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主電動機とは|鉄道用語を初心者にも分かりやすく解説

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鉄道車両の「主電動機」は、車両を動かす上で最も重要な装置の一つです。このコラムでは、主電動機の基本的な仕組みから、様々な種類、最新の技術動向、そして実際に採用されている車両の事例まで、専門家である私が分かりやすく解説いたします。鉄道業界に携わる方はもちろん、鉄道に興味をお持ちの全ての方に理解いただけるよう、専門用語を避けつつ、詳細に解説します。

鉄道車両の主電動機とは?

主電動機とは、鉄道車両の車輪を回転させ、車両を走行させるためのモーターのことです。まるで人間の心臓が血液を全身に送り出すように、主電動機は電気エネルギーを動力へと変換し、鉄道車両を前へと進めます。この装置がなければ、電車はただの箱に過ぎません。ここでは、その基本的な役割と重要性について詳しく見ていきましょう。

主電動機の役割と重要性

主電動機は、架線や蓄電池などから供給される電気を動力に変換し、車両を走行させるための駆動力を生み出します。この駆動力は、車両の重量や乗客数、勾配など様々な条件に対応できるよう、適切に制御される必要があります。加速・減速はもちろんのこと、定速走行や勾配の登坂など、鉄道車両の全ての動きに主電動機が深く関わっています。

車両の推進力を生み出す

主電動機は、車両を前進させるための推進力を生み出す役割を担っています。電気エネルギーを受け取り、その力を回転運動に変換し、ギアなどを介して車輪に伝達することで、車両が動き出します。この一連の動作が、私たちが日々利用する鉄道の運行を可能にしているのです。

回生ブレーキとしての機能

主電動機は、車両を加速させるだけでなく、減速時にも重要な役割を果たします。特に、近年多くの鉄道車両で採用されているのが回生ブレーキです。これは、減速時に主電動機を発電機として動作させ、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して架線に戻すことで、電力消費を抑える省エネ技術です。これにより、ブレーキ部品の摩耗も低減され、メンテナンスコストの削減にも貢献しています。

鉄道車両における主電動機の位置づけ

鉄道車両には、主電動機以外にも様々な機器が搭載されていますが、主電動機は走行に直結する最も重要な機器の一つです。台車に搭載され、直接車輪を駆動する方式が一般的で、その性能が車両全体の加速性能、最高速度、省エネ性能などを左右します。また、鉄道車両の設計や運用において、主電動機の選定は非常に重要な要素となります。

台車と主電動機の関係

鉄道車両の主電動機は、通常、車両の台車に搭載されています。台車とは、車輪と車軸、そしてそれらを支えるフレームなどから構成される部分で、主電動機はこの台車の中で車輪に回転力を伝える役割を担っています。台車と主電動機の組み合わせは、車両の走行安定性や乗り心地にも影響を与えるため、慎重に設計されています。

他の主要機器との連携

主電動機は、主制御器、補助電源装置、パンタグラフなど、他の主要な機器と密接に連携して動作します。例えば、パンタグラフで集電した電気は、主制御器によって電圧や電流が調整され、主電動機に供給されます。これらの機器が連携することで、安定した車両の運行が実現されるのです。

主電動機の基本構造と動作原理

主電動機の基本構造と動作原理

主電動機がどのようにして電気を動力に変換するのか、その基本的な構造と動作原理について解説します。一見複雑に見えるかもしれませんが、原理は非常にシンプルです。電気と磁気の関係を利用して、回転力を生み出しているのです。

直流モーターと交流モーターの原理

主電動機には大きく分けて直流モーターと交流モーターの2種類があります。それぞれ異なる動作原理を持っていますが、基本的には電磁誘導の法則を利用して回転力を生み出します。

電磁誘導の法則

電磁誘導の法則とは、磁界中で導体が動いたり、導体の周りの磁界が変化したりすると、その導体に電流が流れる、あるいは電圧が発生するという物理現象です。主電動機は、この原理を逆に応用して、電流を流すことで磁界を発生させ、その磁界同士の反発や吸引を利用して回転力を生み出します。

