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工事前現地調査(Site Survey)の進め方

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工事前現地調査の役割と重要性

工事前現地調査(Site Survey)は、施工計画を実行に移す前に必ず行うべき基礎工程です。紙面上の設計や計画だけでは把握できない現場特有の条件を洗い出し、施工の可否や方法を最終的に確認する役割を担います。特に公共交通業界においては、施工現場が運行中の駅や線路、乗客が利用する空間であることが多いため、調査を怠ると安全リスクや工期遅延、追加コストの発生につながりかねません。

現地調査の第一の目的は、図面や仕様書と実際の現場の差異を把握することです。長年の運用で追加工事や現場独自の改修が行われているケースは少なくなく、現状と図面が一致しないことは頻繁に発生します。この齟齬を見過ごしたまま施工に入れば、工事途中での設計変更や部材の追加発注が必要となり、結果として大きな損失を招きます。

第二の目的は、安全性の確保です。特に鉄道やバスの運行環境では、作業空間の確保、夜間作業中の照度、仮設通路の設置、第三者災害防止など、多角的な確認が不可欠です。現地調査は単なる寸法取りや現況確認に留まらず、「工事を安全に実施できる条件を満たしているか」を検証する場でもあります。安全部門や現場監督者との協働により、施工中に想定されるリスクを事前に洗い出すことが重要です。

第三の目的は、運用との両立を確認することです。公共交通機関の工事は、運行を完全に止められない環境下で実施されるのが常です。そのため、夜間の限られた作業時間内でどこまで作業可能か、切替手順に不整合はないか、運輸部門や駅管理者との調整が不可欠です。現地調査の段階でこれらの制約条件を把握し、計画に反映させることで、初めて現実的な施工計画が成立します。

また、現地調査は技術者教育の観点からも極めて有意義です。若手社員にとっては「机上で学んだ図面と、実際の現場がどう違うか」を体感する機会となり、設計意図や施工手順の理解が格段に深まります。現場を歩き、手を動かし、先輩技術者の指摘を受けることで、知識が実務感覚へと変わっていきます。ベテランにとっても、過去工事との比較や新技術の導入余地を見極めるなど、経験を次世代に伝える場となります。

さらに、現地調査は「部門間の断絶を埋める場」としても機能します。設計部門は計画通りの施工が可能かを知り、現場部門は設計意図を理解する。安全管理部門や運用部門は制約条件を伝え、工事全体を最適化するための共通認識を形成します。これらの調整を現地で行うことにより、後工程での摩擦を減らし、組織全体として効率的にプロジェクトを進めることが可能となります。

このように、工事前現地調査は単なる「下見」ではなく、施工品質、安全性、コスト管理、教育効果を含めた多面的な価値を持つ工程です。調査の徹底は、施工を成功させるだけでなく、技術者の成長や組織の知見蓄積にも直結します。初学者であっても、この重要性を理解した上で現場に臨むことが、将来のプロジェクト遂行能力の基盤となります。

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振り返りワーク

学びは手を動かし言語化してはじめて定着します。本ワークでは、記事で扱った現地調査の視点を自分の案件や職場の状況に重ねて整理します。業務の計画・安全・連携に直結し、教育や勉強会での共有にも使える形でアウトプットします。小さな一枚のメモでも効果があります。

Q1:現地調査は「図面・仕様と現場条件の齟齬を把握し、施工の可否と方法を確かめる工程」であると理解していますか(Yes / No)

  • Yes
  • No

Q2:調査準備に関して不適切なものはどれでしょうか

  • A:図面に要確認箇所をマーキングして現地で重点確認します。
  • B:関係部門の立入条件や安全教育要否を事前に確認します。
  • C:チェックリストと必要工具を事前に整備し役割分担を明確にします。
  • D:現地での判断のみで設計変更の承認を独断で確定します。

Q3:夜間4時間の作業枠で先に実地確認すると影響が大きいものはどれでしょうか

  • A:搬入経路の曲率・高さ制限とエレベーター積載条件
  • B:盤内の予備容量と回路番号の空き状況
  • C:設置対象機器の外形寸法公差(±5 mm)の妥当性

Q4:報告書の表現としてより適切なのはどれでしょうか

  • A:「多分大丈夫だと思います。」
  • B:「〇〇扉前は通行量が多く、仮設柵設置時に幅員が1.6 mへ縮小します。ラッシュ時間帯は施工不可と判断します。」
  • C:「現場が狭いのでやりづらいです。」

Q5:調査後の処理フローとして適切な順序はどれでしょうか

  • A:重点確認箇所の抽出・チェックリスト集約
  • B:関係部門との共有会で合意形成
  • C:写真マーキングと図面・報告書への反映
  • D:施工計画・切替手順の更新

Q6:ご自身の担当案件を想定し、次回の現地調査計画を200~300字で記述します

  • 対象設備・場所・運行制約(例:夜間3.5時間、通行動線変更要)
  • 重点確認Top3(例:搬入経路、盤容量、干渉箇所)
  • 参加者と役割(現場・設計・安全・運輸・ベンダー)
  • 主要リスクと代替案(足場・養生・段取り短縮)

Q7:後輩に同行してもらう前提で、OJT指導案を箇条書きで作成します

  • 事前ブリーフィング:図面閲覧観点・チェックリストの使い方・安全留意点
  • 現地での学習目標:測る・撮る・示す(再現性ある記録の取り方)
  • 役割付与:若手は寸法と写真、先輩は干渉判定と仮設検討など
  • デブリーフィング:報告書作成分担、改善点の振り返り、次回の仮説設定

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