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要件定義プロジェクトにおけるファシリテーション技術

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1. 要件定義とファシリテーションの関係性を理解する

技術導入や業務改善の現場において、「要件定義」は最も重要な工程のひとつです。なぜなら、この段階での判断ミスや認識ズレが、プロジェクト後半における手戻りやコスト増、現場との軋轢を引き起こすからです。しかし、要件定義を技術や機能のリストアップと捉えてしまうと、本質を見落とします。そこで必要となるのが、関係者の意見を引き出し、合意形成を導く「ファシリテーション」の技術です。

ファシリテーションとは、複数人が関与する議論・会議・意思決定を円滑に進め、合意に到達させるための支援行動を指します。プロジェクトマネージャーだけでなく、技術者や現場担当者もこのスキルを身につけることで、関係者の橋渡し役となり、現実的で納得感のある要件定義を推進できます。

特に公共交通業界では、「現場の運用上の制約」と「管理部門の経営的な目線」が交差する場面が多く、両者の間で意見が対立することも珍しくありません。たとえば、車両機器の仕様をめぐって「整備性を優先したい現場」と「ライフサイクルコストを重視する企画部門」が噛み合わないケースが挙げられます。こうした場面では、単なる議事進行だけでなく、論点の整理や認識のすり合わせを行うファシリテーターが必要です。

要件定義におけるファシリテーションの実務的な役割は、大きく3つに整理できます。

  • ①関係者の利害・視点の違いを可視化し、全体像を共有する
  • ②本質的な課題や前提条件を引き出し、思考のズレを調整する
  • ③合意形成を段階的に進め、関係者の納得感を得る

この3つは、一見地味な作業のように思えるかもしれませんが、要件定義が「あとから揉める」「現場に合っていない」「誰が決めたかわからない」状態を防ぐうえで、極めて実践的かつ重要な働きです。特に複数部門が関わる公共交通インフラのような領域では、「合意してから進める」ことが、全体の品質と効率を高める最大の武器になります。

本章では要件定義とファシリテーションの関係性を概観しましたが、次章以降ではより具体的な実務手法、場面ごとの工夫、そして教育設計にも踏み込んでいきます。単なる「会議の司会」ではなく、要件を育てる技術としてのファシリテーションを、自身のスキルセットとして取り入れていきましょう。

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