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VOR(超短波全方向式無線標識)とは|航空用語を初心者にも分かりやすく解説

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航空機が広大な空を安全に飛行するためには、正確な位置情報と進路を把握することが不可欠です。その中で、長年にわたり航空航法の基盤を支えてきた重要な地上施設の一つが「VOR(超短波全方向式無線標識)」です。この記事では、航空業界に携わる方で、VORの基本的な仕組みや役割について改めて理解を深めたい方、あるいは航空に興味をお持ちの初心者の方に向けて、VORの全てを分かりやすく解説していきます。

結論から申し上げますと、VORは航空機が地上局からの電波を受信することで、現在位置からその地上局がどの方向にあるかを正確に知るためのシステムです。これにより、パイロットはあらかじめ定められた航路を逸れることなく、目的地まで安全に飛行することが可能となります。この記事を読み終える頃には、VORの重要性とその仕組みについて、深く理解できるようになっていることでしょう。

VOR(超短波全方向式無線標識)の概要と基本的な仕組み

VORは、Very High Frequency Omnidirectional Rangeの略で、日本語では「超短波全方向式無線標識」と訳されます。その名の通り、超短波(VHF)帯の電波を利用し、全方向に電波を放射することで、航空機がその地上局に対してどの「方位」にいるかを測定するための航法援助施設です。

VORが航空機をどう導くのか

VORは、航空機が現在地からVOR局がどの方向にあるのか(方位)をパイロットに知らせることで、航路の維持や空港への進入を支援します。具体的には、VOR局から放射される電波には、基準となる「基準位相信号」と、方位によって位相が変化する「可変位相信号」の2種類の信号が含まれています。航空機がこれらの電波を受信すると、両信号の位相差を計算することで、航空機がVOR局から見て何度の方位(ラジアル)上にいるのかを正確に特定できるのです。

この情報は、航空機のコックピットにあるVOR受信機に表示され、パイロットはそれを基に、例えば「このVOR局から270度の方向に進む」といった具体的な航法操作を行うことができます。これにより、航空機は定められた航路を正確に飛行し、目的地に安全に到達することが可能となるのです。

VORの周波数帯と特性

VORは、VHF(Very High Frequency:超短波)帯の108.0 MHzから117.95 MHzの周波数を使用しています。このVHF帯の電波は、比較的直進性が高く、地形の影響を受けやすいという特性があります。そのため、山間部などでは電波が遮られ、使用できないエリア(シャドーエリア)が発生する場合があります。

しかし、その一方で、電離層の影響を受けにくいため、安定した信号を提供できるという利点もあります。VHF帯を使用することで、長距離の信号伝搬は難しいものの、見通し範囲内であれば非常に正確な方位情報を提供できるため、短・中距離の航法には非常に適していると言えます。この特性により、VORは長年にわたり、世界中の航空路や空港アプローチの基盤として利用されてきました。

VOR(超短波全方向式無線標識)の原理:2種類の電波信号が生み出す方位情報

VORが航空機に方位情報を提供できるのは、その独創的な電波信号の利用方法にあります。ここでは、VORの核心となる「基準位相信号」と「可変位相信号」の役割について詳しく解説します。

基準位相信号:方位の基準点

基準位相信号は、VOR局から常に全方位に向けて均一に放射される電波信号です。この信号は、例えるならば「時刻の基準」のようなもので、方位を測定するための比較対象となります。VOR局は、この基準位相信号を特定のタイミング(例えば、北の方位を基準として)で放射します。航空機が受信する全ての電波の位相は、この基準位相信号に対して計測されるため、方位測定の基礎となる非常に重要な要素です。

この信号は通常、30HzのFM変調(周波数変調)された信号として送信されます。この安定した基準信号があるからこそ、後述の可変位相信号との位相差を正確に測定することが可能となるのです。

可変位相信号:方位によって変化する信号

可変位相信号は、その名の通り、方位によって位相が変化する電波信号です。VOR局は、この可変位相信号を回転する指向性アンテナから放射します。このアンテナは1秒間に30回転し、例えば北の方位に向いている時に特定の位相を持つように設計されています。

