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テストケース設計入門:失敗しない試験設計の考え方

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はじめに:なぜ「試験設計」が重要なのか

公共交通業界における新技術の導入や設備更新では、試験の設計・実施が欠かせません。信号保安装置、電力制御機器、車両の新機能など、いかなる技術導入であっても、「現場で問題なく動作するか」「他のシステムと整合が取れているか」を確認するために、試験(テスト)は必須のプロセスです。

しかし現実には、「どのような試験を行えば良いか」「何を持って“合格”とするのか」という判断が、現場やベンダーに丸投げされるケースが少なくありません。結果として、試験項目が不十分だったり、目的を誤った試験を実施してしまい、後工程での不具合や手戻りを招いてしまうことが多々あります。

特に問題なのは、試験の目的や評価基準が曖昧なまま、関係者間で共有されずに試験が進行してしまう構造です。たとえば、設計部門は「仕様通りに作ればOK」と考えており、現場は「実際の運用環境での振る舞いを確認したい」と思っていても、その差異が議論される機会がないまま試験が始まってしまうのです。

このような「暗黙の了解」や「前例踏襲」に基づく試験プロセスでは、以下のようなリスクが発生します:

  • 想定外の環境条件下でトラブルが発生し、緊急対応を迫られる
  • 不具合が発生しても、試験記録が不十分なため原因追跡が困難
  • 試験範囲が狭すぎて、後から仕様漏れ・設計漏れが判明する

このような事態を防ぐためには、「テストケース設計」が重要なカギを握ります。単に項目を列挙するのではなく、どのような入力条件・実行手順・期待される結果を定義し、要件に対して過不足のない形で検証を行えるように設計する。この基本ができていないと、どれだけ手間をかけて試験を実施しても“やっただけ”で終わってしまいます。

公共交通業界においては、技術と運用の責任部門が分かれており、さらにベンダーや設計事務所も含めた多層的な体制でプロジェクトが進行します。その中でテストケース設計は、「部門間の認識の橋渡し役」として機能する重要なドキュメントでもあります。

本記事では、試験設計における基本的な考え方から、実務で起こりがちな失敗パターン、部門間連携の方法、教育の工夫まで、段階的に整理していきます。入社1〜5年目の技術者でも理解しやすく、かつベテランが読んでも再確認や改善のヒントが得られるよう構成しています。

「テスト設計は誰かがやってくれるもの」ではなく、「プロジェクト成功の根幹を担うもの」という意識を持ち、自ら設計に関与していくきっかけとなれば幸いです。

 

テストケースの基本構造と設計手順

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