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開発・設計フェーズにおける工程管理の実践手法
- 技術者研修
1. 開発・設計フェーズにおける工程管理の重要性
開発・設計フェーズは、技術導入や設備更新の中核を担う段階です。この段階での判断や工程設計は、後工程(調達・施工・運用)の品質・コスト・納期に直結します。したがって、単にスケジュールを守るだけでなく、「目的を明確にした進行管理」と「他部門との連携を前提とした調整力」が求められます。特に公共交通業界では、設計と現場、発注者と施工者の間に情報断絶が起きやすく、図面や仕様変更の伝達が遅れることで工程全体が停滞するケースも少なくありません。
工程管理とは、本来「計画通りに進める」ことではなく、「進行を観測し、逸脱を早期に検知して是正する」ことにあります。したがって、担当者は自らのタスクを単なる日程管理ではなく、「品質・安全・コストをバランスさせるマネジメント行為」として捉える必要があります。特に鉄道や道路といった社会インフラ領域では、一度の遅延や設計ミスが長期的な影響を及ぼすため、各工程での記録・承認・レビューの積み上げが極めて重要です。
また、開発・設計工程の特性として、成果物が「目に見えない」期間が長い点が挙げられます。施工現場とは異なり、進捗を感覚的に把握することが難しいため、可視化と情報共有の仕組みが欠かせません。たとえば、WBS(作業分解構造)によるマイルストーン設定や、進捗率・課題リストの定期更新を通じて、プロジェクト全体の健康状態を定量的に管理することが求められます。
さらに、現場・設計・調達・管理といった複数部門の連携が必要な開発フェーズでは、「誰が・いつ・どの情報を更新するか」の定義づけが鍵となります。工程管理を一担当者の仕事として閉じず、部門横断的な責任構造(レビュー会議・設計審査・進捗会議)を意識することで、属人化や情報滞留を防止できます。この考え方は、若手技術者にとっても「自分の設計がどの工程で活かされ、次工程にどう影響するか」を理解する教育的な観点として有効です。
つまり、開発・設計フェーズにおける工程管理は、「図面を描く業務」ではなく、「全体最適を実現するための設計プロジェクト運営」として捉えるべき段階です。スケジュール管理・リスク把握・変更管理・レビュー運用といった複数の視点を有機的に結びつけ、関係者が同じ認識で動ける体制を作ることこそが、実践的な工程管理の出発点と言えます。
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