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導入可否判断に必要なリスク整理術

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はじめに:導入判断におけるリスク整理の重要性

公共交通業界における技術導入や設備更新は、日常の安全運行や利用者サービスの質に直結する重要なプロジェクトです。そのため、新技術を導入するか否かの判断は、単なるコストや機能比較にとどまらず、多面的なリスク評価を伴う意思決定プロセスが不可欠です。特に導入可否の判断を担うSTEP6(導入決定・契約・スケジュール)では、現場技術者と管理部門の双方が「見えているリスク」と「見えていないリスク」を整理し、共通理解を持った上で進めることが重要となります。

しかし現実には、現場と本社・管理部門の間でリスク認識にズレが生じることが少なくありません。例えば、現場は施工中の安全や運用中のトラブル発生に敏感ですが、管理部門は契約条件や納期遵守に強い関心を持ちます。その結果、同じ導入案件でも評価軸が異なり、意思決定の場で「言葉が噛み合わない」状況が起こりがちです。これが導入判断の停滞や、実際に導入した後のトラブルにつながります。

そこで重要になるのが「リスク整理術」です。リスク整理とは、曖昧に語られる懸念を具体的な項目に分解し、それをプロジェクト全体の中でどう扱うかを明確にする作業です。これにより、現場の経験知と管理部門の制度的観点を橋渡しし、技術導入の意思決定をスムーズに進められるようになります。さらに、リスクを可視化して共有することは、導入後の改善や教育資料としても活用でき、組織的な学習効果を高める効果もあります。

初学者や若手社員にとっては、「リスク」という言葉自体が抽象的に聞こえるかもしれません。しかし、実際の業務では「作業時間が想定より延びる」「機器が設計条件を満たさない」「関連部門から合意を得られない」といった、日常的な出来事の延長線上にリスクがあります。つまり、リスク整理は特別な専門知識を必要とするものではなく、自分の業務で経験した事象を整理して体系化することから始められるのです。

本記事では、導入可否判断に必要なリスク整理の方法を、分類・抽出・共有・評価の流れに沿って基礎から解説します。現場技術者が主体的に関われるよう具体的な行動例を示しつつ、他部門との協働や教育への応用方法まで踏み込んで紹介していきます。これにより、入社数年の技術者でもリスク整理の視点を持ち、組織の意思決定に貢献できるスキルを習得できることを目指します。

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