電磁誘導の法則は、モーターだけでなく、発電機や変圧器など、様々な電気機器の基礎となっています。主電動機においては、この法則を利用して電気エネルギーを運動エネルギーに変換しているのです。

直流モーターの構造と特徴

直流モーターは、古くから鉄道車両に用いられてきたモーターです。構造が比較的シンプルで、制御がしやすいという特徴があります。主に、コイルを巻いた回転子(アーマチュア)と、磁石でできた固定子(界磁)で構成され、整流子という部品で電流の向きを切り替えることで、回転を継続させます。

整流子の役割

直流モーターの大きな特徴は、整流子という部品があることです。整流子は、回転するコイルに電流を供給し、さらにその電流の向きを定期的に切り替えることで、磁界の向きを常に最適な状態に保ち、一方向に回転し続けることを可能にしています。しかし、整流子とブラシの間には摩擦が生じるため、摩耗によるメンテナンスが必要になるというデメリットもあります。

交流モーターの構造と特徴

近年、鉄道車両の主流となっているのが交流モーターです。特に、三相誘導電動機が広く採用されています。交流モーターは、ブラシや整流子が不要なため、メンテナンスの手間が少なく、高速回転にも適しているという特徴があります。固定子に三相交流電流を流すことで回転磁界を発生させ、その磁界によって回転子に誘導電流が生じ、回転力を得ます。

かご形誘導電動機

鉄道車両で最も多く使われている交流モーターは、かご形誘導電動機と呼ばれるものです。回転子の導体が鳥かごのような形をしていることから、この名前がついています。構造が頑丈で信頼性が高く、またメンテナンスフリーであることから、新幹線から通勤電車まで幅広い車両で採用されています。

主電動機の主要部品

主電動機は、様々な部品が組み合わさってできています。ここでは、その中でも特に重要な部品について解説します。

回転子(ローター)

回転子とは、その名の通り、モーターの中で回転する部分です。コイルが巻かれていたり、導体が埋め込まれていたりして、ここに電流が流れることで磁界が発生し、回転力を生み出します。

固定子(ステーター)

固定子とは、モーターの中で回転しない部分です。永久磁石やコイルが配置されており、回転子との間で磁気的な相互作用を起こし、回転子を回転させます。

軸受(ベアリング)

軸受は、回転子をスムーズに回転させるための部品です。摩擦を低減し、回転子の位置を正確に保持する役割を担っています。主電動機は高速で回転するため、軸受の耐久性や信頼性は非常に重要です。

冷却装置

主電動機は、動作中に熱を発生します。この熱が過度になると性能低下や故障の原因となるため、冷却装置が必要になります。一般的には、冷却ファンによる空冷方式が採用されていますが、一部の高性能モーターでは水冷方式が用いられることもあります。

鉄道における主電動機の進化と種類

鉄道車両の主電動機は、技術の進歩とともに大きく進化してきました。初期の直流モーターから始まり、現在では高性能な交流モーターが主流となっています。ここでは、その歴史と主要な種類について掘り下げていきます。

直流直巻電動機

直流直巻電動機は、古くから路面電車や初期の電車などで広く使われてきた主電動機です。シンプルで堅牢な構造をしており、起動トルクが大きいという特徴があります。しかし、速度制御が難しく、高速域での効率が悪いという課題がありました。

速度制御の課題

直流直巻電動機は、供給電圧を変化させることで速度を制御しますが、広い範囲での効率的な制御が難しいという課題がありました。特に、高速域では、整流子の火花発生や振動などの問題が生じやすかったのです。

抵抗制御との組み合わせ

直流直巻電動機は、主に抵抗制御と組み合わせて使用されてきました。抵抗制御とは、モーターに流れる電流を抵抗器で調整することで速度を制御する方式です。しかし、この方式は抵抗器で熱としてエネルギーを消費するため、効率が悪いというデメリットがありました。

交流誘導電動機(三相誘導電動機)

交流誘導電動機は、今日の鉄道車両の主流を占める主電動機です。ブラシや整流子が不要なためメンテナンスが容易で、高速運転に適しています。また、VVVFインバータ制御との組み合わせにより、非常にきめ細やかな速度制御と高効率な運転が可能になりました。

