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アクティブエアサスペンションとは|自動車用語を初心者にも分かりやすく解説
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- 用語解説
自動車の「乗り心地」と「走行安定性」は、長年にわたり自動車メーカーが追求し続けてきた重要な要素です。その両立を高度なレベルで実現する技術の一つに、アクティブエアサスペンションがあります。この先進的なシステムは、路面状況や走行状態に応じてサスペンションの特性をリアルタイムで最適化することで、これまでの自動車では考えられなかったような快適性と操縦安定性を提供します。
本記事では、このアクティブエアサスペンションについて、「アクティブエアサスペンション 仕組み」「アクティブエアサスペンション デメリット」「エアサス 故障」「エアサス 車高調 違い」といったキーワードで検索されている皆様に向けて、その基本的な仕組みから、パッシブサスペンションとの違い、メリット・デメリット、搭載車種、そして将来性まで、自動車技術の専門家が分かりやすく詳細に解説いたします。業界関係者の方から、自動車に興味をお持ちの一般の方まで、幅広く理解を深めていただける内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
アクティブエアサスペンションとは?基本概念とパッシブサスペンションとの違い
アクティブエアサスペンションとは、空気の力を利用して車高や減衰力を自動で調整する、先進的な自動車のサスペンションシステムのことです。従来のサスペンションとは異なり、車両の状態や路面状況をセンサーで検知し、コンピューターがリアルタイムで制御を行うことで、常に最適な乗り心地と走行安定性を実現します。
パッシブサスペンション(従来型サスペンション)との根本的な違い
まず、アクティブエアサスペンションを理解するために、従来のパッシブサスペンションとの違いを明確にしておきましょう。パッシブサスペンションは、コイルスプリングとショックアブソーバー(ダンパー)を組み合わせた最も一般的なサスペンションシステムです。一度設定されたスプリングレート(硬さ)と減衰力(振動を抑える力)は、基本的に走行中に変化することはありません。
パッシブサスペンションの仕組み
パッシブサスペンションでは、路面からの衝撃をコイルスプリングが受け止め、その伸縮をショックアブソーバーが抑制することで、車両の揺れを収束させます。構造がシンプルで信頼性が高く、コストも比較的低いというメリットがありますが、その特性上、乗り心地と操縦安定性のどちらかを重視すると、もう一方が犠牲になりやすいというトレードオフの関係にあります。例えば、スポーツ走行を重視した硬いサスペンションはコーナリング性能を高めますが、乗り心地は悪化します。
アクティブエアサスペンションの「アクティブ」とは?
一方、アクティブエアサスペンションの「アクティブ」とは、能動的に(自ら)制御を行うことを意味します。パッシブサスペンションが路面からの入力に対して受動的に反応するのに対し、アクティブエアサスペンションはセンサーからの情報に基づいて、自らサスペンションの特性を変化させることで、常に最適な状態を保とうとします。これが、従来のサスペンションでは実現できなかった高次元の乗り心地と走行安定性を両立できる最大の理由です。
能動的な制御の具体例
- 車高の自動調整: 高速走行時には車高を下げて空気抵抗を減らし燃費を向上させたり、悪路走行時には車高を上げて最低地上高を確保したりします。乗降時には車高を下げてアクセスを容易にすることもあります。
- 減衰力の連続可変: 路面からの入力や車両の挙動(加速、減速、旋回など)に応じて、ダンパーの硬さをリアルタイムで調整し、路面の凹凸を吸収したり、車体の傾きを抑制したりします。
- ロール・ピッチ制御: コーナリング時の車体の傾き(ロール)や、加速・減速時の前後の傾き(ピッチ)を積極的に抑制し、フラットな姿勢を保ちます。これにより、乗員の不快感を軽減し、操縦安定性を向上させます。
アクティブエアサスペンションの主要構成要素と仕組み
アクティブエアサスペンションは、複数の精密な部品が連携して機能することで、その高度な制御を実現しています。ここでは、主要な構成要素とその基本的な仕組みについて解説します。「アクティブエアサスペンション 仕組み」で検索された方にとって、特に重要な項目です。
エアスプリング(エアチャンバー)