航空機がVOR局の周囲を飛行するにつれて、航空機と回転するアンテナの相対的な位置関係が変化するため、受信する可変位相信号の位相も刻々と変化します。この可変位相信号も通常、30HzのAM変調(振幅変調)された信号として送信されます。

航空機のVOR受信機は、この回転する可変位相信号と、常に一定の基準位相信号の位相差を測定します。この位相差が、航空機がVOR局から見てどの方向(ラジアル)にいるのかを示す情報となるのです。例えば、位相差がゼロであれば北、90度であれば東、180度であれば南、270度であれば西といった具合に、正確な方位を特定できます。

測定された方位情報の表示方法

航空機のコックピットでは、VOR受信機がこの位相差を計算し、HSI(Horizontal Situation Indicator)やOBI(Omni-Bearing Indicator)といった計器に方位情報として表示します。パイロットは、この計器の針や数字を見て、自機がVOR局からどのラジアル上にいるのか、あるいはどのラジアルに向かって飛行しているのかを瞬時に把握することができます。これにより、パイロットは定められた航空路を正確に維持したり、特定の方向から空港に進入したりといった複雑な航法操作を安全に行うことができるのです。

VOR(超短波全方向式無線標識)の画像

VOR(超短波全方向式無線標識)の種類と発展:用途に応じた多様なシステム

VORは、その設置場所や使用目的によっていくつかの種類に分けられます。また、関連するシステムと組み合わせることで、より高度な航法機能を提供することも可能です。

高高度VOR(High Altitude VOR)

高高度VORは、その名の通り高高度を飛行する航空機のために設計されたVORです。通常、地上約18,000フィート(約5,500メートル)以上の高度で使用され、より遠距離からの信号受信を可能にするために、出力が強化されています。一般的なVORよりもカバー範囲が広いため、長距離の航空路の指定や、大陸横断などの長距離飛行における航法基準として利用されます。

このタイプのVORは、広大なエリアをカバーする必要があるため、通常、人口密度の低い地域や、航空路が集中する地点に設置されます。高高度VORの整備は、国際的な航空路網を構築する上で不可欠な要素となっています。

低高度VOR(Low Altitude VOR)

低高度VORは、主に低高度を飛行する航空機や、空港周辺のターミナルエリアにおける航法を支援するために使用されます。地上約18,000フィート(約5,500メートル)以下の高度での使用を想定しており、高高度VORよりもカバー範囲は狭いものの、その精度は非常に高いです。空港への進入経路や、出発後の上昇経路など、より精密な航法が求められる場面で重要な役割を果たします。

このタイプのVORは、空港の近くや、混雑する空域の要所に多数設置されており、航空機が安全に離着陸し、他の航空機との間隔を維持するために不可欠な情報を提供しています。

DME(距離測定装置)との連携

VOR単体では航空機からVOR局への「方位」しか分かりませんが、「DME(Distance Measuring Equipment:距離測定装置)」と組み合わせることで、航空機はVOR局からの「距離」も測定できるようになります。DMEは、航空機が発した電波に対する地上局からの応答時間差を測定することで、航空機から地上局までの斜め距離(Slant Range)を計算します。

VORとDMEを組み合わせることで、航空機はVOR局を基準とした二次元的な位置(方位と距離)を正確に把握することが可能になります。これにより、パイロットは地図上に自機の位置をプロットしたり、特定のポイントを通過する時間を計算したりするなど、より高度な航法を行うことができるようになります。多くのVOR局は、DMEを併設しており、「VOR/DME」として一体運用されています。

TACAN(軍用航法システム)との関連

TACAN(Tactical Air Navigation:戦術航空航法)は、主に軍用機で使用される航法システムで、VORと同様に方位情報とDMEと同様に距離情報を提供します。TACANは、VORよりも高い周波数(UHF帯)を使用し、より精密な方位情報と距離情報を提供できるのが特徴です。

