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乗降確認モニタシステム(鉄道・バス)メーカー5選 | 導入チェックリスト付

株式会社MR.Nexus

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製品特性

               
安全対策
               
自動化
               
環境への配慮
               
保守性向上
               
信頼性向上
               
施工性向上

鉄道やバスにおいて、乗降時の安全確認は運行の根幹を支える重要な業務です。特に混雑時や高齢者・ベビーカーの利用者が多い場合、ドアの閉扉タイミングを誤ると重大な事故につながりかねません。こうした背景から、近年では運転士が車外の様子を的確に把握できる乗降確認モニタシステムの導入が鉄道を中心に進んでいます。

本記事では、この分野の主要メーカーを取り上げ、それぞれの特長・導入実績・技術的アプローチを簡潔に整理しました。特に鉄道分野では、ワンマン運転化やホーム構造の複雑化に対応する重要な機器として位置づけられており、将来的な自動運転化に向けた基盤設備としての導入も視野に入れられています。

一方でバス分野では、「乗降確認モニタシステム」としての明確なカテゴリは少ないものの、周辺監視や乗降データの収集といった関連技術が進展しています。後方確認カメラ、乗降人数カウント、情報案内表示といった要素が連携することで、安全運行や運行効率の向上に寄与しています。

本記事は、製品を検討中の事業者が複数メーカーの特徴を比較しやすくなるよう構成しており、安全性の確保、運転士の負担軽減、そして将来的なシステム拡張性といった観点で、現場に最適な技術を選定する一助となれば幸いです。

※本記事では「乗降確認モニタシステム」と表記していますが、これは分野によって呼び方が異なります。バス業界では「ドア付近確認モニタ」「車内監視モニタ」などと呼ばれることが多く、鉄道業界では「車載ホームモニタ」「ITVモニタ」などの名称で呼ばれるのが一般的です。

 

乗降確認モニタ・関連システムメーカー一覧表

メーカー名 国・地域 主な製品 ターゲット市場 技術の強み 採用事例 リンク
EIZO株式会社
EIZO Corporation
石川県白山市 DuraVision FDF2123W(21.5型高輝度モニター) 都市鉄道、通勤鉄道 高輝度表示(1300cd/m²)、全天候対応、長期保証(最大7年) 東急電鉄
実績ページ
EIZO
池上通信機株式会社
Ikegami Tsushinki Co., Ltd.
東京都大田区 昇降式モニターハウジング、フルHDカメラ(ISD-240HD) 都市鉄道、通勤鉄道 縦型モニターによる広範囲表示、保守性向上の昇降式ハウジング 南海電鉄
リリース
池上通信機
JVCケンウッド・公共産業システム
JVC Kenwood Public & Industrial Systems Corporation
東京都八王子市 LM-W213(高輝度モニター)、TK-HD9801(WDRカメラ) 都市鉄道、通勤鉄道 逆光補正、ネットワーク機能搭載、2画面表示対応 JR北海道
リリース
JVCケンウッド
レシップ株式会社
Lecip Holdings Corporation
岐阜県岐阜市 OBC-VISIONシリーズ(車載情報表示システム) 路線バス フルカラー表示、運賃・停留所案内、広告コンテンツ対応 全国の主要バス事業者 レシップ
クラリオン株式会社
Clarion Co., Ltd.
埼玉県さいたま市 BMS-500S(乗降客数計測)、SurroundEye(全周囲視界支援) 路線バス、送迎バス 画像認識による乗降カウント、映像監視との組合せ 地方バス事業者、福祉輸送 クラリオン

 

乗降確認モニタ・関連システムのメーカー5選

EIZO株式会社

EIZOは、鉄道向けに高輝度・高耐久性を備えたモニターを提供しています。特に「DuraVision FDF2123W」は、1300cd/m²の高輝度表示で、晴天時のホームでも乗降状況を鮮明に確認可能です。東急電鉄での導入実績があり、長期保証や保守サービスも充実しています。
おすすめポイント:高視認性と信頼性を求める鉄道事業者に最適です。
こんな事業者向け:屋外ホームが多く、日照条件が厳しい駅を抱える都市鉄道事業者。

池上通信機株式会社

池上通信機は、フルHDカメラと縦型モニターを組み合わせたITVシステムを展開しています。独自の昇降式モニターハウジングにより、保守作業の効率化と安全性を実現。JR九州やJR西日本などでの採用実績があります。
おすすめポイント:長大編成やカーブホームでの安全確認を重視する事業者に適しています。
こんな事業者向け:列車の両数が長く、カメラの視野確保が難しい構造の駅を多く運用する事業者。

JVCケンウッド・公共産業システム

JVCケンウッドは、「LM-W213」などの高輝度モニターと、逆光補正機能を備えたカメラを組み合わせたITVシステムを提供。地下鉄向けの画質モードや2画面表示機能も搭載し、多様な運用ニーズに対応します。
おすすめポイント:多機能で柔軟なシステムを求める鉄道事業者に適しています。
こんな事業者向け:地下区間やトンネル内の駅が多く、映像の明瞭性を重視する都市高速鉄道事業者。