従来のコイルスプリングの代わりに、空気を封入したゴム製の袋(エアチャンバー)を使用します。このエアチャンバー内の空気量を増減させることで、スプリングの硬さ(バネ定数)を変化させ、車高を調整します。
エアスプリングの働き
エアスプリングは、内部の空気圧によってバネの役割を果たします。空気圧が高いほど硬くなり、空気圧が低いほど柔らかくなります。コンピューターからの指示により、コンプレッサーから空気が供給されたり、エアバルブから空気が排出されたりすることで、この空気圧がリアルタイムで変化し、車高や乗り心地が調整されます。
エアコンプレッサー&エアタンク
エアスプリングに空気を供給するための装置がエアコンプレッサーです。圧縮された空気は、必要に応じてエアタンク(リザーバータンク)に蓄えられます。これにより、瞬時の車高調整や減衰力調整が可能になります。
システム全体での役割
エアコンプレッサーが空気を圧縮し、エアタンクに貯めることで、システムが必要とする時に迅速に空気を供給できるようになります。これは、例えば急な車線変更時や段差を乗り越える際など、瞬時にサスペンションの特性を変更する必要がある場面で非常に重要です。
電子制御ダンパー(可変減衰力ショックアブソーバー)
従来のショックアブソーバーとは異なり、内部に設けられたバルブを電子的に制御することで、減衰力(振動を抑える力)を連続的または段階的に変化させることができるダンパーです。多くの場合、磁性流体(MR流体)や可変バルブ機構などが用いられます。
減衰力制御の原理
例えば、MR流体を用いたダンパーでは、電流を流すことで流体の粘度が変化し、それに伴って減衰力が変化します。これにより、路面からの入力や走行状況に応じて、ダンパーの硬さを「硬く」したり「柔らかく」したりと、きめ細やかな調整が可能となり、乗り心地と走行安定性の両立に大きく貢献します。
各種センサーとECU(電子制御ユニット)
アクティブエアサスペンションシステムは、非常に多くのセンサーからの情報を元に制御が行われます。車高センサー、Gセンサー(加速度センサー)、ヨーレートセンサー、舵角センサー、車速センサーなど、様々なセンサーが車両の状態や路面状況を常に監視しています。これらのセンサーから得られた情報は、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)に送られます。
ECUの役割と制御ロジック
ECUは、受け取ったセンサー情報を元に、瞬時に最適な車高や減衰力を計算し、エアスプリングの空気圧や電子制御ダンパーのバルブ開度などを指令します。ECU内部には高度な制御ロジックが組み込まれており、例えば、高速道路では車高を下げて安定性を高め、悪路では車高を上げて走破性を確保するといった判断を自動で行います。また、コーナリング時には外側のサスペンションを硬くしてロールを抑え、加速時にはリアの沈み込み(スクワット)を、減速時にはフロントの沈み込み(ノーズダイブ)を抑制するなど、車両の姿勢を常にフラットに保つための制御も行われます。
アクティブエアサスペンションのメリットとデメリット
どんなに優れた技術にも、メリットとデメリットが存在します。アクティブエアサスペンションも例外ではありません。ここでは、その導入による主なメリットと、考慮すべきデメリットについて詳しく解説します。「アクティブエアサスペンション デメリット」や「エアサス 故障」といったキーワードで検索されている方は、特にご注目ください。
アクティブエアサスペンションのメリット
アクティブエアサスペンションがもたらす恩恵は多岐にわたります。その主なメリットは以下の通りです。
1. 圧倒的な乗り心地の向上
路面状況や速度に応じてサスペンションの特性をリアルタイムで調整できるため、路面の凹凸を吸収し、不快な振動を大幅に軽減します。これにより、長距離移動でも疲れにくい、非常に快適な乗り心地を提供します。特に、高級車や大型SUVでその効果を実感しやすいでしょう。
2. 高い走行安定性と操縦性の確保
コーナリング時のロール(車体の傾き)や、加速・減速時のピッチ(前後の傾き)を抑制し、常に車両姿勢をフラットに保つことで、安定した走行性能と正確な操縦性を実現します。これにより、高速走行時やワインディングロードでも安心して運転できます。また、車高を自動で調整できることで、高速走行時の空気抵抗を低減し、燃費向上にも寄与します。
3. 車高の調整機能による利便性の向上
手動または自動で車高を調整できるため、様々な状況に対応できます。例えば、荷物の積み下ろし時や、高齢者や子供の乗降時に車高を下げてアクセスを容易にしたり、悪路走行時には車高を上げて最低地上高を確保し、障害物との接触を防いだりすることができます。また、駐車時には車高を下げて立体駐車場の制限に合わせることも可能です。
