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AI信号制御装置(交差点用)メーカー6選 | 導入チェックリスト、導入プロセス解説付

株式会社MR.Nexus(エムアールネクサス)

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製品特性

               
安全対策
               
自動化・効率化
               
顧客満足度向上
               
保守性・信頼性向上
               
人手不足対策
               
法令遵守・SDGs

AI信号制御装置(交差点用)は、交通量や車種、歩行者の流れをリアルタイムで検知・学習し、信号の現示を最適化することで、渋滞の緩和や交通安全の向上を図る次世代インフラです。従来の固定周期型制御とは異なり、センシング技術やAIアルゴリズムを活用することで、時間帯や状況に応じた柔軟な信号制御が可能となります。

本記事では、AI信号制御装置(交差点用)を製造・提供している国内外の主要メーカーを紹介し、それぞれの特長や技術アプローチをわかりやすく整理しています。交差点制御の高度化やスマートシティの構築、自動運転インフラとの接続を見据える自治体・交通管理者にとって、各社の違いを比較・検討するうえでの参考資料としてご活用ください。展示会カタログのようにシンプルかつ実務的な観点から、要点を簡潔にまとめています。

 

AI信号制御装置(交差点用)のメーカー一覧表

メーカー名 国・地域 主な製品 ターゲット市場 技術の強み 採用事例 リンク
京三製作所
Kyosan Electric Mfg. Co., Ltd.
神奈川県川崎市 画像式車両用感知器+AI信号制御 都市部交差点、右折車検知 ディープラーニングによる右折判別精度の高さ 各地の信号機更新案件(実証含む) 京三製作所
NTTデータ
NTT DATA Corporation
東京都江東区 AI渋滞予測+信号制御プラットフォーム スマートシティ、交通管理センター 大規模信号ネットワークの統合制御 中国・貴陽市、貴州省での実証導入 NTTデータ
住友電気工業
Sumitomo Electric Industries, Ltd.
大阪府大阪市 AI型交差点信号制御(NEDO実証) 地方都市の交通制御、渋滞緩和 少ないセンサでも高精度予測 岡山県警・NEDO実証(2021年度) 住友電気工業
SWARCO
SWARCO AG
オーストリア・ヴァッタンス AI-based Traffic Management 欧州・中東の大都市交差点 信号・標識・センサ一体型統合制御 ドイツ、ノルウェーなどで導入 SWARCO
NoTraffic
NoTraffic Inc.
アメリカ・カリフォルニア州 AI Smart Intersection Platform 北米の郊外交差点、自治体交通局 センサー設置だけで即時アップグレード メリーランド州アナポリス市 NoTraffic
VivaCity Labs
VivaCity Ltd.
イギリス・ロンドン Sensor for Traffic Control 英国都市部の交通最適化、歩行者優先政策 AIカメラによる交通状況の多モーダル検出 オックスフォードシャー郡など VivaCity

 

AI信号制御装置(交差点用)の日本国内メーカー3選

京三製作所(Kyosan Electric Mfg. Co., Ltd.)

会社概要:神奈川県川崎市に本社を構え、画像式車両感知器や交通信号制御機器を展開する専門メーカーです。1931年の信号機納入以来、交通インフラを支えてきた実績があります。

おすすめポイント:最大30m区間をカバーする画像式感知器にAI(ディープラーニング)を搭載し、車種や右折車両を高精度で検知。右折矢印の青時間をリアルタイム最適化し、交差点の混雑緩和・CO₂削減に貢献します。

こんな事業者向け:都市部の複雑な右折レーン制御や、「自律分散型信号制御(ARTEMIS)」導入を検討する自治体・交通管理者に最適です。

NTTデータ(NTT DATA Corporation)

会社概要:東京都江東区に本社を置くIT大手。交通ビッグデータとAIを活用した信号制御システムをスマートシティに提供しています。

おすすめポイント:中国・貴陽市での実証では、約100台の信号機制御により渋滞が平均7%、最大26%緩和。交通処理能力も平均6.7%向上し、実用性が確認されました。

こんな事業者向け:複数交差点を統合管理する交通センターや自治体、スマートシティ構想を加速させたい地方自治体向けです。

住友電気工業(Sumitomo Electric Industries, Ltd.)

会社概要:大阪市に本社を置く大手インフラ企業。NEDOやUTMS協会と協働でAI信号制御技術を開発し、公共交通インフラに強みを持ちます。

おすすめポイント:岡山市内2交差点での実証では、既存の車両検知用センサーを半減しながら、従来と同等の渋滞抑制効果を達成。センサー設置コストの削減と信号最適化を両立しています。

こんな事業者向け:センサー設置負担を抑えたい地方自治体や、低コストで信号制御を導入したい交通事業者に適しています。

 

AI信号制御装置(交差点用)の海外メーカー3選

SWARCO(SWARCO AG)

会社概要:オーストリア・ヴァッタンスに本社を置くITS大手企業。交通信号、道路区画、スマートシティ向けソリューションを80カ国以上に提供し、2022年には売上11億ユーロ、従業員約5,300名規模となっています。

おすすめポイント:「Smart AI CAM」やクラウド連携による交差点信号制御を開発中。AIで交通流予測と信号優先制御を実現し、渋滞削減・環境配慮・交通安全に効果的です。

こんな事業者向け:都市の主要交差点やイベント時の交通制御、スマートシティ化を進める自治体・交通管理者向けです。

NoTraffic(NoTraffic Inc.)

