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ベンダーインタビューの設計と評価基準作成法
- 技術者研修
1. なぜ「ベンダーインタビュー設計」が重要なのか
新しい技術や製品を導入する際、最も多くの情報を持っているのはベンダー(メーカー・サプライヤー)です。しかし、彼らから提供される情報を鵜呑みにしてしまうと、現場で使えない仕様や、過剰な機能を抱えたシステムを選定してしまうリスクがあります。特に公共交通のような安全性・継続性が求められる分野では、単なる商品説明ではなく「その技術を自社の運用条件で使いこなせるか」を見極める力が欠かせません。
そのために必要なのが、単発的な打合せではなく「設計されたベンダーインタビュー」です。ここで言う設計とは、単に質問を並べることではなく、①目的の明確化、②質問の構造化、③評価軸との接続を意図的に組み込むことを指します。つまり、インタビューそのものを“調査の一工程”として位置づけ、組織的に再利用できる成果物を残す仕組みにすることがポイントです。
多くの現場では、カタログや展示会、営業担当者からの説明で「だいたい理解した」と結論づけてしまいがちです。しかし、その段階では製品の制御仕様・通信要件・設置条件といった、導入時に致命的となる制約が抜け落ちています。ベンダーインタビューを設計的に行うことで、こうした「後戻りコスト」を削減し、技術選定の初期段階から精度を高めることができます。
また、インタビューを“聴取の場”ではなく“検証の場”と位置づける発想も重要です。現場担当者が抱える課題や想定運用をもとに、ベンダー側の技術思想や開発経緯を深掘りすることで、単なる比較ではなく「適合性評価」の材料を得られます。特に近年は、製品のサイバーセキュリティ対応や通信プロトコルのオープン化など、ベンダー依存度を下げる判断が求められており、技術的中立性を確保する意味でも、体系的なインタビュー設計は欠かせません。
さらに、組織全体でこのプロセスを共有できれば、技術調査の属人化を防ぐ効果もあります。ある担当者が離任しても、どのような質問を行い、どのように評価したのかが記録として残るため、次回の調査や更新プロジェクトに継承できます。ベンダーインタビューは、技術調査だけでなく、組織的な知見蓄積の起点でもあるのです。
本章では、そのような「設計的インタビュー」の考え方を整理し、次章以降で実際の準備・設計・評価基準の作成手順を具体的に解説していきます。最終的には、インタビューの結果を定量的に比較し、誰が見ても同じ判断を導ける状態を目指します。
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