公開日: 最終更新日:
デジタルトランスフォーメーション(DX)時代の運用改革
- 技術者研修
DX時代における運用改革の必要性と背景
近年、公共交通業界では、設備やシステムの新規導入だけでなく、導入後の運用・改善の重要性が急速に高まっています。背景には、労働力不足、利用者ニーズの多様化、災害や感染症といった外的要因への迅速な対応が求められる環境変化があります。従来の運用は、導入時点で仕様が固定化され、その後は定期点検や更新までほぼ同一の手順で維持される傾向がありました。しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展によって、運用中にも継続的な改善を加え、データを活用しながら最適化していくアプローチが可能かつ必要になっています。
特に、公共交通の現場では、日々の運行・保守業務で得られるデータ(運行実績、設備稼働状況、故障履歴、利用者からのフィードバックなど)が膨大に蓄積されています。これらを適切に活用することで、単なる故障対応や定期点検から脱却し、予防保全や効率化、安全性向上を実現できます。たとえば、ホームドアや信号設備の稼働データを分析し、故障前の兆候を検知する「予兆保全」は、運休や遅延を未然に防ぐだけでなく、保守コストの平準化にも寄与します。
一方で、DXを活用した運用改革は、技術的な準備だけでは成立しません。管理部門が掲げるKPIやDX方針と、現場が直面している実務課題が乖離しているケースは少なくありません。この乖離を放置すると、現場側では「負担だけ増える改革」、管理部門側では「成果の見えない投資」という不満が生じ、改革が形骸化します。したがって、現場と管理部門の相互理解を前提に、改善テーマを具体化し、短期的な成果と長期的なビジョンを両立させる設計が必要です。
また、公共交通は社会インフラであり、一度導入した設備やシステムは長期間使われます。導入後の改善は「既存資産をどう活かすか」という視点が不可欠です。老朽設備であっても、IoTセンサーの追加やソフトウェア更新により、機能向上や運用効率化が可能なケースは多くあります。新規投資だけに頼らず、既存設備のポテンシャルを最大限引き出すことが、DX時代の運用改革の核となります。
本章では、こうした運用改革の必要性と背景を整理しました。次章では、運用フェーズにおけるDXの定義と、その適用範囲を具体的に掘り下げます。
関連記事
業界別タグ
最新記事
掲載に関する
お問い合わせ
お気軽にお問い合わせください