会社概要:米国カリフォルニア州発のAI交差点専用ソリューション企業。エッジ端末とクラウド連携によるリアルタイム信号制御プラットフォーム「AI Mobility Platform」を提供しています。

おすすめポイント:アリゾナ州ツーソンでは80以上の交差点で導入され、ラッシュ時の遅延を最大46%短縮。信号無視の減少や交差点の安全性向上が実証されています。

こんな事業者向け:既存信号機を短時間でスマート化したい自治体、交通局、信号インフラ管理者に適します。

VivaCity Labs(VivaCity Ltd.)

会社概要:英国ロンドン発、AIカメラセンサーによる交通計測・信号制御技術を展開するスタートアップ。マンチェスターやリーズ、バーミンガムなど英国各地で採用実績があります。

おすすめポイント:自転車・歩行者など弱者交通の優先制御に強み。AIで多モーダル交通を識別し、リアルタイムに信号現示を最適化。旅行時間を約23%短縮した試験結果も確認されています。

こんな事業者向け:歩行者・自転車優先政策を進める欧州型都市環境や、公共交通整備を組み合わせたスマート交通施策を検討する自治体におすすめです。

 

まとめ:AI信号制御装置(交差点用)のメーカー

本記事では、AI信号制御装置(交差点用)を提供する国内外の主要メーカー6社――京三製作所、NTTデータ、住友電気工業、SWARCO、NoTraffic、VivaCity Labs――について、その製品概要・技術特性・導入実績を紹介しました。いずれの企業も、従来の定周期制御から脱却し、交通状況に応じてリアルタイムで信号現示を最適化する技術開発に取り組んでいます。

国内メーカーでは、京三製作所が画像式感知器にAIを組み合わせた右折信号制御で先行しており、比較的導入に近い段階にあります。住友電気工業やNTTデータはNEDO実証や海外展開を通じた技術検証を進めており、広域制御やコスト最適化の面で強みを持っています。ただし、いずれも大規模実装に至っている事例は限定的であり、商用化フェーズに入る前段階にあるものも少なくありません。

一方、海外勢ではSWARCOが交通インフラ全体を統合的に制御する製品群を展開しており、信号制御にとどまらない包括的なITSソリューションとして強みを発揮しています。NoTrafficは既存の信号機インフラを短期間でスマート化できる「AI Mobility Platform」を提供しており、スピード感と導入の容易さが際立ちます。VivaCity LabsはAIカメラによる多モーダル検出技術を活かし、自転車・歩行者優先の都市設計にマッチした信号制御を実現しています。

こうした背景を踏まえると、技術的に安定した製品を求める場合は京三製作所やSWARCO、迅速な導入と柔軟な制御を重視する場合はNoTrafficやVivaCity Labsが適しており、研究実証を伴う広域制御に関心のある自治体にはNTTデータや住友電気工業が適しています。特に、日本国内ではまだ研究開発・実証段階の取り組みが多いため、導入にあたっては「商用化レベルにあるか」「自社地域の交通課題に合致しているか」を見極めた上で、ベンダーと共に段階的な導入・評価を行う体制が求められます。

 

導入チェックリスト:AI信号制御装置(交差点用)

設置・構造条件

  • 既設の信号柱や筐体に装置が設置可能か(寸法・重量・耐候性)
  • 現地交差点における電源・通信回線の供給体制が整っているか
  • 検知センサーの視野・死角を補える設計になっているか
  • 道路構造(右折レーン有無、スクランブルなど)との整合性が取れているか

対象システム・機器との整合性

  • 既存の信号制御機との接続方式が対応しているか(I/F確認)
  • ループコイルやカメラなど既存感知器との連携・置換が可能か
  • UTC(中央制御系)との相互通信・最適化が可能か
  • 他システム(交通管制、公共交通優先など)との連携仕様があるか

運用・維持管理

  • AIモデルの学習・再学習に必要なデータ収集が現場で可能か
  • 日常点検・障害監視がリモート対応可能か(クラウド監視等)
  • 部品交換やファームウェア更新が容易な構造か
  • AI制御アルゴリズムの可視化・設定調整のインターフェースが整備されているか

コスト・調達条件

  • 初期導入費用(装置・設置工事・通信設備等)の見積もりが明確か
  • AI運用に係るランニング費用(クラウド利用料・保守契約費)が発生するか
  • 補助金・スマートシティ施策等の適用可能性があるか
  • 地元業者との連携や設置工事の分離発注が可能か

導入実績・ベンダー体制

  • 国内外での実証または本格導入事例があるか(交差点数・都市名)
  • 導入前後の効果指標(渋滞減少率・待ち時間短縮)が確認できるか
  • ベンダーによる導入支援体制(設計・調整・保守)が整っているか
  • 問い合わせ・障害時のサポート窓口が確立しているか

