年額課金、ユーザー単位・端末単位・帳票数など、料金体系は分かりやすいか?
- 現場ごとの展開拡大において、段階的な導入が可能か?小規模からスケールできるか?
ベンダー選定・実績・信頼性
- 鉄道・バス業界など類似業界での導入実績があるか?事例紹介や実績一覧は提示されているか?
- 製品の更新・改善が継続されているか?バージョンアップ情報や改良履歴はあるか?
- セキュリティポリシー(通信暗号化、データ保管、アクセス管理)は提示されているか?
- 教育資料、操作マニュアル、研修コンテンツなど、導入・運用を支えるサポートが整備されているか?
ITツールの一般的な導入プロセス
ITツールの導入には、単なるソフトウェアのインストールにとどまらず、「業務の見直し」や「現場への浸透」まで含めた段階的なアプローチが求められます。以下に、一般的なITツール導入の流れを7つのステップで整理しました。特に公共交通事業者においては、現場の理解と関係部門との連携がカギとなります。
STEP 1:課題の明確化と目的設定
- なぜこのツールを導入したいのか?どの業務課題を解決したいのか?
- 安全性向上・業務効率化・標準化など、目的を定義する。
STEP 2:要件定義(機能・現場条件の整理)
- 使用現場(駅、車両基地、営業所)での制約条件(通信環境、操作性など)を洗い出す。
- 必要な機能(記録様式、写真添付、レポート生成など)を関係部署とすり合わせる。
STEP 3:製品比較とベンダー選定
- 複数ベンダーを比較し、導入実績、保守体制、UI/UXのわかりやすさを確認。
- 可能であれば、現場作業者や管理者を交えたデモ・ヒアリングを実施。
STEP 4:試行導入(PoC:概念実証)
- 一部の拠点や業務で試行導入を実施し、課題や効果を検証。
- 現場での操作性や報告のしやすさ、他システムとの整合性などをチェック。
STEP 5:導入判断と契約
- 試行結果をもとに、全体導入の可否を決定。必要に応じて要件を微調整。
- 契約条件(ライセンス数、導入サポート、保守内容)を明確にする。
STEP 6:本格導入・展開
- 段階的な展開(営業所単位、路線単位など)で定着を図る。
- 教育コンテンツやマニュアルを整備し、現場での混乱を最小限に抑える。
STEP 7:定着化と改善
- 定期的にフィードバックを回収し、ツールの使い方や帳票設計を改善。
- 活用状況を見える化し、他部署や他業務への横展開を検討する。
会社名株式会社MR.Nexus
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