4. 積載量に応じた車高維持
乗員数や積載量が増加しても、自動的に車高を調整して常に一定の車高を保ちます。これにより、車両の姿勢が常に最適に保たれ、ライトの光軸が狂うこともなく、乗り心地や操縦安定性が損なわれることもありません。
アクティブエアサスペンションのデメリット
多くのメリットがある一方で、アクティブエアサスペンションにはいくつかのデメリットも存在します。
1. 高コスト
複雑な電子制御システムと多数の精密部品を使用するため、車両価格が高くなる傾向があります。これは、開発コストや製造コストが高いことに起因します。そのため、主に高級車や一部の高性能車に搭載されています。
2. 複雑な構造によるメンテナンス性
多くの部品から構成されているため、従来のサスペンションに比べて構造が複雑です。これにより、点検や修理に専門的な知識や技術が必要となり、メンテナンス費用も高くなる傾向があります。「エアサス 故障」の際に、部品代が高額になるケースもあります。
3. 故障のリスクと修理費用
エアスプリングからのエア漏れ、エアコンプレッサーの故障、各種センサーの不具合、ECUのトラブルなど、故障のリスクがパッシブサスペンションに比べて高くなります。特に、エア漏れは経年劣化によって発生しやすく、修理には高額な費用がかかることがあります。また、電装系のトラブルも発生し得るため、定期的な点検が重要です。
4. 重量増
エアコンプレッサー、エアタンク、各種バルブ、複雑な配管などが追加されるため、車両全体の重量が増加する傾向があります。これは、燃費性能や運動性能に少なからず影響を与える可能性があります。
5. 過度な快適性への依存
非常に快適な乗り心地を提供する一方で、路面状況の変化をドライバーに伝えにくいという側面もあります。これにより、路面からのインフォメーションが希薄になり、運転の楽しさや車両との一体感を求めるドライバーにとっては、物足りなさを感じる場合があります。
アクティブエアサスペンションと車高調の違い
自動車の足回りをカスタマイズする際に、「エアサス」や「車高調」といった言葉を耳にすることがあるでしょう。どちらも車高を調整できるシステムですが、その目的、仕組み、特性には大きな違いがあります。「エアサス 車高調 違い」で検索された方のために、両者の違いを明確に解説します。
車高調(車高調整式サスペンション)とは
車高調とは、車高調整式サスペンションの略称で、主にスプリングシートやケース長を調整することで、機械的に車高を変更できるサスペンションシステムのことです。多くの場合、スプリングとショックアブソーバーが一体となったコイルスプリング式ダンパーユニットで構成されます。
車高調の仕組みと特徴
- 調整方法: スプリングシートの位置を変えることでプリロードを調整したり、ケースの長さを変えることで車高を調整したりします。調整には工具が必要で、走行中にリアルタイムで車高を変えることはできません。
- 目的: ドレスアップ目的で車高を下げたり、走行性能を追求するために最適な車高やスプリングレート、減衰力を設定したりすることが主な目的です。
- 種類: 全長調整式、ネジ式などがあり、減衰力調整機能が付いているものも多く存在します。
- メリット: 比較的安価に導入でき、好みに合わせて車高や乗り味を調整できます。スポーツ走行を重視するユーザーに人気があります。
- デメリット: 走行中の車高調整は不可能で、多くの場合、調整には専門知識と工具が必要です。乗り心地は純正サスペンションよりも硬くなる傾向があります。
アクティブエアサスペンションと車高調の決定的な違い
両者の最大の違いは、「制御の能動性」と「調整のリアルタイム性」にあります。
- アクティブエアサスペンション:
- 能動的制御: センサーとECUが常に車両の状態を監視し、自動的かつリアルタイムで車高や減衰力を最適に調整します。
- 目的: 乗り心地、走行安定性、利便性(積載時の車高維持、乗降性向上など)を高次元で両立させることを目的とします。
- 調整: 走行中でも、路面状況やドライバーの選択(走行モード)に応じて、瞬時に車高や減衰力が変化します。
- 車高調:
- 受動的調整: 事前に手動で設定された車高と減衰力で走行します。走行中に自動で変化することはありません。
- 目的: 主にドレスアップやスポーツ走行性能の向上を目的とします。
- 調整: 停車中に工具を使って手動で調整します。一度設定すると、その設定で常に走行します。
機能と価格帯の比較