レシップ株式会社

レシップは、バス向けに「OBC-VISION」シリーズの車載情報表示システムを展開。運賃表示や停留所案内に加え、CMや運行案内など多彩なコンテンツ表示が可能です。地上システムとの連携による拡張性も魅力です。
おすすめポイント:情報提供と運行支援を一体化したシステムを求めるバス事業者に最適です。
こんな事業者向け:都市部を中心に運行し、広告収益や案内強化を図りたいバス事業者。

クラリオン株式会社

クラリオンは、画像処理技術を活用した乗降客カウントシステムを提供。乗降人数の確認範囲を自由に設定でき、ダイヤ編成の効率化に貢献します。また、車両周囲の安全確認を支援する「SurroundEye」システムも展開しています。
おすすめポイント:乗降データの活用や安全運行支援を重視するバス事業者に適しています。
こんな事業者向け:車内外の映像監視と乗降統計を活用して、安全性と経営判断の精度を高めたいバス事業者。

 

【補足】バス業界における乗降確認ニーズの実態

鉄道における「乗降確認モニタ」は、ホームから車内の視認が難しい構造や、カーブホームにおける死角対応など、運転士がドア操作を行う上で映像補完が必須となる状況に対応するために整備されてきました。一方、バス業界では以下の理由により、同様の装置へのニーズが相対的に低い傾向があります。

  • ドアの開閉操作は目視が基本:車体構造的に運転席から乗降口が近く、運転士自身が直接視認できることが多い。
  • 車両ごとの改造コスト:バス1両ごとに映像装置を搭載する必要があり、コスト負担が高くなりやすい。
  • 乗務員の運用負荷とのトレードオフ:システムを増やすほど確認作業が煩雑になる恐れがある。

レシップ株式会社

レシップは車載情報表示装置(運賃表示器や案内ディスプレイ)でバス市場に広く展開していますが、いわゆる「乗降確認専用モニタ」の製品や導入事例は確認されていません。ただし、運転席周辺に設置される後方確認用のバックモニタや映像統合ユニットなどは、類似機能として活用されている可能性があります。

クラリオン株式会社

クラリオンは「SurroundEye」や「乗降人数カウントシステム」といった、周辺監視・データ活用を目的とした製品をバス向けに提供しています。これらは安全運転支援システムや利用状況分析の文脈での導入が主であり、「運転士がドア開閉タイミングを判断するためのモニタ」としての利用実績は見られません。

 

まとめ:乗降確認モニタシステム(鉄道・バス)のメーカー5選

本記事では、鉄道・バス業界における乗降確認モニタおよび関連システムの現状を整理し、主要メーカー5社の製品特性と実績を比較しました。鉄道分野では、ワンマン運転化や自動運転化を見据えた設備強化の一環として、乗降確認モニタが不可欠な存在となりつつあります。特にホーム構造に死角が多い駅や、運転士が乗務中に全車両の状況を即座に把握する必要があるケースでは、映像による補完が極めて有効です。

メーカーごとの特徴を見ると、EIZOは屋外設置に適した高輝度・長寿命モニタを提供し、池上通信機は昇降式ハウジングによる保守性の高さで差別化を図っています。JVCケンウッドは地下鉄などの低照度環境に強い映像処理性能を有し、運用に応じた柔軟なシステム構成が可能です。これに対し、レシップクラリオンは、バス向けの車載表示や周辺監視に強みを持ち、直接的な「乗降確認モニタ」ではないものの、安全運行やデータ収集といった周辺ニーズに応えています。

選定にあたって事業者が重視すべきポイントは、以下の4点に整理できます。

  • 設置環境との適合性:屋外ホーム、地下駅、カーブ駅など、現場特性に適した視認性・設置構造。
  • 運用負荷への影響:確認作業の簡素化・標準化が可能か、運転士への負担軽減につながるか。
  • 拡張性・将来対応:将来的なワンマン運転化・自動運転化に備えた接続性や機能拡張性。
  • 保守性と導入実績:長期運用に耐える製品品質、既存導入事例に基づく信頼性。

なお、バス業界では「乗降確認モニタ」というカテゴリ自体が確立されておらず、主に後方監視や運賃案内、乗降人数カウントなどの関連機能が段階的に導入されています。今後の乗務員支援やデータ活用の文脈において、これらが発展的に融合し、鉄道分野における「乗降確認モニタ」に類似した役割を果たす可能性もあります。

導入を検討する際は、現場での視認環境、運転士の作業プロセス、今後の運行形態の見直しなどを踏まえ、単なる映像表示装置ではなく「運行支援・安全確認のインフラ」としての位置づけで評価することが求められます。

 

