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顔認証改札ゲートのメーカー 3選 | 導入チェックリスト、導入プロセス解説付
株式会社MR.Nexus
製品特性
- 安全対策
- ◎
- 自動化
- ◎
- 環境への配慮
- ○
- 保守性向上
- ○
- 信頼性向上
- ◎
- 施工性向上
- ○
近年、公共交通機関において「タッチレス化」や「スマート改札化」が進む中、顔認証技術を活用した改札ゲートへの注目が高まっています。ICカードやQRコードに代わり、利用者の顔をキーとした認証方式は、利便性とセキュリティを両立し、乗降時のスムーズな通行を可能にします。また、駅係員の対応負荷軽減や、券売・精算機の省スペース化といった副次的効果も期待されています。
本記事では、顔認証改札ゲートを製造・提供している国内主要メーカーについて、各社の技術的特長や導入実績をシンプルに整理し、事業者が比較検討しやすい情報を提供します。検討段階の担当者が製品の違いを直感的に把握できるよう工夫しています。製品選定や実証実験の参考資料としてご活用ください。
顔認証改札ゲートのメーカー一覧表
メーカー名 | 地域 | 主な製品 | ターゲット市場 | 技術の強み | 採用事例 | リンク |
---|---|---|---|---|---|---|
パナソニック コネクト株式会社 Panasonic Connect Co., Ltd. |
東京都中央区 | 顔認証改札ゲート、顔認証エンジン「FacePRO」 | 鉄道事業者、空港、スタジアム、オフィス施設 | ディープラーニング技術に基づく高精度認証、逆光・マスク対応 | 大阪メトロ、成田空港、京急、NTTドコモなど | パナソニックコネクト |
日本電気株式会社(NEC) NEC Corporation |
東京都港区 | 顔認証プラットフォーム「NeoFace」シリーズ | 鉄道・空港・官公庁・イベントセキュリティ | NIST世界No.1評価の認証精度、グローバル導入実績 | JR東日本(長岡駅・新潟駅)、羽田空港、G7群馬高崎会場など | NEC |
高見沢サイバネティックス株式会社 Takamizawa Cybernetics Co., Ltd. |
東京都町田市 | ウォークスルー型顔認証改札機(パナソニックと連携) | 鉄道事業者、地下鉄、バスターミナル | 自動改札機メーカーとしての豊富な実績、筐体設計・現場適合力 | 大阪メトロ全130駅で本格導入(2025年~) | 高見沢サイバネティックス |
顔認証改札ゲートの日本国内メーカー3選
公共交通機関向けに顔認証改札ゲートを提供する主要国内メーカー3社について、それぞれの「会社概要」「おすすめポイント」「どんな事業者に向いているか」を分かりやすく整理します。特に鉄道業界で導入を検討する際の参考として、実績・技術・連携性の観点で比較可能です。
パナソニック コネクト株式会社
会社概要:
パナソニックグループのB2Bソリューション事業を担う中核企業で、2022年に設立。鉄道・空港・公共インフラに対し、映像・認証・自動化技術をベースに高信頼なソリューションを展開。東京都中央区に本社を置く。
おすすめポイント:
顔認証技術「Face Recognition Gate」は、マスク着用時や逆光下でも安定した認証精度を実現。改札とのシームレスな統合が可能で、京急や大阪メトロなど実用実績も豊富。インバウンド対応や混雑緩和にも寄与する。
こんな事業者向け:
既存改札システムとの統合を想定する鉄道事業者におすすめ。特に大規模駅や空港連絡路線など、高精度と処理スピードが求められる環境に適する。
日本電気株式会社(NEC)
会社概要:
NECは1899年創業、日本を代表するICT企業。顔認証エンジン「NeoFace」は世界最高水準の精度を誇り、セキュリティ・公共交通・入退室管理分野で広く採用されている。東京都港区本社。
おすすめポイント:
JR東日本や国際会議、自治体施設など多数の公共機関で採用実績あり。NIST(米国国立標準技術研究所)による評価でも精度世界トップクラス。複数人同時認証やスピード性に優れる。
こんな事業者向け:
セキュリティ重視の鉄道事業者や国際ターミナル駅など、高精度な個人認証が必須な場面に最適。施設全体の統合認証管理にも強み。
株式会社高見沢サイバネティックス
会社概要:
1969年創業の駅務機器専門メーカー。自動券売機・改札機・入退ゲートなど、鉄道分野に特化した製品開発と実績を有する。東京都中野区に本社を構え、製造・保守体制も自社完結。
おすすめポイント:
大阪メトロ全130駅に導入された「ウォークスルー型顔認証改札機」のハードウェアを担当。パナソニックの顔認証技術と連携し、高精度かつ既存改札と同等の通過体験を実現。柔軟なカスタマイズ対応も魅力。
こんな事業者向け:
現行の改札機更新を機に、顔認証への段階的導入を検討している鉄道事業者に最適。国内製造・保守対応を重視する現場にも向く。
まとめ
近年、非接触・非対面を志向する社会的背景と、駅業務の省力化ニーズを受けて、顔認証改札ゲートは公共交通における重要な技術選択肢として台頭しています。本記事では、国内で実運用・実証実績を持つ3社のメーカーに焦点を当て、それぞれの特徴と選定のポイントを整理しました。
まず、パナソニック コネクトは、顔認証エンジン「FacePRO」を中核とし、大阪メトロ・京急・成田空港などでの実績を有しています。高精度な認証性能に加え、既存改札機との統合性にも優れており、「現在の設備資産を活かしつつタッチレス化を進めたい」事業者に適しています。特に大規模駅や外国人観光客の多いターミナル駅で効果を発揮します。
次に、NECは「NeoFace」シリーズを提供し、JR東日本(長岡駅・新潟駅)や羽田空港など、高度なセキュリティ要求のある現場で多く採用されています。NIST評価で世界トップレベルの精度を誇るため、「本人認証の確実性」を最優先とする事業者に最適です。駅だけでなく、関連施設(本社ビル、指令所)などでの統合的な顔認証運用を想定する場合にも好適です。
一方で、高見沢サイバネティックスは、自社の駅務機器製造ノウハウを活かし、パナソニックと連携してハードウェア側を構築。大阪メトロ全130駅への導入実績を誇り、柔軟な設計対応や導入支援にも強みがあります。「段階的な更新」や「駅ごとに運用形態が異なる」といった現実的な制約が多い鉄道現場において、安定した選択肢となります。
以上を踏まえると、顔認証改札ゲート導入にあたっては、①既存インフラとの親和性、②認証精度、③製造・保守体制、④将来的な展開性といった複数の軸での比較が有効です。また、「全面導入」だけでなく「実証実験からの段階導入」や「空港連絡駅のみ先行」など、段階的なシナリオ設計も可能です。
今後、ダイナミックプライシングやマイレージ連携といった“ポストICカード”施策とも組み合わせやすい顔認証技術は、鉄道事業者にとって重要な戦略投資の一つです。自社の運用環境や将来構想に合わせて、最適なパートナー企業を選定していくことが求められます。
顔認証改札ゲートの導入前チェックリスト
本チェックリストは、鉄道事業者が顔認証改札ゲートを導入・更新する際に検討すべきポイントを体系的に整理したものです。初期検討段階から実装判断に至るまでの各フェーズで、抜け漏れのない評価・比較が行えるよう設計しています。
設置・構造条件
- 現行の改札通路幅・機器配置に顔認証機器が物理的に設置可能か
- 筐体サイズ・設置台数が避難経路や安全動線と干渉しないか
- 電源・LANケーブル・制御線などのインフラ配線が対応可能か
- 屋外・地下など設置環境(照度・湿度・温度)への耐性要件
- 導入に伴う改修工事の夜間対応・工程管理の可否
対象システム・機器との整合性
- 既存の自動改札機との制御連携(開閉トリガー・異常信号など)が可能か
- ICカードリーダやQRコードリーダとの併用設計への対応可否
- 旅客情報系・顧客管理系システムとの認証連携の可能性
- 利用者アプリとの顔登録機能・連携APIの実装可否
運用・維持管理
- マスク着用・帽子・眼鏡など実用条件下での認証精度
- エラー発生時の代替手段(IC通過、係員対応)とその整備
- 日常点検・定期保守の対象範囲と現場対応要否
- 利用者クレーム対応のマニュアル・手順整備の必要性
コスト・調達条件
- 初期導入費(ゲート単価+付帯工事費)の概算把握
