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離着岸/接岸支援システム(BAS)メーカー5選 | 導入チェックリスト付

株式会社MR.Nexus(エムアールネクサス)

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製品特性

               
安全対策
               
自動化・効率化
               
顧客満足度向上
               
保守性・信頼性向上
               
人手不足対策
               
法令遵守・SDGs

船舶の安全かつ効率的な離着岸を支援する「離着岸/接岸支援システム(BAS:Berthing Aid System)」を提供する主要メーカーをご紹介します。近年、港湾やフェリーターミナルでは、操船作業の省力化・高精度化に対するニーズが高まっており、BASはその実現を支える重要なシステムとして注目を集めています。

本記事は、製品導入を検討する事業者の皆さまが各社の特長を直感的に比較・理解できるよう、簡潔かつ実務的な情報に整理しています。製品機能や導入事例、対応インフラなどをコンパクトにまとめた本構成が、導入可否の初期判断や技術選定の出発点としてお役立ていただければ幸いです。

※本記事では、船舶が港湾で安全かつ効率的に接岸・離岸を行うための技術を「離着岸/接岸支援システム(BAS:Berthing Aid System)」と総称します。国際的にはBASの略称が用いられていますが、日本国内では「接岸支援装置」や「操船支援システム」など複数の呼称が混在しているため、本記事では両者を統合した表現とします。

 

離着岸/接岸支援システム(BAS)メーカー一覧表

メーカー名 国・地域 主な製品 ターゲット市場 技術の強み 採用事例 リンク
川崎重工業株式会社
Kawasaki Heavy Industries, Ltd.
兵庫県神戸市 安全離着岸支援システム 国内港湾/内航・フェリー事業者 自動操船との連携による操船アシスト 川崎汽船、川崎近海汽船 川崎重工業
古野電気株式会社
Furuno Electric Co., Ltd.
兵庫県西宮市 接岸支援システム(LiDAR式) フェリー・RORO・内航船 LiDARとモニタ統合による高精度距離測定 商船三井フェリー、フェリーさんふらわあ 古野電気
Straatman BV
Straatman Berthing Systems
オランダ・ドルトレヒト Berthing Aid System(BAS) 国際港湾・石油・LNGターミナル レーザー+LED表示+データ記録装置 Rotterdam Port, Ras Laffan Port Streetman
Glen Engineering BV
Glen Engineering
オランダ・スヘルトーヘンボス IntMoor™ Berthing Approach System オフショア支援港、液化燃料施設 アラーム連動、マルチセンサ統合 Port of Sohar, Freeport Bahamas Glen Engineering
Hitech Elastomers Ltd.
Hitech Elastomers Ltd.
インド・アーメダバード SCADAベース接岸支援システム 中東・南アジアの港湾 SCADA+レーザー+大型LEDによる統合制御 Kuwait Port Authority Hitech Elastomers

 

離着岸/接岸支援システム(BAS)の日本国内メーカー2選

川崎重工業株式会社(Kawasaki Heavy Industries, Ltd.)

会社概要:
兵庫県神戸市に本社を構え、船舶用推進機・DPS(Dynamic Positioning System)・係船機など船舶エンジニアリングを一貫して手がける国内唯一の総合メーカーです。

おすすめポイント:
「安全離着岸支援システム」は、実船を用いた港湾内での実証試験に成功し、港内操船から離着岸、係船作業・管理まで一貫支援できる点が最大の特長です。推進機と係船機を統合制御し、AIベースの船体運動予測で自動操船・自動着岸を実現。船員負担軽減と操船スキルに依存しない安全性向上が見込まれています。

こんな事業者向け:
大型内航船・フェリーを運航し、船員不足や潮汐変動などによる係船管理を効率化したい事業者に適しています。港湾自治体や事業者による自動操船・自律運航へのステップアップにも最適です。

古野電気株式会社(Furuno Electric Co., Ltd.)

