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アジャイル開発適用時の要件管理手法

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アジャイル開発とは何か:公共交通業界における文脈でアジャイルを再定義

「アジャイル開発」と聞くと、IT企業の専売特許のように思われがちですが、実は公共交通業界こそこの考え方が活きる場面が多く存在します。特に、技術導入や業務改善を推進する際には、アジャイルの持つ「段階的な改善」と「現場の声を活かした設計」が極めて有効です。

公共交通業界では、ハードウェア起点の開発(例:信号装置、改札機、車両制御システム)に馴染みがある一方で、業務フローや利用者インターフェースに関する要件は後回しになりがちです。これはウォーターフォール型(事前に全要件を確定し、順に開発・導入を行う)の手法では見逃されがちな部分です。導入後に「使いにくい」「現場と合わない」といった事態が発生するのは、こうした背景が影響しています。

アジャイル開発の本質は、要件をあらかじめ完璧に固めるのではなく、「変化する前提で進める」ことにあります。変化とは、制度の改正、現場の意見、技術の進化、ユーザーのフィードバックなど、公共交通の世界では日常茶飯事です。そのため、計画に固執するよりも、常に優先順位を見直し、フィードバックを取り込みながら設計を修正する仕組みが求められます。

また、アジャイルでは開発そのものよりも「価値の提供」に重きが置かれます。公共交通では、「現場の作業が楽になる」「利用者のストレスが減る」「障害発生時の対応が早くなる」といった具体的な効果が“価値”として認識されるべきです。これらはプロジェクトの初期段階で明確化し、開発の全体方針とする必要があります。

とはいえ、公共交通業界においてアジャイル開発をそのまま導入することには一定の限界があります。例えば、調達制度(長期契約や随意契約)、インフラとの接続制約、既存設備との互換性など、自由に仕様変更できない要素も多く存在します。そのため、本記事では「すべてをアジャイルに置き換える」のではなく、「アジャイルの考え方を部分的に適用する」ことを主眼に置いて解説を進めます。

本章では、アジャイル開発の基本的な概念と、公共交通業界における活用の意義について整理しました。次章からは、要件管理という実務テーマにフォーカスし、現場の視点と経営判断をつなぐための具体的な手法に迫っていきます。

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