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設置工事工程表(ガントチャート)の作成実務

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1. ガントチャートの役割と施工計画の基本

公共交通業界における施工・設置・切替工事は、限られた時間・空間・人員の中で実施されるため、工程管理の正確さが成果の成否を大きく左右します。その中でガントチャート(工程表)は、単なる日程表以上の役割を持ちます。作業の全体像を把握し、部門やベンダー間の連携を促し、さらに現場での進行状況を「見える化」する基盤となるのです。

例えば鉄道の信号機更新工事を考えると、夜間の限られた線閉時間の中で、撤去作業・ケーブル敷設・装置設置・試験調整を順序よく行う必要があります。これらは一見単純な流れに見えますが、撤去が遅れれば後続作業に影響し、試験時間が不足すれば翌日の運行に支障を及ぼしかねません。ガントチャートはこうした「依存関係」を可視化し、各工程のリスクを前もって調整するための土台となります。

管理部門にとっても、ガントチャートは工事進捗を俯瞰的に確認できる重要な資料です。予算執行や契約管理に直結するため、現場の担当者が作成する工程表が曖昧であれば、経営判断に誤りをもたらします。一方で、現場からすると「細かい調整ばかり求められる資料」と捉えられることもあり、ここに断絶が生じやすいのが実情です。そのため、本記事では現場と管理をつなぐ「実務で使える工程表」の作成をテーマに据えています。

ガントチャートの基本的な構造は、縦軸に作業項目、横軸に時間軸を取り、各作業をバーで示すものです。しかし単純な棒線の羅列ではなく、①作業項目の粒度(分解の細かさ)、②依存関係の矢印や区分、③重要マイルストーンの設定を意識する必要があります。これにより、工事全体の流れとクリティカルな部分が直感的に理解できる形になります。

また、公共交通業界特有の制約条件も反映しなければなりません。例えば「列車の運行に影響を与えない時間帯」「駅利用者の安全動線の確保」「既存システムとの切替タイミング」といった条件です。これらを無視して机上で作った工程表は、現場に落とした瞬間に破綻します。したがって、ガントチャートは現場制約を正確に織り込みつつ、全関係者が共通認識を持てる水準で仕上げることが必須です。

本章の要点を整理すると、ガントチャートは「作業管理表」であると同時に「部門横断的なコミュニケーションツール」でもあるという点です。次章では、実際に工事工程表を作る前に必要となる準備事項について、現場での具体的な行動に踏み込みながら解説します。

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