民間航空路ではVORが広く利用されていますが、一部の空港では、軍用機と民間機の両方が利用できるよう、「VORTAC」と呼ばれる施設が設置されています。これは、VORとTACANを併設したもので、民間機はVORとDMEを利用し、軍用機はTACANを利用して航法を行います。このように、異なるシステム間での互換性を持たせることで、空域の効率的な利用と安全確保が図られています。

VOR(超短波全方向式無線標識)のメリットとデメリット:なぜ今も使われるのか

VORは、その長い歴史の中で多くの航空機に利用されてきましたが、現代の航法システムと比較して、どのような利点と課題があるのでしょうか。ここでは、VORのメリットとデメリットについて深く掘り下げていきます。

VORのメリット:信頼性とシンプルな運用

VORの最大のメリットは、その高い「信頼性」と「シンプルさ」にあります。

確立された信頼性

VORは、1950年代から運用が始まり、長年の実績と経験に裏打ちされた非常に信頼性の高いシステムです。シンプルな物理原理に基づいており、故障率が低く、悪天候下でも比較的安定した信号を提供できます。GPSのような衛星航法システムが普及する以前は、VORが航空航法の主軸であり、その堅牢なシステムは、世界中の航空機を安全に導いてきました。

また、地上局からの電波を受信する受動的なシステムであるため、航空機側の機器も比較的簡素で済みます。これにより、初期の航空機から最新の航空機まで、幅広い機種に搭載され、互換性が高く、航空機側のコストも抑えられるという利点があります。

シンプルで直感的な表示

コックピットのVOR計器は、非常にシンプルで直感的に理解しやすい設計です。針の動きを見るだけで、自機が目標とするラジアルに対してどの位置にいるのか、どの方向に進めば目標に到達できるのかを瞬時に判断できます。これは、特に複雑な状況下でのパイロットの認知負荷を軽減し、安全な運航に貢献します。デジタル表示のシステムが増える中でも、アナログ的な表示は緊急時などにも非常に有効な情報源となります。

VORのデメリット:地形や電波の限界

一方で、VORにはいくつかのデメリットも存在します。

見通し線(Line of Sight)の制限

VORが使用するVHF帯の電波は、直進性が高いため、山などの地形によって電波が遮られてしまうことがあります。これを「見通し線(Line of Sight)」の制限と呼び、山間部や渓谷などでは、VORの信号が受信できない「シャドーエリア」が発生することがあります。このため、航空路を設定する際には、VOR局の配置や高度を考慮する必要があり、特に低高度を飛行する場合には、頻繁にVOR局を切り替える必要が生じることもあります。

また、地球の丸みによっても電波の到達距離が制限されます。これにより、広大な海洋上や、広範囲にわたる砂漠地帯などでは、地上に多数のVOR局を設置することが現実的ではなく、他の航法システムに頼る必要があります。

精度と多重経路問題

VORの精度は、GPSなどの衛星航法システムに比べると劣ります。特に、VOR局から遠く離れるほど、方位測定の誤差が大きくなる傾向があります。また、建物や大きな構造物などに電波が反射することで、複数の経路を通って電波が航空機に到達し、誤った方位情報を示す「多重経路問題(Multipath Error)」が発生することもあります。これは、特に空港周辺や都市部など、反射物が多い場所で顕著になる可能性があります。

これらのデメリットは、GPSなどのより高精度なシステムが普及する現代において、VORの役割が変化している一因となっています。

現代航空航法におけるVORの役割と進化

GPSやGNSSといった衛星航法システムが主流となる現代において、VORはどのような役割を担い、どのように進化しているのでしょうか。

GPS/GNSSとの共存と補完関係

GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)は、衛星からの電波を受信することで、航空機が地球上のどこにいても高精度な位置情報をリアルタイムで取得できる画期的なシステムです。これにより、VORのように地上施設に依存せず、より柔軟で効率的な航路設定が可能になりました。

しかし、GPS/GNSSも完璧ではありません。衛星からの信号は、強力な電波妨害(ジャミング)や、意図的ななりすまし(スプーフィング)によって利用できなくなるリスクがあります。また、太陽活動や大気の状態によって信号の精度が一時的に低下することもあります。このような事態に備え、VORは依然として重要な「バックアップシステム」として位置づけられています。

