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顧客提供価値(CVP)起点で課題を再定義するプロセス

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はじめに:顧客提供価値(CVP)起点の重要性

公共交通業界における技術導入や業務改善の場面では、「現場の課題」と「経営の方針」が必ずしも一致しないことが少なくありません。現場では日々のトラブル対応や保守効率の改善が主な関心事となりますが、管理職や経営層が注目するのは顧客満足度や収益性の向上です。この断絶が解消されない限り、技術導入の効果は限定的になり、現場での努力が顧客に十分伝わらないという問題が起きてしまいます。

そこで重要になるのが「顧客提供価値(Customer Value Proposition:CVP)」という概念です。CVPとは、組織が顧客に提供できる価値を明確化し、それを軸に意思決定を行うための視点を指します。公共交通における顧客価値とは、例えば「時間通りに到着できる」「安全に移動できる」「混雑を回避できる」「快適に乗車できる」といった要素に集約されます。これらは一見抽象的ですが、現場業務の一つひとつに直結しており、技術導入の成否を左右する重要な指標となります。

従来の課題認識では、「故障が多い」「保守に時間がかかる」「人員が不足している」といった内向きの課題が中心でした。しかしCVP起点で課題を見直すと、「顧客にとって安全性が損なわれる」「遅延リスクが増える」「利用者に不便を与える」といった形で再定義されます。この変換を行うことで、経営層にも現場課題の重要性が伝わりやすくなり、部門横断的な資源投入の判断が得やすくなるのです。

本記事は、技術導入プロセスのSTEP1「課題認識・ニーズ抽出」を応用的に学ぶための内容です。特に、管理職や経営層向けの意思決定に直結する「課題の再定義」に焦点を当てています。同時に、若手技術者が現場の課題をどのように顧客価値の観点に結び付けられるかを理解できるよう、具体的な手法や事例を交えて解説していきます。したがって、初学者が読んでも理解しやすく、ベテランにとっても新たな気づきが得られる構成としています。

記事全体を通じて、以下の観点を重視します。第一に「現場視点」と「顧客価値視点」を接続すること。第二に、課題を再定義するプロセスを部門横断で活用できる実務フレームとして整理すること。第三に、この考え方を教育や研修に取り入れ、組織全体の改善力を高めることです。本章を出発点に、CVPを基盤とした課題認識の重要性を体系的に学んでいきましょう。

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