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作業計画の最適化(クリティカルパス法CPM活用)

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序章:施工現場における作業計画の重要性

公共交通業界の施工・設置・切替作業は、限られた時間とリソースの中で実施される極めて制約の厳しい業務です。特に鉄道においては、夜間の終電から初電までの短時間に作業を完遂しなければならず、一つの遅延や判断ミスが翌日の運行ダイヤ全体に影響を及ぼす可能性があります。このような環境では、単なる「作業予定表」ではなく、全体工程を俯瞰し、重要な作業の連鎖や遅延リスクを把握したうえで管理することが不可欠です。そのために有効な手法が、クリティカルパス法(CPM)を用いた作業計画の最適化です。

多くの現場では、担当者ごとに部分最適な計画が作成され、全体最適につながらないという課題が見られます。例えば、信号設備工事と電力工事、通信設備工事が同じ夜間作業時間に重複して計画されると、現場での物理的な作業スペースや安全管理に大きな負担がかかります。管理部門が机上で組んだ計画と、現場の実行可能性の間に断絶が生じやすいのはこのためです。計画立案の段階から「どの作業が全体のボトルネックになるのか」「どの順序で進めると余裕が生まれるのか」を明確にしなければ、現場の負担は増大し、事故やトラブルの温床となりかねません。

また、施工現場の作業員や若手技術者は、自分が担当する作業の背景や全体計画における位置付けを理解できていない場合が少なくありません。その結果、「なぜこの順序で作業を行うのか」「なぜこの時間内で完了させる必要があるのか」といった意図を共有できず、モチベーションや判断力の低下につながります。クリティカルパス法を活用することで、全体工程の中で自分の作業がどのように影響するかを可視化でき、現場の理解と協力を得やすくなります。これは教育・育成の観点からも重要であり、単なる作業指示ではなく、組織全体での最適化思考を養うきっかけとなります。

さらに、公共交通事業者にとって計画の最適化はコスト面でも大きな意味を持ちます。作業が遅延すれば夜間延長費用や追加の人員配置が必要になり、工事費用は膨らみます。逆に、計画を適切に組み立てれば、限られた夜間作業時間内で複数の工種を効率よく進めることが可能となり、工事全体の短縮化やコスト圧縮につながります。経営層にとっても、施工計画の最適化は単なる現場の効率化ではなく、組織全体の収益性や顧客サービス水準に直結する経営課題なのです。

本記事では、クリティカルパス法(CPM)の基本概念を振り返りつつ、公共交通業界特有の制約条件を踏まえた活用方法、現場と管理部門の連携手法、教育への応用、さらには経営資源の最適化にどうつなげるかを段階的に解説していきます。序章として強調したいのは、「作業計画は単なるスケジュール管理ではなく、現場安全・運行安定・コスト削減を同時に実現する組織戦略である」という視点です。管理職や経営層はもちろん、若手技術者もその意義を理解し、共通の言語としてCPMを活用できることが、持続的な施工体制の基盤となります。

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振り返りワーク

学びを自分の言葉で整理し、現場と管理の橋渡しができるかを確認していただきます。ここでのアウトプットは業務設計や社内教育の土台になります。ご自身の職場・担当案件に当てはめて考え、次回の計画づくりや勉強会運営にすぐ活かせる形で振り返っていただけます。

Q1:CPMのクリティカルパス上の作業が1時間遅れると、全体工期に影響が及ぶと理解していますか?

  • Yes
  • No

Q2:次のうち、CPMの説明として誤りはどれだと考えますか?

  • A. 依存関係と所要時間から最長経路を特定し、全体工期を把握します。
  • B. すべての作業には同一の余裕(フロート)が必ず存在します。
  • C. クリティカルパス上の作業遅延は工期遅延に直結します。
  • D. 安全確認や切替試験もアクティビティとして計画に含めます。

Q3:夜間3.5時間の作業枠で信号切替と電力停電作業が競合しそうです。より妥当な対応はどれだと考えますか?

  • A. 現場判断に任せて当日調整します。
  • B. CPM上のクリティカル側を優先し、他方はフロート内で前後調整します。
  • C. どちらも半分だけ実施し、翌日に残りを回します。

Q4:関係部門への共有文として最も適切だと思うものをお選びください

  • A. 「信号班を最優先にしてください。電力は状況次第でお願いします。」
  • B. 「本計画のクリティカルパスは『停電→切替試験→復旧確認』です。停電開始が10分遅れると工期遅延となるため、資機材搬入を前倒しで支援いただけますと助かります。」
  • C. 「各班で工夫して進めてください。全体は後で合わせます。」

Q5:CPM作成の一般的な流れとして適切だと考える順序を並び替えてください

  • A. 依存関係の整理(先行・並行の特定)
  • B. クリティカルパス抽出とフロート算出
  • C. 作業分解(WBS)
  • D. 所要時間の見積もり(安全確認・入退場含む)

Q6:ご自身の現場または直近案件で、フロートを活用してリソース再配置を行える箇所を一つ挙げ、その判断根拠(依存関係・所要時間・安全手順)を100~150字で整理してみてください。

  • 例:どの作業をどれだけ前後させるか/誰をどこに再配置するか/安全確認手順に与える影響は何か、の観点で記述します。

Q7:後輩にCPMの要点を20分で教えるときのミニ講義構成(3スライド)を設計してみてください。各スライドの題名と要点(2行程度)を書き出していただけますか。

  • 例:スライド1「CPMとは」/スライド2「現場制約への落とし込み」/スライド3「差異管理と修正の流れ」

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