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バリューチェーン分析を使った課題発見アプローチ
- 技術者研修

1. バリューチェーン分析とは何か:現場改善に活かすための視点転換
バリューチェーン分析とは、企業活動を「価値を生み出す一連のプロセス」として分解し、どの工程で付加価値が生まれ、どの工程でロスが生じているかを明らかにする手法です。もともとは経営戦略論(マイケル・ポーターによる提唱)に由来しますが、公共交通の現場では、単なる理論ではなく「改善と投資判断をつなぐ実務ツール」として応用できます。
たとえば鉄道事業においては、運行・保守・設計・調達・営業・管理といった活動が個別最適で動きがちです。しかし、利用者から見ればそれらは一体の「サービス提供プロセス」であり、どこか一箇所の不整合が全体価値を下げてしまいます。信号設備更新や通信システム導入といった技術プロジェクトでも、設計者の判断だけでなく、現場保守、運行管理、経営層の視点が連動しなければ真の価値創出には至りません。
バリューチェーン分析を活用する目的は、こうした縦割りの構造を解きほぐし、「どの活動が価値を生み、どこに課題が潜むのか」を可視化することにあります。現場担当者であっても、経営の観点から業務を見直す思考を持つことで、課題発見の精度が飛躍的に高まります。
重要なのは、「コスト削減のための分析」ではなく、「価値を最大化するための分析」として使うことです。例えば、信号設備の更新において、単に修繕費を抑えることを目的にするのではなく、障害対応の迅速化、検査周期の最適化、データ連携による予防保全化など、全体価値を高める方向で議論を進めることが求められます。
このようにバリューチェーン分析は、現場の“業務の流れ”を俯瞰することから始まります。現場技術者が行っている点検や更新作業も、運行安定性や顧客満足という上位価値にどう貢献しているかを意識することが大切です。経営層の視点を現場に翻訳し、現場の気づきを経営判断に戻す。その循環をつくる思考の軸として、バリューチェーン分析は非常に有効です。
本記事では、公共交通の技術現場でこの分析手法をどう実務に取り入れるかを具体的に解説していきます。特に「現場で得た情報を、どのように経営課題や投資テーマへ再構成するか」「分析結果をどのように部門間で共有し、改善プロセスへ落とし込むか」という点に焦点を当て、理論ではなく実践に根ざした内容を扱います。
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