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越境EC物流とは|物流用語を初心者にも分かりやすく解説

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グローバル化が進む現代において、海外の消費者に日本の商品を直接届ける「越境EC(Electronic Commerce)」は、企業の新たな成長戦略として注目されています。しかし、国内のECと異なり、商品の配送には国境を越えるための複雑な手続きや課題が伴います。この国際間の商品輸送を円滑に行うための仕組みこそが、「越境EC物流」です。この記事では、越境EC物流の基本的な概念から、直面する課題、それを解決する最新の技術、そして具体的な成功事例まで、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説していきます。

この記事を読むことで、越境EC物流の全体像を把握し、自社のビジネスにどのように活かせるかのヒントを得ることができるでしょう。複雑な国際物流を理解するための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。

越境EC物流とは?

越境EC物流とは、その名の通り、国境を越えて商品をお客様に届けるためのすべてのプロセスを指します。具体的には、商品の梱包、倉庫での保管、輸出手続き、国際輸送、通関、現地での配送までの一連の流れを包括しています。このプロセスは、国内の物流と比較して、より複雑で多くの専門知識を必要とします。

越境ECと国内ECの物流の違い

国内EC物流では、日本国内での商品の移動のみを考えればよいのに対し、越境EC物流では「国境」という大きな壁を乗り越える必要があります。この壁には、以下のような違いが伴います。

  • 手続きの複雑さ:輸出入に関する書類作成や税関への申告が必要です。
  • 輸送手段の多様性:航空便、船便、鉄道など、複数の輸送手段を組み合わせる場合があります。
  • コスト構造:関税、消費税、国際配送料、通関手数料など、国内にはない費用が発生します。
  • リードタイム:国内配送に比べて時間がかかり、予期せぬ遅延が発生する可能性があります。

越境EC物流の流れ:注文から顧客到着まで

越境EC物流は、一般的に以下のようなステップで進行します。

  1. 注文受付:海外の顧客からECサイトを通じて注文が入ります。
  2. 商品のピッキング・梱包:倉庫で商品が選ばれ、海外輸送に耐えられるように梱包されます。
  3. 通関手続き:輸出国(日本)の税関に対して、輸出許可を得るための書類を提出します。
  4. 国際輸送:航空便や船便などを利用して、商品を目的地の国まで運びます。
  5. 輸入通関:目的地の国の税関で、輸入許可を得るための手続きを行います。この際に、関税や輸入消費税が課される場合があります。
  6. 現地配送:通関を通過した商品を、現地の配送業者を通じて顧客のもとへ届けます。

この一連の流れをスムーズに行うためには、各ステップでの専門的な知識と、信頼できるパートナーの存在が不可欠です。

越境EC物流とは?

越境EC物流が直面する主な課題とリスク

越境ECは大きなビジネスチャンスをもたらしますが、同時に多くの課題も存在します。これらの課題を事前に理解し、対策を講じることが成功の鍵となります。

通関手続きと関税・税金の問題

国際物流における最大の障壁の一つが「通関」です。各国の法律や規制は異なり、必要な書類や申告内容も多岐にわたります。

  • HSコード:商品の種類を国際的に統一されたコードで分類します。このコードの誤りによって、通関が遅延したり、予期せぬ関税が発生したりするリスクがあります。
  • 関税・消費税:商品の種類や金額、目的地の国によって、関税や輸入消費税が課されます。これらの税金の負担を誰が負うか(DDP/DDU)を事前に明確にしておく必要があります。

配送コストとリードタイム

国際配送は国内配送に比べて高コストであり、到着までの時間も読みにくいという課題があります。

  • 高コスト:航空便は高速ですが高価で、船便は安価ですが時間がかかります。最適な配送方法の選択が求められます。
  • リードタイムの不確実性:天候、通関での検査、現地の物流事情など、様々な要因で配送が遅延する可能性があります。これにより、顧客満足度の低下を招くことがあります。

物流品質と配送追跡

海外での配送中の商品の紛失や破損は、国内以上に大きなリスクとなります。

  • 配送追跡(トラッキング):日本の配送業者が提供する追跡情報が、海外の業者に引き継がれた際に途切れてしまうことがあります。顧客が商品の所在を把握できず不安を感じるケースが散見されます。
  • 返品・交換対応:海外からの返品は手続きが複雑で、送料も高くなります。返品ポリシーを明確に設定し、適切な対応体制を構築しておくことが重要です。

越境EC物流の最新技術とソリューション

これらの課題を解決するために、物流業界では様々な最新技術が導入されています。これらの技術を活用することで、より効率的で信頼性の高い物流を実現できます。

物流管理システム(WMS, OMS)の進化

物流管理システムは、在庫管理から出荷、配送までの一連の業務を効率化するための基盤となるシステムです。

WMS(Warehouse Management System)

WMSは倉庫内の在庫管理を最適化するシステムです。越境ECにおいては、多言語対応や、複数の配送業者との連携機能が重要となります。

OMS(Order Management System)

OMSは、ECサイトからの注文を一元管理するシステムです。越境ECでは、複数のECモールや自社サイトの注文を統合し、最適な配送方法や通関手続きの情報を自動で生成する機能が求められます。