VVVFインバータ制御の登場

交流誘導電動機の普及を大きく後押ししたのが、VVVFインバータ制御の登場です。VVVFとは「Variable Voltage Variable Frequency」の略で、電圧と周波数を自在に変化させることで、交流モーターの回転速度を効率的に制御する技術です。これにより、きめ細やかな加速・減速が可能になり、乗り心地の向上や省エネルギー化に大きく貢献しました。

PWM制御の採用

VVVFインバータ制御では、PWM(パルス幅変調)制御という技術が用いられています。これは、スイッチを高速でオンオフすることで、擬似的な交流波形を作り出し、電圧と周波数を自在に変化させるものです。これにより、モーターへの最適な電力供給が可能となり、高効率な運転を実現しています。

メンテナンス性の向上と省エネ効果

交流誘導電動機は、直流モーターのようなブラシや整流子が不要なため、定期的な交換や清掃といったメンテナンスの必要がありません。これにより、車両の運用コストを大幅に削減できるというメリットがあります。また、VVVFインバータ制御との組み合わせにより、回生ブレーキの効果も最大限に引き出せるため、さらなる省エネ効果が期待できます。

永久磁石同期電動機(PMSM)

近年、注目を集めているのが永久磁石同期電動機(PMSM)です。これは、回転子に永久磁石を使用することで、より高効率で小型軽量化を実現できるモーターです。特に、地下鉄車両や省エネを重視する車両での採用が進んでいます。

高効率・小型軽量化の実現

PMSMは、回転子に永久磁石を使用するため、回転子に電流を流す必要がありません。これにより、エネルギー損失が少なく、従来の誘導電動機に比べて高効率で運転できます。また、モーター自体の小型軽量化も可能となり、車両の軽量化や床下スペースの有効活用に貢献します。

低騒音化への貢献

PMSMは、その構造上、振動や騒音が少ないという特徴も持っています。これにより、車内や沿線での騒音低減に貢献し、居住性の向上や環境負荷の低減にも寄与します。特に、地下鉄などトンネル内での騒音が問題となる路線では、この低騒音性が大きなメリットとなります。

全閉式モーターの採用拡大

PMSMの普及に伴い、モーターが完全に密閉された全閉式モーターの採用も増えています。全閉式モーターは、外部の塵や水分の侵入を防ぐため、信頼性が高く、メンテナンスフリー化をさらに進めることができます。特に、PMSMは発熱が少ないため、全閉式にしても冷却性能を確保しやすいという利点があります。

主電動機を制御する技術:主制御器の役割

主電動機は、単体で動作するわけではありません。その性能を最大限に引き出し、車両の動きを制御するために不可欠なのが主制御器です。主制御器は、主電動機に流れる電気の量や周波数を調整し、車両の加速・減速を司る「司令塔」のような役割を担っています。

抵抗制御

抵抗制御は、直流モーターの速度制御に用いられてきた最も基本的な制御方式です。モーターに直列に抵抗器を接続し、その抵抗値を変化させることで、モーターに流れる電流を調整し、速度を制御します。

シンプルさと課題

抵抗制御は、構造がシンプルで信頼性が高いというメリットがあります。しかし、抵抗器で熱としてエネルギーを消費するため、エネルギー効率が悪いという大きな課題がありました。特に、起動時や低速時には多くの電力が熱として失われていました。

現在における位置づけ

現在の鉄道車両では、効率の悪い抵抗制御はほとんど使われなくなりました。しかし、一部の旧型車両や、特殊な用途の車両では依然として採用されているケースもあります。

チョッパ制御

チョッパ制御は、直流モーターの効率的な速度制御を可能にした技術です。半導体素子を用いて、直流電源を高速でオンオフすることで、モーターに供給する電圧を連続的に変化させます。これにより、抵抗制御に比べて大幅な省エネとスムーズな加速を実現しました。

半導体素子の活用

チョッパ制御の核心は、半導体素子(サイリスタなど)の活用です。これらの素子を高速でスイッチングさせることで、電力の損失を最小限に抑えながら電圧を制御できるようになりました。これにより、直流モーターでも回生ブレーキが可能になり、省エネルギー化に貢献しました。