セキュリティ・ネットワーク接続

  • 通信方式(有線/無線/セルラー等)と暗号化仕様が明示されているか
  • AI制御系と外部ネットワークとの境界設計が分離されているか
  • アクセスログ・遠隔操作履歴の監視が可能か
  • 災害時・通信断時にも最低限の信号動作が維持されるフェイルセーフ機構があるか

法令・制度対応

  • 道路交通法、道路法、電波法などの関連法規に準拠しているか
  • 国土交通省や警察庁などの仕様に沿った設計・構造であるか
  • AIアルゴリズムの説明責任・説明可能性に配慮しているか
  • 自治体が発注主体となる際の調達仕様書テンプレートに合致しているか

 

導入・更新プロセス:AI信号制御装置(交差点用)

STEP1:課題認識・ニーズ抽出

  • 信号制御に起因する交通渋滞・交差点事故・歩行者滞留などの現状を整理する
  • 地域住民や交通管理者からの声(混雑・安全性・バリアフリー)を集約する
  • 交通量調査や信号現示履歴などのデータを収集・可視化する
  • 既存の信号制御手法が抱える限界を明確化し、導入目的(例:渋滞緩和)を設定する

STEP2:技術調査・ソリューション探索

  • AI信号制御装置の候補製品(国内外)を調査し、各社の技術仕様を収集する
  • 自地域の道路構造・交通特性に対応できるかを技術的観点で比較検討する
  • 先行自治体・警察署での導入事例やNEDO等の実証成果を確認する
  • 製品選定に必要な調査報告書やRFI(情報提供依頼書)を整理する

STEP3:要件定義・仕様検討

  • 対象交差点の制御方針(感知条件、優先交通、現示パターン)を明文化する
  • センサー配置、AIモデル更新頻度、通信方式などを具体的に設計する
  • UTC連携や交通安全施設との関係(停止線表示、矢印灯など)を整理する
  • 要件定義書・仕様書ドラフトを作成し、関係部署とレビューを行う

STEP4:開発・設計・調達

  • ベンダーによるカスタマイズ設計(筐体仕様、AI制御設定)を依頼・確認する
  • 制御対象交差点の図面・信号配線計画をもとに設計図を作成する
  • 庁内または交通管理者との協議資料を整備し、事前協議に臨む
  • 発注仕様書(競争入札 or 随意契約)を作成し、調達手続きを実施する

STEP5:試験・検証・現場適合性評価

  • 出荷前にAI信号制御装置の動作確認(パターン動作、フェイルセーフ)を実施する
  • 現地に仮設置し、AIによる現示最適化結果を交通量や通過時間と照合する
  • 他システム(交通情報板、中央管制)との通信テストを実施する
  • 警察署立会いによる本設前検証を完了し、設置承認を得る

STEP6:導入決定・契約・スケジュール策定

  • 試験結果を踏まえて、正式導入の意思決定と予算配分を確定する
  • 装置・設置工事・通信回線等を含む包括契約を締結する
  • 交通切替時期を考慮し、警察・地元住民との調整会議を行う
  • 工期、交通規制、停電計画などを盛り込んだ導入スケジュールを確定する

STEP7:施工・設置・切替作業

  • 既存信号機の撤去または併設、感知器・制御装置の取り付けを実施する
  • 電源接続、通信テスト、信号配線の最終接続確認を行う
  • 試験運用期間中のAIモデル挙動と実交通状況を常時監視する
  • 切替当日は交通警察・警備員と連携し、現場立会いで安全な移行を実施する

STEP8:運用開始・フォローアップ・継続改善

  • 導入後1〜3か月間は重点監視期間として、ログ分析と現場確認を継続する
  • AIモデルの学習履歴や再学習頻度、信号現示の変化を定期的にレポート化する
  • 通行者からの意見や交通警察からの指摘をもとに制御条件を再設定する
  • 長期的には複数交差点連携やMaaS連動等への拡張可能性も検討する

 

本記事で紹介した導入チェックリストおよび導入・更新プロセスは、AI信号制御装置(交差点用)の導入を検討する自治体・道路管理者の皆様が、プロジェクトの全体像を正しく把握し、社内外との合意形成を円滑に進めるための実務ガイドとして設計されています。

例えば、チェックリストは「製品比較・技術仕様の精査」「庁内稟議・設計協議」「発注仕様書の作成」など、具体的なフェーズごとの確認資料として活用できます。また、導入プロセスの8ステップは、調査から運用までのタスクや成果物の整理、各ステークホルダーの役割分担を可視化するうえで有効です。

今後Mobility Nexusでは、これらのステップに沿った成果物テンプレート(例:要件定義書、試験計画書、仕様書雛形、設置協議用資料など)の提供も予定しています。導入を進める中で「何から手をつけてよいかわからない」「検討は始めたが社内説明が難しい」といった課題を抱える担当者にとって、本記事が一連の導入プロセスを構造的に進める出発点となることを目指しています。

会社名株式会社MR.Nexus(エムアールネクサス)

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