公開日: 最終更新日:

経営戦略に基づく課題設定とテーマ選定の技術

技術者研修
  1. TOP
  2. 技術者研修
  3. 経営戦略に基づく課題設定とテーマ選定の技術

はじめに:なぜ技術者が「課題設定」を学ぶべきか

公共交通業界では、技術導入や業務改善が「現場の声に応じて行われるもの」と考えられがちです。しかし現実には、現場発の提案が組織全体の意思決定に反映されるまでに、多くの壁が存在します。特に、管理部門や経営層との間にある“見えない断絶”は、技術者にとって大きなハードルです。

たとえば、ホームドアの誤動作対応に追われる保守担当者が「検知精度を改善したい」と現場改善提案を出したとします。しかし、その提案が「組織として優先されるべきテーマか」「投資回収が見込めるか」「他部署に影響があるか」といった視点で議論されることは少なく、結局は「費用対効果が不明瞭」として却下されることがあります。

こうした“すれ違い”は、決して能力や熱意の問題ではなく、技術者が「経営や組織の視点で課題を捉える技術」を学んでいないことに起因しています。課題設定の精度を上げることは、単なる提案の通りやすさに留まらず、その後の技術調査・要件定義・開発・導入すべてのステップに影響を及ぼします。

本記事では、現場技術者が“実務としての課題設定”を自分の武器として身につけるために、以下の3つの観点を中心に解説していきます。

  • 経営戦略と接続する課題設定:単なる業務上の困りごとではなく、組織として解決すべき「テーマ」に昇華する技術
  • 部門間連携を前提としたテーマ選定:関係者を巻き込み、合意形成までを見越した構造化の方法
  • 人材育成と再現性の確保:属人的な思いつきに頼らず、若手や他部署でも再現可能な形式で課題を定義する

特に、鉄道・バス・空港といったインフラ産業では、「現場で見えている課題」がそのまま「組織にとっての重要課題」となるとは限りません。そのギャップを埋める視点こそが、次世代の技術者に求められているのです。

本記事は、現場経験5年未満の初学者でも理解できる構成としつつ、管理職や経営層に近い立場の中堅層が「組織を動かす技術者」として一歩を踏み出すための土台となることを目的としています。研修・教育資料としての活用も想定し、すぐに業務へ展開できる実践的な内容で進めていきます。

それでは次章から、まずは「経営戦略の読み解き方」について解説していきましょう。

この記事の続きは会員限定コンテンツとなっております。
無料登録またはログインしてください。

新規登録

 

関連記事

       

掲載に関する
お問い合わせ

お気軽にお問い合わせください