GPS/GNSSが利用できない、あるいは信頼性が低下した場合でも、VORは独立した航法手段として機能し、航空機を安全に誘導する役割を担います。この「冗長性」を確保することが、航空安全において非常に重要であるため、主要な航空路や空港には、依然としてVOR局が維持されています。

PBN(Performance Based Navigation)への貢献

近年、航空業界では「PBN(Performance Based Navigation:性能準拠航法)」の導入が進んでいます。PBNは、航空機が航行する際に、特定の性能基準を満たすことを要求する航法概念で、従来の地上航法施設に依存する方式から、より柔軟で効率的な航路設定を可能にします。

PBNの核となるのは、RNAV(Area Navigation:広域航法)やRNP(Required Navigation Performance:要求航法性能)といった航法能力です。これらの航法能力は、主にGPS/GNSSによって実現されますが、VORもその一部として利用されることがあります。例えば、特定のRNAVアプローチでは、VOR局を基準点として利用することで、より正確な進入経路を確立することが可能です。

PBNは、燃料効率の向上、騒音軽減、混雑緩和など、多くのメリットをもたらしますが、その基盤を支える技術の一つとして、VORも依然としてその役割を担っています。つまり、VORは単なる古いシステムではなく、現代の先進的な航法システムと連携しながら、航空安全の向上に貢献しているのです。

将来の航法システムとVORの役割

将来的に、地上航法施設の数は段階的に削減されていく可能性はありますが、VORが完全に姿を消すことはないでしょう。特に、GPS/GNSSの代替手段として、あるいは補完システムとして、その存在価値は維持され続けると予想されます。

例えば、世界各国で議論されている「NextGen(次世代航空交通システム)」や「SESAR(欧州単一空域研究計画)」といった航空交通管理システムの将来構想においても、VORは「レガシーシステム」として認識されつつも、その信頼性と独立性から、一定の役割を担い続けることが明記されています。これは、いかにGPS/GNSSが強力なシステムであっても、単一のシステムに依存することの危険性を認識しているからです。

したがって、VORは「過去の遺物」ではなく、航空安全の基盤を支える「現役の航法援助施設」として、これからも空の安全を守り続ける重要な役割を担っていくことになります。

VORの運航・保守と航空管制との連携

VORが航空機を安全に誘導するためには、地上局が常に正確な電波を放射し、適切に運用・保守されていることが不可欠です。また、航空管制官との連携も、VORが効果的に機能するために重要です。

VOR局の設置と保守体制

VOR局は、その設置場所の選定から建設、そして長期にわたる運用・保守まで、厳格な基準と体制のもとで行われています。設置場所は、周囲の地形や電波環境を考慮し、最も効果的に電波を放射できる地点が選ばれます。

運用開始後も、定期的な点検や校正作業が欠かせません。VORの電波が正確であるかを検証するために、航空機を実際に飛行させて電波を受信し、その精度を確認する「フライトチェック」と呼ばれる作業が定期的に実施されます。これにより、万が一の異常も早期に発見し、修正することで、常に高い精度と信頼性を維持しています。

日本では、国土交通省航空局がこれらの航法援助施設の設置と運用・保守を担っています。専門の技術者チームが24時間体制で監視し、問題が発生した際には迅速に対応することで、航空機の安全な運航を支えています。

航空管制におけるVORの活用

航空管制官は、航空機に指示を出す際に、VORからの情報を活用しています。例えば、「〇〇VORの270度ラジアルに乗って飛行してください」といった指示は、パイロットに特定のVOR局からの特定の方位上を飛行することを求めるものです。

また、航空路の多くは、VOR局を基準点として設定されています。管制官は、航空機がこれらのVOR局を通過するタイミングや、VOR局からの距離(DME併設の場合)を把握することで、航空機同士の間隔を確保し、衝突を防止します。特に、混雑する空域では、VORからの正確な情報が、航空機の安全な誘導に不可欠となります。

