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欧州航空安全機関(EASA)、A350エンジン燃料制御装置に関する耐空性改善命令を発出

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欧州航空安全機関(EASA)は、航空機の安全性を一層高めるため、エアバスA350型機のエンジン燃料制御装置(HMU)に関する新たな耐空性改善命令(AD)を発出しました。この命令は、対象となる航空機の運航事業者に対し、特定の部品交換や寿命管理の徹底を義務付けるもので、航空機の長期的な安全性と信頼性を確保するための重要な措置です。

A350のエンジン燃料制御装置に新たな整備要件、EASAが安全性の向上を指示

欧州航空安全機関(EASA)は、2025年8月25日付でエアバスA350型機に対する耐空性改善命令(AD 2025-0183)を発行しました。これは、A350のエンジン燃料・制御系(HMU: Hydro-Mechanical Unit)に関する部品の交換や寿命制限を義務付けるものです。この措置は、航空機の運航継続性と安全性を担保するために、整備要件を具体化し、航空事業者に適切な整備計画への反映を求めています。これにより、航空機の長期的な信頼性の維持が期待されます。

航空機整備における「耐空性改善命令(AD)」とは何か?

「耐空性改善命令(AD)」は、航空機の設計、製造、整備において潜在的な安全上の問題が発見された際に、航空当局が発行する強制力のある指令です。今回のEASAによるADは、A350のHMUが特定の使用条件下で性能低下を引き起こす可能性があるとの知見に基づいています。HMUはエンジンの燃料流量を精密に制御する極めて重要なコンポーネントであり、その不具合はエンジンの出力制御に直接影響するため、安全運航に不可欠な要素です。ADは、このリスクを排除するために、対象部品の定期的な交換や厳格な寿命管理を義務付け、航空機の安全基準を世界的に統一・維持する役割を担っています。

航空機整備のデジタル化とトレーサビリティの重要性

今回のADは、単なる部品交換に留まらず、航空機整備のデジタルトランスフォーメーションを加速させる要因にもなり得ます。特に「整備記録のトレーサビリティ強化」という技術ポイントは、デジタル化された整備ログや履歴管理システムの重要性を示唆しています。航空機部品一つひとつにはシリアルナンバーが付与され、いつ、誰が、どのような整備を行ったかという情報が厳密に記録されます。この情報をリアルタイムで共有・管理することで、ADのような緊急の指示が出た際にも、迅速に対象機を特定し、必要な措置を講じることが可能になります。これにより、安全確保のためのダウンタイムを最小限に抑え、運航効率を高めることにもつながります。

安全運航への投資と航空産業の持続可能性

今回のEASAによるADは、一時的に航空会社に整備コストや工数の増加をもたらす可能性がありますが、長期的に見れば航空機の信頼性と安全性を向上させるための不可欠な投資です。航空業界は常に最高の安全基準を追求しており、このような厳格な規制と整備体制が、利用者からの信頼を築き、産業全体の持続可能な成長を支えています。技術的な課題を乗り越え、より安全な空の旅を提供するための継続的な努力が、未来の航空産業を形作っていくでしょう。

参考文献:https://ad.easa.europa.eu/blob/EASA_AD_2025_0183.pdf/AD_2025-0183_1

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