抵抗制御からの進化

チョッパ制御の登場は、抵抗制御が抱えていたエネルギー効率の問題を大幅に改善しました。これにより、特に通勤電車などで回生ブレーキが普及し、電力消費の削減と環境負荷の低減に大きく貢献しました。

VVVFインバータ制御

VVVFインバータ制御は、現在の鉄道車両における主制御器の主流です。交流モーターを駆動するために不可欠な技術であり、直流電源から任意の電圧と周波数の交流を生成し、モーターに供給します。これにより、高効率な運転、きめ細やかな速度制御、そしてメンテナンスフリー化を実現しました。

電力変換の仕組み

VVVFインバータ制御は、主に「コンバータ」と「インバータ」という2つの部分で構成されます。コンバータで直流を交流に変換し、さらにインバータでその交流の電圧と周波数を自在に変化させます。この複雑な電力変換により、交流モーターの性能を最大限に引き出すことができます。

IGBT素子の普及

VVVFインバータ制御の高性能化に大きく貢献したのが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子の普及です。IGBTは、高速スイッチングが可能で、電力損失が少ないという特徴があります。これにより、より小型で高効率なVVVFインバータの開発が進み、車両の軽量化や省エネ化に貢献しています。

全電気ブレーキと電気指令式ブレーキ

VVVFインバータ制御の導入は、全電気ブレーの実現を可能にしました。これは、車両の減速をすべて回生ブレーキで行い、空気ブレーキは非常時や停止直前のみ使用する方式です。これにより、空気ブレーキのメンテナンス頻度を減らすとともに、省エネルギー効果を最大化できます。また、運転士からの指令を電気信号で伝える電気指令式ブレーキとの組み合わせにより、よりスムーズで応答性の高いブレーキ操作が可能になりました。

主電動機の冷却方式と騒音対策

主電動機は、高出力で動作するため、常に発熱を伴います。この熱を適切に冷却しないと、モーターの性能低下や寿命の短縮、最悪の場合は故障につながる可能性があります。また、モーターの動作に伴う騒音も、乗客の快適性や沿線環境に影響を与えるため、対策が求められます。ここでは、主電動機の冷却方式と騒音対策について解説します。

開放形モーターと密閉形モーター

主電動機の冷却方式は、大きく分けて開放形と密閉形の2種類があります。

開放形モーター

開放形モーターは、モーターの内部が外部に開放されており、外部の空気を取り込んで冷却する方式です。構造が比較的シンプルで、冷却効率が高いというメリットがあります。しかし、外部の塵や水分がモーター内部に侵入しやすく、定期的な清掃やメンテナンスが必要となるというデメリットがあります。

密閉形モーター(全閉形モーター)

密閉形モーターは、モーターの内部が完全に密閉されており、外部の空気と遮断されています。これにより、塵や水分がモーター内部に侵入するのを防ぎ、メンテナンスフリー化に貢献します。しかし、開放形に比べて冷却効率が劣るため、内部で発生した熱を効率的に外部に放出する工夫が必要です。

自己通風式と強制通風式

密閉形モーターでも、冷却方式にはいくつかの種類があります。自己通風式は、モーター内部に設けられたファンが、モーター自身の回転によって空気を循環させ、熱を外部に放出する方式です。一方、強制通風式は、外部からファンで強制的に冷却風を送り込む方式で、より強力な冷却が必要な場合や、モーターの回転数が低い場合などに採用されます。

主電動機の騒音対策

主電動機は、回転音や冷却ファンの音、電磁的な振動音など、様々な種類の騒音を発生させます。これらの騒音は、乗客の快適性を損なったり、沿線住民の生活環境に影響を与えたりするため、対策が重要です。

低騒音化設計

モーター自体の設計段階から、低騒音化を考慮した設計が行われています。例えば、モーターの形状や材質の工夫、回転子のバランス調整、軸受の選定などにより、発生する騒音を最小限に抑える efforts が行われています。

防音材の採用

モーターからの騒音が外部に漏れるのを防ぐために、防音材が使用されます。モーターを覆うカバーの内側に吸音材を貼り付けたり、モーターと台車の間に防振ゴムを挟み込んだりすることで、騒音の伝播を抑制します。