アクティブエアサスペンションは、その複雑なシステムゆえに車両価格が高く、後付けすることも非常に困難です。対して車高調は、比較的安価に導入でき、アフターパーツとしても豊富に流通しています。性能面では、アクティブエアサスペンションが提供する快適性と安定性の両立は、車高調では実現が難しいレベルです。しかし、車高調はドライバーの好みに合わせて細かくセッティングできる自由度が高いという利点もあります。
結論として、アクティブエアサスペンションは「快適性と安定性を自動で最適化する、高機能で高価な純正システム」であり、車高調は「車高や乗り味を好みに合わせて手動で調整する、主にカスタム用のシステム」であると言えます。
アクティブエアサスペンションの歴史と進化
アクティブエアサスペンションの概念自体は古くから存在しますが、その実用化と普及は、電子制御技術の発展と密接に関わっています。ここでは、アクティブエアサスペンションがどのように進化してきたのか、その歴史を紐解きます。
初期のエアサスペンションと電子制御の萌芽
エアサスペンションの原型は、1920年代には既に存在し、主にトラックやバスなどの商用車で積載時の車高維持を目的として採用されていました。しかし、この頃のシステムは非常にシンプルなもので、電子制御はほとんど行われていませんでした。
乗用車への導入と初期の課題
乗用車へのエアサスペンションの本格的な導入は、1950年代のシトロエンDSなどが挙げられます。この頃は油圧とガスを組み合わせたハイドロニューマチックサスペンションが主流でしたが、これもまた電子制御によるアクティブな調整機能は限定的でした。
1980年代に入ると、一部の高級車に電子制御式のエアサスペンションが搭載され始めます。しかし、当時の電子制御技術はまだ未熟であり、応答性や信頼性の面で課題も多く、普及には至りませんでした。
センシング技術とECUの発展による「アクティブ化」
1990年代から2000年代にかけて、半導体技術やセンサー技術、そしてECUの処理能力が飛躍的に向上しました。これにより、車両の様々な情報をリアルタイムで高精度に検知し、瞬時にサスペンションを制御することが可能になりました。
各メーカーによる開発競争
- メルセデス・ベンツ: 「ABC(Active Body Control)」に代表される油圧式アクティブサスペンションや、エアマチックサスペンションなど、早くから先進的なサスペンションシステムを開発してきました。
- BMW: 「アダプティブMサスペンション」など、走行モードに応じてサスペンションの特性を変化させるシステムを導入し、スポーティな走行性能と快適性を両立させています。
- アウディ: 「アダプティブエアサスペンション」を多くのモデルに採用し、上質な乗り心地と安定した走行性能を提供しています。
- レクサス: 「アダプティブバリアブルサスペンション(AVS)」など、日本メーカーも独自の技術開発を進めてきました。
これらの技術発展により、単に車高を調整するだけでなく、路面の凹凸を予測して衝撃を軽減したり、コーナリング中のロールを積極的に抑制したりといった、より高度なアクティブ制御が可能になりました。
今後の展望:AI、LiDARとの連携
近年では、AI(人工知能)やLiDAR(ライダー)といった先進技術との連携が進んでいます。LiDARで路面状況を事前にスキャンし、その情報に基づいてサスペンションを最適に準備することで、より滑らかな乗り心地を実現するシステムも登場しています。例えば、メルセデス・ベンツの「E-ACTIVE BODY CONTROL」などがその代表例です。
将来的には、自動運転技術の進化と連動し、ドライバーや乗員の状況、目的地の情報などを総合的に判断して、常に最適なサスペンション特性を提供する、真の意味での「知的な足回り」が実現されることが期待されています。
アクティブエアサスペンション搭載車種の事例
アクティブエアサスペンションは、その高度な機能性から、主に高級車や高性能車、あるいは特定の用途に特化した車両に搭載されています。ここでは、実際にこの技術を導入している主要な自動車メーカーとその代表的なモデルをご紹介します。
メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツは、アクティブサスペンション技術のパイオニアの一つであり、その製品ラインナップの多くに先進的なサスペンションシステムを導入しています。
AIRMATIC(エアマチック)
メルセデス・ベンツの主力エアサスペンションシステムです。電子制御式のエアスプリングと連続可変ダンパーを組み合わせることで、優れた乗り心地と走行安定性を実現します。Sクラス、Eクラス、GLE、GLSなどの上級モデルに広く採用されています。走行モードに応じて減衰力や車高が自動的に調整され、高速走行時には車高が下がり、空気抵抗を低減します。
