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ナブテスコ、AI航海支援システムの実証実験を巨大タンカーで開始

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船舶の自動化と効率化は、海運業界の長年の課題であり、近年AI技術の進歩によってその実現が現実味を帯びてきました。この度、精密機器メーカーのナブテスコが、世界最大級の30万トン型タンカーを舞台に、AIを活用した航海支援システムの実船検証に乗り出しました。この取り組みは、海運業界の未来を大きく変える可能性を秘めています。

燃料効率を最適化し安全航海を支援するAIシステム

ナブテスコが実船検証を開始したのは、AI航海支援システム「TELEGRAPH AGENT™」と「Pythia」です。これらのシステムは、船舶の運航データをリアルタイムで収集・分析することで、燃料効率の最適化と安全な運航を支援します。具体的には、風向、潮流、波の高さといった外部環境データに加え、エンジンの出力や船速などの船内データをAIが解析し、最も効率の良い航路や最適なエンジン出力を提案します。これにより、燃料コストの削減はもちろん、二酸化炭素排出量の削減にも貢献します。さらに、緊急時には船員の判断をサポートすることで、航海の安全性を高める役割も担います。

AIが拓く航海の未来:データ解析がもたらす革新

今回の実証実験の核心は、膨大な運航データをAIがどのように活用するかという点にあります。これまでの航海は、船長の経験と勘に大きく依存してきましたが、AIシステムは数理モデルや機械学習アルゴリズムを駆使して、人間が処理しきれない量のデータを瞬時に分析します。例えば、過去の運航データから特定の気象条件下で最も効率的な船速を学習したり、危険な状況を事前に予測して警報を発したりすることが可能になります。この技術は、単なるデータ表示にとどまらず、実際の運航判断にまで踏み込むものであり、将来的に船舶の自律航行へとつながる第一歩と言えるでしょう。

デジタルツインとシミュレーション技術の融合

このシステムは、単に航海データを分析するだけでなく、「デジタルツイン」の概念とも密接に関連しています。デジタルツインとは、物理的なモノやシステムをデジタル空間上に精密に再現する技術です。ナブテスコのシステムも、船舶の運航状況や外部環境をデジタル上で再現し、様々なシミュレーションを行うことで、最適な航路や運航方法を導き出します。これにより、現実世界での試行錯誤を減らし、より安全かつ効率的な運航計画を立てることが可能になります。将来的には、船舶全体のデジタルツインを構築し、保守管理やリスク管理もAIが行うようになるかもしれません。

まとめ:AIが変革する海運業界の未来

ナブテスコによるAI航海支援システムの実船検証は、海運業界におけるデジタル化とAI技術導入の重要な一歩です。燃料効率の改善、コスト削減、そして何よりも航海の安全性向上という多岐にわたるメリットをもたらします。この技術が広く普及すれば、海運業界全体のカーボンニュートラルへの貢献や、より持続可能なサプライチェーンの構築にもつながるでしょう。海運の未来は、AIと人間の協調によって、より安全で効率的なものへと進化していくことが期待されます。

参考文献:https://www.nabtesco.com/news/20250918-16899/

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