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成果物ベースで要件を洗い出す手法(成果物分解)
- 技術者研修
目次
はじめに:成果物ベースで要件を考える意味
要件定義を行う際に「やるべき作業」を出していくのではなく、「最終的に残すべき成果物」から逆算して整理する手法を「成果物分解」と呼びます。公共交通業界では、信号装置や運行管理システムなど多くの部門や専門家が関わるため、要件が抽象的なまま進むと現場と管理部門の間に断絶が生じやすく、後工程で仕様の食い違いや手戻りが発生するケースが少なくありません。そのような失敗を避けるために、成果物を明確に定義し、それを小さな単位に分解することで、必要な要件を漏れなく洗い出すことができます。
例えば「新型ホームドアの導入」というプロジェクトでは、単に「設置する」という作業を思い浮かべがちですが、実際には「設計図面」「施工計画書」「現場試験記録」「運用マニュアル」などの成果物が必要になります。これらを事前にリストアップすることで、どの部門が関与し、どの要件を満たす必要があるかを具体的に明らかにできるのです。成果物を起点に考えることは、現場技術者にとって「何を作れば良いか」を明確にし、管理部門にとっては「何が残されるべきか」を確認する共通言語になります。
また、成果物分解は教育の観点からも有効です。初学者にとって「作業の羅列」はイメージしにくいものですが、「成果物の姿」を見れば自分が将来関わる具体的な仕事を理解しやすくなります。さらに、経験を積んだ技術者にとっても、成果物と要件をつなぐ視点を再確認することで、後輩指導や部門間調整の場で活用できる新しい気づきを得られます。つまり成果物分解は、単なる技術的手法に留まらず、プロジェクトを円滑に進めるための「共通の地図」として機能するのです。
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