E-ACTIVE BODY CONTROL(E-アクティブボディコントロール)
SクラスやGLEなどの最上位モデルに搭載される、究極のアクティブサスペンションシステムです。4輪それぞれにアクチュエーターを設け、独立して車高と減衰力を制御します。特に注目すべきは、ステレオカメラで前方の路面状況をスキャンし、凹凸を事前に検知してサスペンションを準備する「ROAD SURFACE SCAN(ロードサーフェススキャン)」機能です。これにより、まるで絨毯の上を滑るような極上の乗り心地を提供します。また、コーナリング時に車体を内側に傾ける「カーブ機能」や、悪路でスタックした際に車体を上下に揺らして脱出を助ける「フリードライビングアシスト」なども備わります。
BMW
BMWは、「駆けぬける歓び」を掲げるブランドとして、走行性能と快適性の両立を追求しています。アクティブエアサスペンションもその一環として、多くのモデルに採用されています。
アダプティブ2アクスルエアサスペンション
X5、X7、7シリーズなどの大型SUVや高級セダンに採用されるシステムです。前後アクスルにエアスプリングを搭載し、走行モードや積載量に応じて車高を自動調整します。スポーツ走行時には車高を下げて重心を低くし、安定性を高めることができます。また、乗降時や荷物の積み下ろし時に車高を下げて利便性を向上させる機能も備わっています。
アウディ
アウディは、その洗練されたデザインと高い走行性能で知られており、上質な乗り心地の提供にも力を入れています。
アダプティブエアサスペンション
A6、A7、A8、Q7、Q8などの主要モデルに広く採用されているシステムです。電子制御式のエアスプリングと可変ダンパーを組み合わせることで、走行状況に応じてサスペンションの特性を自動調整します。コンフォートモードではしなやかな乗り心地を提供し、ダイナミックモードでは引き締まったスポーツ走行に適したセッティングに変化します。積載量に応じた車高維持機能も当然備わっています。
レクサス
トヨタが展開する高級ブランドであるレクサスも、上質な乗り心地と静粛性を追求するために、先進的なサスペンションシステムを導入しています。
アダプティブバリアブルサスペンション(AVS)
多くのレクサスモデルに採用されている電子制御ダンパーシステムですが、近年ではRXなどの一部モデルでエアサスペンションと組み合わせることで、より高度な制御を実現しています。AVSは、路面状況やドライバーの操作に応じて、瞬時にダンパーの減衰力を最適に制御し、フラットな姿勢と快適な乗り心地を両立させます。エアサスペンションとの組み合わせにより、車高調整機能も加わり、総合的な走行性能と快適性が向上しています。
ポルシェ
スポーツカーメーカーとして知られるポルシェも、近年はSUVやサルーンにも力を入れており、これらのモデルには快適性向上のためにアクティブエアサスペンションが採用されています。
アダプティブエアサスペンションとPASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメント)
カイエン、パナメーラなどのモデルに搭載されており、エアスプリングとPASM(電子制御ダンパー)を組み合わせることで、スポーツ性能と日常使いの快適性を両立させています。走行モードに応じて車高と減衰力が変化し、サーキット走行から長距離移動まで、様々なシーンで最適なパフォーマンスを発揮します。
これらの事例からもわかるように、アクティブエアサスペンションは、各自動車メーカーが顧客に最高の乗り心地と走行安定性を提供するための重要な技術として位置づけられています。
アクティブエアサスペンションのメンテナンスと故障について
アクティブエアサスペンションは非常に高性能なシステムである一方で、その複雑さゆえにメンテナンスや故障に関する懸念を持つ方も少なくありません。「エアサス 故障」に関する情報は特に重要です。ここでは、一般的なメンテナンスのポイントと、起こりうる故障、そしてその対処法について解説します。
定期的な点検の重要性
アクティブエアサスペンションは、通常のパッシブサスペンションと比較して、多くの電子部品や空気圧に関わる部品を含んでいます。そのため、定期的な点検が非常に重要になります。
チェックすべきポイント
- エア漏れの確認: エアスプリングやエア配管からのエア漏れは、最も一般的なトラブルの一つです。車高が不自然に下がっていないか、停車時に異音がしないかなどを確認します。