VORの情報を活用することで、管制官は航空機の位置を把握し、効率的な交通流を維持しながら、緊急時には適切な指示を出すことが可能となります。このように、VORは航空管制の現場においても、航空安全を支える重要なツールとして機能しています。

日本の主なVOR設置事例と地域貢献

日本においても、VORは全国各地に設置され、航空交通の安全と効率化に大きく貢献しています。ここでは、具体的な設置事例とその役割、そして地域との関わりについてご紹介します。

全国に点在するVOR局のネットワーク

日本列島は山岳地帯が多く、地形が複雑であるため、見通し線(Line of Sight)の制限を考慮しながら、戦略的にVOR局が配置されています。主要な空港周辺はもちろんのこと、航空路の要所や、海上ルートの基準点としても多数のVOR局が設置されており、全国を網羅する広範なネットワークを形成しています。

例えば、東京国際空港(羽田空港)や成田国際空港といった大規模空港の周辺には、複数のVOR/DME局が設置されており、複雑な離着陸経路やターミナルエリアの管制を支援しています。また、地方空港へのアプローチにも、それぞれの空港に付随するVOR局が重要な役割を担っています。

これらのVOR局は、国土交通省によって厳重に管理されており、定期的なメンテナンスとフライトチェックが実施されています。これにより、日本の空域を飛行する全ての航空機が、常に信頼性の高い航法援助を受けられるようになっています。

各VOR局の役割と地域特性

日本の各VOR局は、それぞれ特定の役割を担っています。

例:東京国際空港(羽田空港)周辺のVOR/DME

羽田空港周辺には、「東京VOR/DME(TOKYO VOR/DME)」など複数のVOR/DME局が設置されています。これらの局は、日本の主要な航空路の起点・終点として機能するとともに、羽田空港への複雑な進入経路や出発経路において、航空機を正確に誘導する役割を担っています。東京湾上や千葉県、神奈川県など、広範囲にわたる空域をカバーし、日本の空の玄関口としての機能維持に不可欠な存在です。

特に、悪天候時や視界不良時においても、VOR/DMEからの情報が、パイロットが安全に空港に進入し、着陸するための重要な手助けとなります。

例:地方空港のVOR/DME

地方の空港にも、それぞれの空港に隣接する形でVOR/DME局が設置されています。これらの局は、地域間の航空路を結ぶ役割を果たすとともに、地方空港へのアプローチや出発を支援します。例えば、山間部に位置する空港では、地形による電波の遮蔽を考慮し、最適な場所にVOR局が設置されています。これにより、地域の航空アクセスを確保し、経済活動や観光振興にも貢献しています。

これらの事例からもわかるように、日本のVORネットワークは、航空安全の確保だけでなく、地域間の結びつきを強化し、経済発展を支える基盤としても機能しているのです。

まとめ

本記事では、VOR(超短波全方向式無線標識)について、その基本的な仕組みから種類、メリット・デメリット、現代の航空航法における役割、そして日本の設置事例まで、幅広く解説してまいりました。

結論として、VORは、航空機が地上局からの電波を受信することで、自機から地上局の方位を正確に把握するための、非常に信頼性の高い航法援助施設です。1950年代から運用が開始され、長年にわたり航空航法の基盤を支えてきました。GPS/GNSSといった衛星航法システムが主流となった現代においても、VORはその高い信頼性と独立性から、重要なバックアップシステムとして、あるいはPBNの一部として、航空安全に不可欠な役割を担い続けています。

地形による電波の制限や、GPSに比べた精度の課題はありますが、シンプルで堅牢なシステムであるという大きなメリットがあります。世界中の航空路や空港アプローチの要として、現在も数多くのVOR局が稼働し、航空機を安全に目的地へと導いています。

航空業界に携わる方々にとっては、VORの基本的な理解は業務遂行上不可欠な知識であり、航空に興味をお持ちの方にとっても、空の安全を支える技術の一端を知る上で非常に有益な情報であったことと思います。これからも、VORは航空安全の「縁の下の力持ち」として、その存在感を放ち続けることでしょう。

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