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ヒアリング結果を図解するためのロジックツリー技法

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1. ロジックツリーとは何か:課題構造を「見える化」する技法

ロジックツリーとは、ある課題を「なぜ(Why)」「どのように(How)」「何を(What)」といった論理的な関係に基づいて枝分かれさせ、階層的に整理する手法です。ビジネスコンサルティングの現場で生まれた思考技法ですが、公共交通業界のように課題が複雑に絡み合う環境では、特に有効なツールとなります。口頭でのヒアリングだけでは見えにくい構造的な課題関係を「図で表す」ことで、関係者間の理解を深め、検討を次の段階へ進めることができます。

鉄道やバスなどの事業では、「現場の困りごと」と「経営や企画部門が求める改善方向」がずれることがよくあります。例えば、「ホームドアの故障対応が大変」という声があったとしても、それを「保守負担」「機器設計」「在庫管理」「ベンダー対応」などに分解して考えなければ、根本的な対策にはつながりません。ロジックツリーは、こうした要素を体系的に整理し、誰が見ても納得できる形にするための手段です。

また、ロジックツリーは単なる「図表」ではなく、「思考の過程」を可視化することが重要です。多くの技術者は経験に基づいて課題を感覚的に理解していますが、それを他者と共有する際には、理由や背景を論理的に説明する必要があります。ロジックツリーを活用すれば、「なぜそう考えたのか」「どの視点から整理したのか」を明確にでき、議論の再現性を高めることができます。

さらに、この手法は「課題発見」だけでなく「合意形成」にも役立ちます。現場と管理部門、技術者と営業、鉄道会社とメーカーなど、立場や専門性の異なる関係者が共通認識を持つための“翻訳装置”として機能するのです。特に公共交通では、一つの決定が多数の部門やステークホルダーに影響を及ぼすため、図で論理を示すことが信頼構築にもつながります。

ロジックツリーを作成する際に意識すべきことは、「何を整理したいのか」を明確にすることです。たとえば、目的が「課題の原因を探る」場合と「解決策の選択肢を整理する」場合とでは、ツリーの構成がまったく異なります。前者はWhy型、後者はHow型やWhat型のツリーになります。つまり、ロジックツリーは“汎用ツール”ではなく、“目的特化型のフレームワーク”として使い分けることが重要なのです。

公共交通業界では、課題が「安全」「コスト」「老朽化」「人材」「制度」など多方面に及ぶため、単一視点では全体を捉えきれません。ロジックツリーを用いれば、それらの要素を「構造化」して俯瞰できるため、議論が感情的・断片的になることを防ぎ、合理的な意思決定につなげることができます。現場技術者にとっても、自分の発言を「構造化して説明できる力」は、技術職からマネジメント層へ成長するための基礎スキルになります。

つまり、ロジックツリーとは「考えを整理する技術」であり、「他者と共有する技術」でもあります。今後、設備更新や新技術導入を進める際には、この思考法をチーム全体で使えるようにしておくことが、プロジェクト成功の鍵になります。

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