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現場フィードバックを受け取るインシデント管理手法
- 技術者研修
1. インシデント管理と現場フィードバックの重要性
インシデント管理とは、運行や設備の異常、ヒヤリハットといった現場で発生する出来事を正確に把握し、組織として対応・改善につなげる仕組みです。公共交通業界では、一つの小さな異常が運行全体や利用者の安全に大きな影響を与える可能性があるため、単なる「報告作業」ではなく「改善の起点」として捉えることが重要です。
現場フィードバックの役割は大きく分けて二つあります。第一に、管理部門が机上で把握できない現場のリアルな状況を共有すること。例えば、信号設備の一時的な誤動作やホームドアの動作遅延など、運用中にしか分からない現象を迅速に伝えることが求められます。第二に、再発防止や効率化の糸口となる改善情報を提供することです。現場の技術者は日常的に設備や乗務員、利用者と接しているため、改善策のヒントを最も多く持っています。
しかし実際には「報告しても改善されない」「忙しくて記録が後回しになる」といった声も多く、フィードバックが形骸化するリスクがあります。これを防ぐためには、報告を受ける管理部門が明確な対応フローを示し、現場に「自分たちの声が反映されている」という実感を持たせることが不可欠です。また、技術導入や業務改善のプロセスを進める上では、フィードバックがSTEP8「運用・改善」のスタートラインであることを現場が理解することが大切です。
初学者や若手社員にとって、インシデント管理は「上に報告する義務」と見えがちですが、実務的には「組織全体の改善を動かす最初のスイッチ」です。単なる情報提供にとどまらず、自らの観察・判断・記録が安全性や効率性の向上につながることを意識することで、日々の業務における意欲や責任感も高まります。これが、現場と管理部門の断絶を埋める第一歩となります。
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