全閉式モーターの活用

先述の全閉式モーターは、外部との遮断性が高いため、騒音の外部への漏れも抑制する効果があります。特に、静粛性が求められる地下鉄車両などで、全閉式PMSMが採用されるケースが増えています。

新幹線E5系・H5系(JR東日本・JR北海道)

鉄道車両における主電動機の採用事例

これまで解説してきた主電動機や制御方式は、実際の鉄道車両でどのように活用されているのでしょうか。ここでは、具体的な車両の事例を挙げながら、それぞれの特徴と採用背景について紹介します。

新幹線E5系・H5系(JR東日本・JR北海道)

東北・北海道新幹線で活躍するE5系・H5系は、高出力・高効率な**三相誘導電動機**と**全電気ブレーキ対応VVVFインバータ制御**を組み合わせています。最高速度320km/hでの安定した高速走行を実現するために、高性能な主電動機が不可欠です。

高出力モーターの搭載

E5系・H5系には、1両あたり4台の主電動機が搭載されており、それぞれが約300kW以上の高出力を発生させます。これにより、急勾配の多い東北新幹線の区間でも、力強く安定した走行が可能です。

全電気ブレーキによる省エネ

回生ブレーキを最大限に活用する全電気ブレーキにより、消費電力の削減と省エネ効果を実現しています。特に、高速からの減速時には、大量の回生電力を発生させ、環境負荷の低減に貢献しています。

東京メトロ10000系・17000系(東京メトロ)

東京メトロの有楽町線・副都心線で活躍する10000系・17000系は、永久磁石同期電動機(PMSM)を採用しています。都市部の地下鉄路線において、高効率・低騒音というPMSMの特性を最大限に活かしています。

PMSMによる省エネと静粛性

PMSMの採用により、従来車両と比較して約10%の消費電力削減を実現しています。また、静粛性にも優れており、地下トンネル内での騒音低減に大きく貢献しています。これにより、乗客の快適性向上だけでなく、沿線環境への配慮も実現しています。

全閉式モーターによるメンテナンスフリー化

10000系・17000系のPMSMは、全閉式構造となっています。これにより、モーター内部に粉塵や湿気が侵入するのを防ぎ、大幅なメンテナンスフリー化を実現しています。過酷な地下空間での運行においても、高い信頼性を確保しています。

JR東日本E235系(JR東日本)

山手線で運用されているE235系は、最新の技術が詰まった通勤電車です。全閉型PMSMとSiC(炭化ケイ素)適用VVVFインバータ制御の組み合わせにより、さらなる省エネルギー化と高効率化を実現しています。

SiC素子の導入

E235系では、VVVFインバータに次世代半導体材料であるSiC(炭化ケイ素)を用いた素子が採用されています。SiC素子は、従来のSi(シリコン)素子に比べて、電力損失が非常に少なく、高速スイッチングが可能です。これにより、VVVFインバータの小型軽量化と高効率化をさらに進め、大幅な省エネルギー効果と低騒音化を実現しています。

モーターの個別制御技術

E235系では、各車両に搭載された複数のモーターを個別に制御する技術が導入されています。これにより、モーターの特性を最大限に引き出し、よりきめ細やかな加速・減速制御と、粘着性能の向上を実現しています。これは、ラッシュ時の頻繁な加減速においても、スムーズで安定した走行を可能にしています。

まとめ:鉄道の進化を支える主電動機

主電動機は、鉄道車両の「心臓部」として、その進化を支えてきた非常に重要な技術です。直流モーターから交流モーター、そして最新の永久磁石同期電動機へと発展する過程で、私たちはより安全で快適、そして環境に優しい鉄道システムを実現してきました。VVVFインバータ制御のような革新的な技術の登場が、主電動機の性能を飛躍的に向上させ、今日の鉄道運行を可能にしています。

今後も、さらなる高効率化、小型軽量化、そしてメンテナンスフリー化に向けた技術開発が続けられていくでしょう。自動運転やAIの活用など、未来の鉄道システムにおいても、主電動機は変わらずその中核を担い続けるはずです。このコラムが、主電動機への理解を深める一助となれば幸いです。

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