AIとロボティクスを活用した自動化

AI(人工知能)とロボット技術は、物流業務の自動化を加速させています。

ロボットによるピッキング・ソート

アマゾンなどで導入されている自律走行型ロボット(AGV)は、商品棚を自動で運び、作業員の元へ届けることでピッキング作業を大幅に効率化します。

AIを活用した需要予測

AIは過去の販売データや市場動向を分析し、将来の需要を予測します。これにより、適切な在庫量を維持し、欠品や過剰在庫のリスクを低減することができます。

ブロックチェーンとIoTによる透明性の向上

ブロックチェーンは、取引履歴を改ざん不可能な形で記録する分散型台帳技術です。物流においては、この技術を使ってサプライチェーン全体の追跡情報を透明化し、偽造品の流通を防ぐことができます。また、IoT(Internet of Things)センサーを貨物に取り付けることで、温度、湿度、位置情報などをリアルタイムで監視し、品質管理を徹底することが可能です。

越境EC物流のサービス提供者と活用法

自社ですべての物流プロセスを構築・運営するのは非常に困難です。そのため、専門の物流サービス提供者(フォワーダー、ロジスティクスプロバイダー)と連携することが一般的です。

国際輸送を担うフォワーダーとキャリア

フォワーダーは、荷主(EC事業者)と航空会社や船会社(キャリア)の間に入り、最適な輸送ルートの選定や通関手続き代行を行う専門業者です。

フォワーダーの役割

複数のキャリアや輸送手段を組み合わせて、コストやリードタイムを最適化する提案をしてくれます。また、煩雑な輸出入書類の作成も代行してくれます。

キャリアの役割

航空会社や船会社など、実際に商品を輸送する事業者のことです。日本郵便、FedEx、DHL、UPSなどが代表的なキャリアとして知られています。

フルフィルメントサービスと3PL(サードパーティ・ロジスティクス)

フルフィルメントサービスは、ECサイトの受注から、商品のピッキング、梱包、発送、さらにはカスタマーサポートまで、一連の業務を代行するサービスです。

フルフィルメントサービスのメリット

  • 業務効率化:自社で物流業務を行う必要がなくなり、コア業務に集中できます。
  • コスト削減:専門業者に委託することで、人件費やシステム導入費用を抑えることができます。
  • プロのノウハウ活用:通関手続きや各国の規制に詳しい専門家の知見を活用できます。

代表的な越境EC物流サービス

近年、越境ECに特化した物流サービスを提供する事業者が増えています。例えば、国際郵便(EMS)、DHL、FedEx、UPSといった大手国際輸送業者に加え、ECモール(Amazon, eBayなど)が提供する独自のフルフィルメントサービスも人気があります。

成功事例に学ぶ越境EC物流戦略

実際に越境ECで成功を収めている企業の事例を見て、その物流戦略から学びを得ましょう。

事例1:BOPISを活用したアパレル企業の事例

ある日本の大手アパレル企業は、海外店舗でのBOPIS(Buy Online, Pick-up In Store)を導入しました。これにより、オンラインで注文された商品を、顧客が現地店舗で受け取ることができるようになり、国際送料を削減し、返品率の低下にも成功しました。この戦略は、店舗を物流拠点として活用する「オムニチャネル戦略」の一環です。

事例2:現地のECモールを活用した食品企業の事例

日本の食品メーカーは、中国のECモール「Tmall Global」に出店し、物流はTmall Globalが提供するフルフィルメントサービスを利用しました。これにより、複雑な通関手続きや現地の物流手配を代行してもらい、現地の消費者への迅速な配送を実現しました。

事例3:ドローン配送の導入実験

一部の先進的な企業では、離島や過疎地域への配送にドローンを導入する実験が行われています。特に、高価な商品や緊急性の高い医療品の配送において、ドローンはリードタイムの大幅な短縮とコスト削減に貢献する可能性があります。

越境EC物流の将来展望と今後のトレンド

技術の進化やグローバルな商流の変化に伴い、越境EC物流は今後も大きく進化していくことが予想されます。

サステナブルな物流の実現

環境問題への意識の高まりから、物流においてもサステナビリティが重要なテーマとなっています。電気自動車(EV)トラックの導入、梱包材の削減、効率的な輸送ルートの最適化など、環境負荷を低減する取り組みが進んでいます。

物流拠点の分散化と自動倉庫

顧客への配送リードタイムを短縮するため、販売先の主要国に小規模な物流拠点を複数設置する「マイクロフルフィルメントセンター」が増加しています。これらの拠点では、省スペースで効率的な自動倉庫システムが導入される傾向にあります。

サプライチェーンのデジタル化

AI、ブロックチェーン、IoTなどの技術を統合的に活用することで、サプライチェーン全体の情報をリアルタイムで共有し、可視化する「デジタルサプライチェーン」の構築が進んでいます。これにより、予期せぬトラブルへの迅速な対応や、より高度な需要予測が可能になります。

まとめ:越境EC物流を成功させるために

この記事では、越境EC物流の基本から最新技術、成功事例までを幅広く解説しました。越境ECを成功させるためには、物流を単なる「コスト」ではなく、「顧客体験を高めるための重要な戦略的要素」として捉えることが不可欠です。

複雑な通関手続きやコストの問題は、専門の物流パートナーと連携することで解決できます。また、最新のテクノロジーを導入することで、効率性、透明性、顧客満足度を向上させることができます。ぜひ、この記事で得た知識を活かし、グローバル市場でのビジネスチャンスを掴んでください。

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