会社概要:
兵庫県西宮市に本社を持ち、海洋電子機器の開発・製造で世界的に知られるメーカーです。レーダーやソナー技術を活かした船舶の航行支援製品群を多数展開しています。

おすすめポイント:
LiDARとカメラ映像を重畳表示する「離着岸支援システム」は、距離・角度・将来航跡などをリアルタイムで視覚的に提供。商船三井・フェリーさんふらわあと共同で大型フェリーに搭載し、2022年9月から実船トライアルを実施。また、日本海事協会のイノベーションエンドースメント認証を取得し、技術的信頼性も担保されています。

こんな事業者向け:
フェリー・RORO船・内航船など、旅客・車両を積載する大型商船事業者に最適。ヒューマンエラーを削減し、安全・正確な接岸作業を求める事業者に向いています。

 

離着岸/接岸支援システム(BAS)の海外メーカー3選

Straatman BV(Straatman Berthing Systems, オランダ)

会社概要:
1902年創業、オランダ・ドルトレヒト拠点のStraatmanは、ムーアリングやバーベッティング機器を手がけ、レーザー&LED技術を基盤とするBAS製品を提供しています。全工程を自社工場で設計・製造し、高精度・信頼性を重視したソリューションを世界100以上の港に納入しています 。

おすすめポイント:
レーザーでボウとアフト間の距離を±2cm精度で測定し、大型LED表示器で接近速度・角度・風・波浪情報をリアルタイム表示。危険区域対応(Zone 1/2)モデルもラインナップし、全方位的な視認性と環境耐性が強みです。

こんな事業者向け:
国家規模の国際コンテナ埠頭、LNG/石油ターミナルなど、高精度・危険環境下での接岸安全が求められる施設に最適です。

Glen Engineering BV(オランダ・スヘルトーヘンボス)

会社概要:
Glen Engineeringはレーザー&LED技術によるIntMoor™ Berthing Approach Systemを提供。中国・重慶に子会社を持ち、Quick Release Hooks、Mooring Load Monitoringなどとセットで提供しています。

おすすめポイント:
レーザー測定で接近速度・距離・角度を取得し、LED表示・アラームと連動。接岸後はフェンダー反応やドリフトなどをモニタリングし、自動記録・報告機能付き。Zone 1防爆対応、RS485/MODBUS接続など産業用途に堅牢です。

こんな事業者向け:
コンテナターミナル、RoRo・フェリー埠頭、石油・LNG関連施設など、離着岸管理を自動化し、運用データを活用した安全管理を向上させたい事業者に適しています。

Hi‑Tech Elastomers Ltd.(インド・グジャラート州アーメダバード)

会社概要:
1992年創業のISO 9001認証メーカーで、マリン/オフショア向けフェンダーやブイ、Quick Release Hookに加え、Berthing Aid Systemも提供しています。LNG端末向け大型フェンダー納入実績多数。

おすすめポイント:
SCADA/PLC制御、レーザー+大型LED表示器による総合制御が特徴。港湾・ターミナルの中央制御室との連携が容易で、設置・運用から保守まで一貫対応が魅力。

こんな事業者向け:
中東・南アジアの港湾事業者、オフショア基地、LNG/石油ターミナルで、集中監視・動線統制・保守性重視の環境に適応しやすい構成を求める事業者に最適です。

 

まとめ:離着岸/接岸支援システム(BAS)のメーカー

本記事では、船舶の安全な離着岸を支援する「離着岸/接岸支援システム(BAS)」を製造・提供している国内外の代表的なメーカー5社を紹介しました。それぞれの企業が異なる技術的アプローチや市場戦略を展開しており、導入を検討する事業者にとって比較検討の観点が明確に分かれる内容となっています。

日本国内メーカーとして紹介した川崎重工業と古野電気は、港湾内での実運用に根ざした開発体制が強みです。川崎重工業は、推進装置や係船機との統合を含めた操船支援全体を設計範囲とし、自動操船や省人化を見据えたシステム構築を目指す大規模事業者に適しています。一方、古野電気はLiDARと映像を組み合わせた視覚的・直感的な支援が特長で、フェリーやRORO船などの定期航路を運航する民間事業者に向いており、特に船員の接岸作業負担を軽減したい現場に有効です。

海外メーカーでは、Straatmanが高精度レーザーと大型LED表示を活用したシステムで知られ、特にLNG・石油ターミナルや国家規模の大型港湾における危険区域対応型の構成が評価されています。Glen Engineeringは接岸支援だけでなく、係船荷重監視や自動記録機能も併せ持ち、フェリーやオフショア施設向けに幅広い応用が可能です。Hitech Elastomersはインド・中東圏を中心に、SCADA連携や集中管理機能に特化した構成が特徴で、複数岸壁を一元的に制御・保守したい事業者に向いています。