- クラウド型・オンプレ型など運用形態別のランニングコスト比較
- 補助金・実証実験制度の活用可能性
- 契約方式(JV、随意契約、競争入札)の適合性と見積精度
導入実績・ベンダー体制
- 他鉄道会社・空港・大規模施設等での採用実績と運用年数
- 障害対応や部品供給を含めた保守体制の地域対応可否
- 導入前後の技術支援(設計支援・試験立会等)の提供有無
- ベンダーによる社内説明・研修コンテンツの充実度
セキュリティ・ネットワーク接続
- 顔画像データの暗号化・匿名化処理および保存方針の妥当性
- 社内ネットワーク(駅LAN)への接続方式・セグメント構成
- 脆弱性対策(OSアップデート、アクセス制限)の更新計画
- 障害発生時の通信バックアップ手段と監視系統の整備
法令・制度対応
- 個人情報保護法(顔画像取り扱い)への準拠・社内規程整備
- バリアフリー法・建築基準法との適合性(ゲート幅・導線など)
- 総務省・国交省のガイドラインに基づく制度適合チェック
- 駅構内カメラ・映像利用に関する旅客への表示義務の対応
顔認証改札ゲートの導入・更新プロセス解説
顔認証改札ゲートの導入にあたっては、現場の課題認識から始まり、要件整理、実証、契約、施工、運用まで段階的に進める必要があります。以下では、各ステップで実務担当者が行うべき具体的な行動や成果物、検討ポイントを整理します。
STEP1:課題認識・ニーズ抽出
- 駅業務や利用者動線における課題(混雑、接触、処理時間)を現場ヒアリングで把握
- 将来的なスマート改札ビジョンや非接触化ニーズの洗い出し
- 他駅・他社での導入事例や利用者評価の収集
- 課題背景と導入目的を整理した「導入構想メモ」の作成
STEP2:技術調査・ソリューション探索
- NEC、パナソニック、高見沢など実績のあるメーカー情報を比較整理
- 顔認証エンジンの性能要件(精度・応答速度)と端末構成を調査
- 調達候補のベンダーにRFI(情報提供依頼)を送付
- 展示会・技術説明会・現場見学会などへの参加記録
STEP3:要件定義・仕様検討
- 設置位置、通過対象者(一般客/職員)、通過時間などの運用条件を定義
- 現場インフラ(電源・ネットワーク・改札制御)との整合要件整理
- 法令(個人情報保護法・建築基準法等)遵守要件の明文化
- 「機能要求仕様書(FRS)」のドラフト作成と関係部門レビュー
STEP4:開発・設計・調達
- 要求仕様に基づいた提案依頼書(RFP)の作成と配布
- 受領した提案内容(製品構成・納期・見積・体制)の比較表作成
- 社内調達審査・見積精査・契約方式(特命/競争)選定の社内調整
- 社内の設計・建築・IT・改札担当との詳細設計レビュー会議
STEP5:試験・検証・現場適合性評価
- 駅現場での仮設置による認証試験(通過時間・エラー率など)を実施
- マスク・帽子・逆光条件などの多様な通過条件で実運用に近い試験
- ユーザー(駅係員・利用者)からのヒアリング調査
- 評価レポートを取りまとめ、要修正点や導入可否判断材料を整理
STEP6:導入決定・契約・スケジュール策定
- 社内稟議書の作成(コスト・スケジュール・投資対効果の明示)
- ベンダーとの契約締結(設置・保守・保証条件の明確化)
- 設置対象駅・時期・施工手順などを工程表(ガントチャート等)に落とし込む
- 広報対応や乗客周知方法の設計(アプリ・ポスター・現場案内など)
STEP7:施工・設置・切替作業
- 夜間や終電後の時間帯を活用した安全な施工工程の管理
- 改札システム・認証システム・駅LANの接続確認と設定
- 設置後の試験運用(1週間程度)での不具合抽出と修正
- 係員向け取扱説明、現場マニュアルの配布・習熟確認
STEP8:運用開始・フォローアップ・継続改善
- 正式運用開始に伴う効果測定(通過率、エラー率、トラブル対応件数)
- 運用初期のトラブル・問い合わせログの蓄積とFAQ整備
- 定期的なソフトウェア更新・バージョン管理体制の構築
- 利用実績をもとに、他駅展開や新機能追加(チケットレス連携など)の検討
会社名株式会社MR.Nexus
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