- コンプレッサーの動作確認: コンプレッサーの動作音や、空気を正常に供給できているかなどを確認します。起動時に異音や異常な振動がないか注意しましょう。
- センサー類の異常: 車高センサーやGセンサーなどの異常は、システムの誤作動や警告灯の点灯につながります。警告灯が点灯した場合は、速やかに専門の整備工場で診断を受けましょう。
- 配線やコネクターの劣化: 電子制御システムであるため、配線やコネクターの劣化、接触不良などもトラブルの原因となります。
これらの点検は、専門的な知識と工具が必要な場合が多いため、ディーラーや信頼できる自動車整備工場に依頼することをおすすめします。
よくある故障と原因
アクティブエアサスペンションの故障は、主に以下の部品で発生しやすい傾向があります。
1. エアスプリングのエア漏れ
最も多い故障の一つです。エアスプリングに使用されているゴム部品が、経年劣化や外部からの衝撃(例えば、路面の大きな段差を乗り越えた際など)により、ひび割れや亀裂が生じ、空気が漏れることで発生します。エア漏れが発生すると、該当する部分の車高が下がり、最悪の場合、車高が完全に沈み込んで走行不能になることもあります。
2. エアコンプレッサーの故障
エアスプリングに空気を供給するエアコンプレッサーは、モーターやポンプなどの機械部品で構成されており、酷使されることで寿命を迎えることがあります。動作音が大きくなったり、空気を送り込めなくなったりすると、車高が上がらない、または車高調整ができなくなるといった症状が出ます。エア漏れが放置され、コンプレッサーが常に稼働し続けることで、過負荷になり故障するケースも少なくありません。
3. バルブブロックの不具合
各エアスプリングへの空気の供給・排出を制御するバルブブロックの不具合も考えられます。内部のバルブが固着したり、電気的なトラブルが発生したりすると、特定のサスペンションの車高が調整できなくなったり、勝手に車高が変化したりする症状が出ることがあります。
4. 各種センサーの故障
車高センサー、Gセンサー、圧力センサーなどの異常は、ECUが車両の状態を正確に把握できなくなり、サスペンションの制御が適切に行われなくなる原因となります。これにより、警告灯が点灯したり、乗り心地が著しく悪化したりする症状が現れます。
5. ECUの故障
システム全体の司令塔であるECU自体の故障は稀ですが、発生するとサスペンションシステム全体が機能しなくなる可能性があります。リセットで改善する場合もありますが、部品交換が必要になることもあります。
修理費用について
アクティブエアサスペンションの修理費用は、故障箇所によって大きく異なりますが、一般的に高額になる傾向があります。例えば、エアスプリング1本の交換でも数万円から十数万円、エアコンプレッサーの交換となるとさらに高額になることがあります。複数の部品が故障していたり、ディーラーでの修理となると、数十万円単位の費用がかかることも珍しくありません。そのため、中古車購入の際には、エアサスの状態を十分に確認することが重要です。
これらのリスクを考慮し、定期的なメンテナンスと早期の異常発見が、結果的に修理費用を抑えることにつながります。
まとめ:アクティブエアサスペンションが切り拓く自動車の未来
本記事では、アクティブエアサスペンションについて、その基本的な仕組みから、パッシブサスペンションとの違い、メリット・デメリット、搭載車種、そしてメンテナンスや故障に関する詳細まで、幅広く解説してまいりました。この高度な技術が、いかにして自動車の乗り心地と走行安定性を高次元で両立させているかをご理解いただけたのではないでしょうか。
アクティブエアサスペンションは、単に車高を調整するだけでなく、路面状況や走行状態、さらにはドライバーの意思までをも読み取り、常に最適な足回りを提供する「知的なサスペンション」へと進化を続けています。この技術は、高級車や高性能車に留まらず、将来的にはより多くの車両に搭載され、自動車の快適性や安全性をさらに向上させることでしょう。
近年では、AIやLiDARなどの先進技術との連携により、路面情報を事前に予測してサスペンションを制御するシステムも登場しており、その進化はとどまることを知りません。自動運転技術の進展とともに、車内の空間をより快適に、より安全にするためのキーテクノロジーとして、アクティブエアサスペンションの役割は今後ますます重要になっていくと考えられます。この革新的な技術が、私たちのカーライフをどのように変えていくのか、今後の発展に大いに期待が寄せられます。
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