選定にあたっては、①支援の対象が操船かモニタリングか、②岸壁設置型か船上設置型か、③SCADAなど他システムとの連携可否、④Zone 1/2の危険区域対応、⑤保守性・サポート体制、といった観点から自社の導入目的に合致した製品を選ぶことが重要です。たとえば、港湾のスマート化や無人接岸を志向する事業者であれば川崎重工業、日常的なフェリー運航における安全性向上を図りたいなら古野電気、国際的なターミナルで高度な安全管理を求める場合はStraatmanやGlen Engineeringといった具合に、それぞれの強みが異なります。

今後の港湾運営において、BASの導入は操船安全だけでなく、デジタル化・省力化の第一歩となる重要なインフラです。本記事が、各社製品の特徴と導入適性を整理する一助となり、事業者が自社の目的と条件に合った選定を進める上での出発点となれば幸いです。

 

導入前チェックリスト|離着岸/接岸支援システム(BAS)

本チェックリストは、離着岸/接岸支援システム(BAS)の導入・更新を検討する際に、事業者側で確認すべき技術的・制度的観点を整理したものです。構造条件や機器の整合性から、コスト・保守体制、制度対応までを網羅的に点検できるよう設計しています。

設置・構造条件

  • 岸壁構造(突堤式/岸壁式)に適合するセンサ設置スペースがあるか
  • 風雨・塩害・潮位差に耐えうる屋外筐体仕様となっているか
  • 表示装置の視認距離・角度が接岸ラインに対して適切か
  • 既設の照明塔・防舷材等と物理的干渉がないか

対象システム・機器との整合性

  • 船舶側に受信機・表示装置を搭載する場合、電源・通信インタフェースに対応できるか
  • 操船支援システム(DPS等)や係船機との連携実績があるか
  • 既設CCTV/航行センサ/フェンダー等と統合管理が可能か
  • 港湾全体のインフラ監視システムとの接続・連携仕様が整っているか

運用・維持管理

  • 現場操作員が直感的に使えるUI・表示仕様か
  • 定期点検・清掃・再キャリブレーション等の保守業務が現場で対応可能か
  • 24時間365日稼働を前提とした冗長設計や障害時フェイルセーフが設けられているか
  • ファームウェア更新やログ取得が遠隔・非停止状態で可能か

コスト・調達条件

  • 初期導入費(機器・工事費含む)と年間保守費が明示されているか
  • 複数岸壁への同時展開に対するボリュームディスカウントがあるか
  • 助成制度(港湾機能強化補助金など)の対象機器として登録されているか
  • リース・保守契約などの調達形態が選択可能か

導入実績・ベンダー体制

  • 国内の港湾・フェリー・内航事業者での導入実績があるか
  • 危険区域対応(Zone1/2)や海外ターミナルでの適用実績があるか
  • 設計・施工・保守を一貫対応可能な体制が整っているか
  • 緊急時の現場駆けつけや部品供給体制が構築されているか

セキュリティ・ネットワーク接続

  • 通信インタフェース(RS485、MODBUS、TCP/IP等)と自社ネットワークとの整合性
  • 接岸データのログ保存・暗号化・改ざん検知などのセキュリティ対応があるか
  • 遠隔保守・監視を行う場合の認証方式や通信プロトコルが明確か
  • 閉域ネットワークやDMZ構成での導入実績があるか

法令・制度対応

  • 港湾法、船舶安全法、電波法など関連制度への適合証明があるか
  • 日本海事協会(ClassNK)などの認証・エンドースメントを取得しているか
  • 危険物積載施設や高圧ガス施設における防爆対応要件を満たしているか
  • 自治体の技術基準や港湾計画との整合性が確認されているか

このチェックリストは、現場条件・連携機器・制度面を踏まえて、実務担当者が導入可否を判断するための基盤資料としてご活用いただけます。必要に応じてベンダーとの仕様調整や追加ヒアリングを実施し、段階的な導入を検討することを推奨します。

会社名株式会社MR.Nexus(エムアールネクサス)

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