乗降確認モニタシステム導入チェックリスト

本チェックリストは、鉄道事業者が乗降確認モニタシステムを導入するにあたり、事前に整理しておくべき技術・運用・調達等の観点を網羅的にまとめたものです。企画初期段階での「検討漏れ」防止や、関係部署間の共通認識形成、メーカー比較資料の作成などにご活用ください。

① 設置環境・構造条件

  • ホームの構造は?(地上 / 地下 / 高架 / 曲線部)
  • 乗務員が安全に確認できる設置位置・視認角度は確保できるか?
  • 屋外設置に伴う風圧・照度・結露などの気象条件に対応が必要か?
  • ホーム幅・天井高など設置物の寸法制約があるか?
  • 駅ごとに異なる設備配置(柱・照明・配線)との干渉リスクはないか?

② 車両との整合性

  • 対象車両のドア位置は停車位置と一致しているか?
  • 編成長・ドア位置のばらつきに対応したカメラ台数・画角が必要か?
  • ATOやTASCなどの停止位置制御と連携可能なシステムにするか?
  • 車掌用・運転士用ITVなど、既存システムとの統合が可能か?

③ 運用・保守体制

  • 夜間施工や終電後の短時間作業で設置可能か?
  • 遠隔監視や自己診断機能の必要性を整理しているか?
  • 保守業務は自社対応か?メーカー委託か?
  • 保守用部品の供給期間、保守契約の有無は確認済みか?
  • モニター破損や映像不良時の緊急対応体制は確保されているか?

④ コストと資金調達

  • 導入予定駅数・編成数に応じた初期導入費用を試算しているか?
  • 国交省補助(ワンマン運転支援等)や自治体助成制度の適用対象か?
  • 年間の保守・運用費を予算化しているか?
  • 15年〜20年を見据えたライフサイクルコストを検討しているか?

⑤ ベンダー選定・調達戦略

  • 国内メーカーと海外メーカー、どちらを主軸にする方針か?
  • 比較表や技術提案書を取得し、各社の強み・仕様差を整理しているか?
  • 実際の設置現場(他社導入駅)の視察やデモ機確認を行ったか?
  • 製品供給・設置工事・調整作業まで一括対応可能な体制か?

⑥ システム構成・拡張性

  • 表示装置は固定型か昇降型か?設置高さ・角度の調整性はあるか?
  • カメラの解像度・画角・逆光補正・夜間対応機能は要件を満たすか?
  • 複数映像ソースの切替や2画面表示、録画機能に対応しているか?
  • 映像暗号化・通信保護などのデータ保全機能はあるか?
  • 将来的なITV・ホームドア・TIS等との接続性は検討されているか?

⑦ サイバーセキュリティ・情報管理

  • ネットワーク接続時の認証・通信暗号化対策は講じられているか?
  • プライバシー保護・録画映像の管理体制は整備されているか?
  • サイバー攻撃や不正アクセスに備えた運用設計があるか?

⑧ 利用者・現場の受容性

  • 運転士・車掌の操作・確認フローに無理がないか?
  • 現場職員向けの操作教育やトレーニング計画は整備済みか?
  • UI(画面表示内容)は直感的で視認性が高い設計となっているか?
  • 労働組合等との調整が必要な事項(監視強化など)は整理されているか?

⑨ 可視性・ユーザー体験

  • 日中・夜間・逆光など、あらゆる時間帯での視認性は確保されているか?
  • 色覚障害などユニバーサルデザイン観点での配慮はあるか?
  • 駅利用者(旅客)への誤認・誤解を避ける設置・表示設計となっているか?

⑩ 非常・異常時対応

  • 映像機器の故障や不具合時の代替手段は確保されているか?
  • 停電・落雷対策(UPS・耐雷性など)は講じられているか?
  • 自己診断・アラート通知機能があり、保守対応が迅速に行えるか?

⑪ 標準化・仕様統一

  • 将来的な全線展開を見据えて機器の標準化・仕様統一は可能か?
  • 複数メーカー・複数モデル混在時の保守管理に支障は出ないか?
  • 部品調達や更新工事の効率化を意識した構成か?

⑫ 関係部門との調整

  • 施設・車両・運輸・電気・情報システム部門との合意形成はできているか?
  • 財務・経営層向けに導入意義・投資対効果(ROI)を説明できる資料はあるか?
  • 工事業者・施工管理者との工程調整・契約調整は進んでいるか?

⑬ 将来対応・制度動向

  • ホームドア・ワンマン運転・自動運転への対応可能性は検討済みか?
  • 高齢化・インバウンド増加など社会変化への対応が視野に入っているか?
  • 補助金・制度動向の最新情報を把握しているか?

このチェックリストは、現場担当者だけでなく、企画・調達・財務・技術の関係者が共通のフレームで導入計画を検討できるよう作成しています。可能であれば、エクセルやNotionなどで共有し、導入フェーズに応じて随時更新・追記することをおすすめします。

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